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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
78/98

78 彼女と彼の、代行業  其の八










 この世界の神は消えた。

 アンダースタン?


 だが、此の世にその神の遺したものは存在している。

 アンダースタン?


 その神寶のうち、機能の維持が出来なくなったもののうちに転移門がある。

 アンダースタン?



 ――――― あたし、篠原京香の持つ能力は転移にある。



 言いたくもないけど、ご理解いただけた?










 転移門は世界の各地に存在する。

 ただし、各極地、あるいは各種族の生息地の周囲にだけは存在しない。(といっても、某種族はいつのまにかその周囲に村やら国やら作っておったらしいが)

 元々は種族関係なしに使用できるお便利門であったからだというのは、たしかレイちゃんのおバカでも判る世界の歴史講座のなかの一文だったはずだ。


「今回のメンテナンスは終了したっすが、あくまでも一時的な処置っす。定期的にメンテナンスはした方がいいっすよ?」


 最終日。

 コトリ族とホビット族。

 封の岸の代表者が集まる中で、坊やは言ってくれた。

 ――――言わないでほしかったなあ。


「今回のようなことは、沈黙の杭が稼働するかぎり起こり得る事態っす。古老たちの資料にも神つ世のころから同様の処理は施されていたとあったっす。今回はさすがに門の封鎖以降の処理のため時間がかかりましたが」


 気づいているのかいないのか、あるいはただの職業意識の為したことかは不明ですが、可愛い坊やは自らの首を絞めています。

 おおーい、もうそろそろ我が身を大切にしたまえ、少年。こき使われるぞ?



【ふむ。―――それでは、同じようなことがまた起きると】

【そういうことですか。…難儀な】


 コトリ族(双子)が喋っている。

 嫌な予感しかしない。


【申し訳ないが、クラフト・オギナのラテン・クイナ殿】

今度こたびのようなことがありましたなら、再び整備を依頼しても宜しいですかな?】


 名誉棄損で訴えたい扱いを常々うけている京香にとっては、おまえら誰だよとつっこみたくなるような下手になった態度でコトリたちが囀っている。

 うわあ、レアな光景ですこと。(京香的にレア)

 そして、やっぱりこの封建主義的視界の狭さに定評のあるコトリ族は指名したぜ。

 ラテンの坊や、食われるなよ~。


「……え。……まあ、こちらとしてはかまいませんっすけど…」


 ちらちらソチラ。

 という感じで、少年がこっちを見てくる。

 なあにどうしたの? 別にお姉さん怒ってないよ?


「ただ、移動と魔薬の用意に関していうなら、変態さんに協力してもらわないといけないんっすけども」

 …そのへんはどうなんでしょうっすかね?


 困った少年がこっちに話題を振ってきた。莫迦なの?アホなの?天才なの??

 …まあ、予測はしていたんですけどもね、この展開。ふっ…(遠い眼)。

 今回京香秘伝のおねだり攻撃でレイちゃんからゲットしてきたのは、魔王城近辺における魔土霊草から抽出した秘伝の霊魔薬。

 深原族ヴィルギンを含む水棲をメインとする種族の肉体を一時的にとはいえども、陸に適応した生態へとチェンジさせるというおとぎ話的劇レアな魔薬である。

 あたしが伊達にレイちゃん大好きなわけじゃないわよ! 魔女のお姉さんはそれはとても素敵な出来るヒトなんだからな!

 と、勝手にどや顔したくなる魔女のお姉さん大好きな異界渡りが一名。間違えてはいけないのは創った彼女が素晴らしいのであって、ねだった異界渡りが素晴らしいわけではないという事実である。

 別にいいじゃんか、おねだりして素直に用意して貰える立場にいるのなんて、たぶんあたしとイスランくらいだよー? どや顔してもいいじゃんかー!

 余談ながら、ジェムっちやラ―くんあたりが同じことをレイちゃんに頼もうとすると多少の取引を要すると思われる。そのへん、あの連中はしっかりしてるからな。

 そして、復唱しておくが。


 …転移門はすでに機能していない。

 

 封の岸には大袷の想定移動ルートには含まれていない。

 


  ――― 彼がこの岸辺へと辿り来るには、転移を用いるものがいなくてはコレないということだ。




 転移の能力。

 魔薬の存在。

 この二つをどうにかしないことには、定期的な沈黙の杭の整備は実質不可能だと。


 そういうことなんだけどもさ。

 …うん、こいつらどうしてこうなのかな?


【なに、そこの輩を使うがよろしい】

【奴にはそれくらい働いてもらわんとな】






 ……そろそろ、あたしキレるべきだと思うんだがどうだろう?


















 本日の覚書



 大袷の想定移動ルート


 御津の大袷は、海中を移動する二枚貝だが、その海中の移動ルートは決まっている。

 海抜の上下、方角の東西南北、渡る港(という名の各生息地)の数はそれぞれ異なる。

 移動ルートの数は多いようで少ない12ルート。

 この移動ルートは選択は出来るようだが、決まったルート以外に新たに設定し直すことはできないらしい。

 全てのルートに共通して、出着点は海底にある極地【水泡の宮】となっている。






















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