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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
79/98

79 彼女と彼の、代行業  其の九






 喪われたものは一体どこへと消えてしまったのだろうか。

 朽ちたものの果てに生まれたものが、苦しみや嘲り、差別や排他の心なのだとしたら救いがないことこの上ない。

 怒りならよかったのに。

 怒りは次の行動へと進むための情熱を生む。

 素直に素直に、ただ溢れる感情のまま、未来へと進むことを模索する力にそれは変換できただろうに。


 どうして、心はこんなにも偏るのだろう。













「まっすぐに進むことは難しいね」

「ん?」


 いつのまにやら心にぽつんと生まれていたその言葉が、つい音に変換されてしまった。

 手元にはアイスクリーム。

 お味は黄金の梨を粉砕してライハン種牛の乳とミックス。それをジェムっちお得意の熱吸収魔法で冷やしながら撹拌撹拌撹拌の繰り返しで作成された今日のおやつである。

 透明なグラスに盛られたそれには、香りつけのハーブの葉が一枚飾られていて、とても可愛らしく出来上がっている。

 とても美味である。

 小さな匙にて掬いあげて、口のなかへと運ぶと幸せがやってくるという塩梅だ。

 ジェムっち最高!と叫んだのは、一杯目のアイスを完食したときの京香である。


「何を言い出した? 今度は」

 ところで、それは俺の分じゃなかったのか?【黄金の梨アイス】。


 今月のルーチンワークの一つである書類(?)仕事をしていたイスランは、どうやら京香の呟きを合図に一時休憩へときりかえたようだった。

 読み込んでいる途中だった吸血鬼の長からの小玉(ピンポン玉くらいの大きさ。魔族たちはこれで、情報の収集、蓄積、算定までを一気にこなす。初期化から仕様の設定・変更までのメンテをするのはとある魔族が有料でやっているらしい。職人乙)を、指定の場所へと戻したイスランはその玉座を立ち上がった。












 魔王陛下の玉座っつーか、謁見の間にてお仕事していたイスランくん。

 そんな彼のしちめんどくさいお仕事風景を流し見しつつ、あたし専用のソファに寝そべって食べるおやつの幸せなことよ。

 邪魔だと視線でよく語られるこの京香専用ソファはむしろ、そのためにこそココにあるのだ。うん。

 ちなみに、時折魔王城へとやってくる勇者さまとやらがこのソファに突っ込みたいのに突っ込めなくてしばし行動がフリ―ズするらしい。


 え? 駄目なの? いいじゃないかその隙にヤっちまいなよ☆


 笑顔で告げたら、「そんなことせんでも、余裕でヤれるわい」とどこかの両性類に鼻で笑われました。

 そらそーか。(納得)


「うーん? まっすぐに間違えない行動っていうのは難しいって話さー」



 近寄ってきた魔王さまにアイスを一口献上して、お話はそこでおしまい。


「うまいな」

 このアイス。

「でしょう!?」













 心はどこまでも偏るでしょう。


 右に傾いた心は、右へと傾いたまま。

 左へと傾いた心は、左へと傾いたまま。


 涙と諦めと不満に溺れた心は、喪った未来の夢を見失っているから。




 心はどこまでも偏るのです。

























 本日の覚書


 黄金の梨アイス


 異世界コラボ。胃の友コンビが粛々と作成したジェラートの一つ。

 クラッシュした黄金の梨に、ライハン種のミルクを使用。

 氷魔法よりも熱吸収魔法を使いたがるジェムっちは何気に魔法マニアでもある。

 




  小玉ちいたま


 宝玉の一種。簡易宝玉《オ―ヴ》。

 異世界におけるパソコの代わり。

 探査魔法と提示条件魔法、その他各種の数式魔法によって作成される。合成魔法による魔道具。

 容量のサイズによって、小玉ちいたま中弾ちゅうたま大珠おおだま極霊ごくたんがある。

 ピンポン玉サイズのものを指して小玉と称する。

 特殊技能として初期化から仕様の設定・変更までの加工・メンテをする能力を持つとある魔族がいる。(有料)

 人間にはただの宝石と認識されている模様。








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