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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
89/98

89 彼女と彼の、中間存在  其の六





 記憶は奪われた。


 渡る神はなにも遺さず。


 彼の神の、潰えた夢の欠片だけがこの身に残っている。











【うーん、そうだねえ】 


 奇怪な異界渡りの娘は、首を傾げた。


【あたしにとっての、神様かあ。 ――― なかなか難しいな、その質問は】


 悩むような素振りを見せた京香は、己の答えを出す前に一つ尋ねた。



【ラ―くんだったら、神様のために何が出来る?】



 信仰か。

 現実か。

 その狭間をうろつくような娘は、一言を投げかける。

 相手を惑わせるような一言を。



 篠原京香は、嘘のような真実ばかりを露にしようとする。

 それは彼女の保身の様で、執着のような気がする。



【ラ―くんは、神様のために何をしたい?】



 不思議、と思う。

 神様をジェラード=オークスは知っている。

 喪われたその存在は、彼の記憶に事実しか遺してはくれなかった。

 神様がいたこと。

 神様が彼を創ってくれたこと。

 そして。

 神様が、全てを諦めてしまったこと。


( ごめんね    ) 


 たった一言の声だけを遺して、全ての縁起を切って往った 愛しい存在は 。



「わからぬままじゃ」

 いまは、もう。







 確かにあった筈の、創世の神との触れあいの記憶が消されたのか。

 彼の神の姿、力、その思い。

 全ての記憶を消し去っておきながら。

 どうして、ただ一言の謝罪の言葉だけを彼のなかに遺しておいたのか。


 全ては、ジェラード=オークスには判らぬことばかり。





 ただ、傍にいてほしかった。


 遠い日に漠然と願っていた、喪失という言葉の意味を知らずにいた、初めの祈りの意味もまた。



 彼には。





            もう。





























 ところで、またサブタイトルが空気になりつつあるのだがどうしようか。…どうしよう。(二度言うほどか)

 そして、京香のポジティブっぷりに突っ込むことをうかつにも忘れたラ―くん。

 君にとっての神様は何かをしたい存在ではなかった筈だよね?




 本日の覚書


縁起


 世界の一切は直接にも間接にも何らかのかたちでそれぞれ関わり合って生滅変化しているという考え方。(仏教用語)

 流行りのバタフライもそのうちの一つといえる。

 主となる原因を【因】、補助となる条件を【縁】といい、「因縁生起」という言葉の略である。

 縁起を切って往くということは、すなわち?








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