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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
82/98

82 彼女と彼の、代行業  其の十二





 歪んだのは彼らだけのせいではない。

 それでも、歪まずに残った一族も多かっただけに、彼女はそれを惜しむのだ。








「ティンクルドン、リンクルドン、とーびらっ、が、跳~ね~る」


「ティンクルドン、リンクルドン、つーきよの、夜に~」


「ティンクルドン、リンクルドン、トォ―リィは、廻った!」



「このさき、何処へ、―――― 往~きましょう~か」





「霊歌、か」

「ふふ。――― ただの遊び歌よ?」


 古の伝えはすでに無意味なものへと成りはてて、いま京香が歌っているのはただの遊び歌。

 ホビット族の子供たちが教えてくれた、たわいのない手遊び歌。

 歌いながら、京香は教えてもらった手遊びの型を真似た。



「ティンクルドン、リンクルドン、つきとひが、ゆ~がむ」


「ティンクルドン、リンクルドン、三千の世~に」


「ティンクルドン、リンクルドン、トォ―リィが、廻った!」



「このさき、何処へ、―――― ゆ~きましょ~うかみはしらのきみ」




「……悪趣味だな」

「え。そう?」


 遊び歌の最後の〆まで歌ったところで、イスランに趣味を疑われました。

 可愛いじゃないか、影絵唄。

 ぱたぱた両の指を動かして、ハイこれ鳥さんだよーんとかやってみた京香だった。









 杭の穴には、磁気が生じる。

 杭を中心に鳥は跳ぶ。

 ときに世界を、あるいは時空をまたいで。


 その翼の行き先を命じる存在の名を、神といったのは過去の事。



「…やっぱり、あたしこの世界の神様好きじゃないなあ」


「――― 俺に言うな」



 神様の居ない世界で、跳ぶことを忘れた神従の鳥に、叶うことなら死をあげたい。

 生きることがつらいきみが、それでもこの世界で生きたいと願ったなら。


 歪んだその思いの下で、空を夢見てる自由な心を祝福してあげるから。







「次回の杭の定期点検、5年後でどうですかってさ」

 ラテンの僕ちゃんが言ってたのよね。


「…いいんじゃないのか?」

 ツンデレ、乙。



 黒衣の魔王陛下が呆れた表情で呟いた。

 わあい、レイちゃんの前ではその単語いうなよー、怒られるのはあたしだ畜生め。





 歪んだ彼等が杭の整備で心落ち着き、歪みを押さえられた頃。

 なんでもない顔をして、言ってあげる。


『迷子の整備士、一名ご案内~』



 お土産は、ギフト持ちのクラフト・オギナ。

 






 置いて行かれた寂しさなんて、綺麗に捨てて。


 一緒に遊ぼう。


 神様(大好きな人)の代わりにもなれない、出来そこないの異界渡りと一緒に、さ。


 







本日の覚書



 霊歌


 スピリチュアル。

 賛美唄であり、民族歌でもある。

 ―――― 変形したホビット族たちの手遊び歌。(指や腕を交差させて遊ぶ)

 京香は子守り中にこの歌を教えてもらった。




 神従の鳥。


 胡鳥族の美称。―――神在り世にて、神の言葉を運んだという謂れがある。

 神無き世にてはつかわれなくなった言葉。




 跳ぶ


 伝承において神の力を借りた神従の鳥は、『転移』を行ったという。

 時空転移が其処に含まれていたかは謎であるが、当時稼働中であった転移門を使用することなく『転移』ができたという説。

 転移することを『跳ぶ』と称する。









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