71 彼女と彼の、代行業 其の一
お客さん、どちらまで?
昨今のタクシー業界は、高年齢者が良いお客様だと聞いた。
しかし、吾輩は若い子の方がいいのである。
さて、仕事だ。
ぶっちゃけた話、件のゲートが機能してりゃあこんなことはせんでもよかったんだがなあ。
ぶつくさと思う今日この頃。
自分で言いだしたこととはいえども、不満を言いたくなるときだってあるんだい!
「親馬鹿子馬鹿」を額に飾る。
レイちゃん渾身の迷作魔道具『親馬鹿子馬鹿』は蜘蛛の糸ほどの鎖によって編み込まれたclownの形をしている。
これの素晴らしいところは、手順どおりに折りたたむと小指の爪ほどの大きさにまで圧縮されるところにある。
ちなみに色は銀色だ。
一部に黒色でfool的意味の文字を浮かばせているのはシャレなのか仕様なのかそこは不明だが。
とにかく、これのおかげで無意味な同一世界における位相転移に挑む必要はなくなったのである。
有難や有難や。
さ、テレポだテレポ。
仕事しよ。
「おまた!」
「…………」
本日の出現場所は、予定通りに封の岸は搗の渕。
リアナの花の咲く岸辺である。
「若いぴっちぴち少年の修理屋さん一名、ごあんな~い!」
事前に呑んでた陸上適応仕様魔薬をガブ呑みしたおかげでなんとか地上でも起立独歩可能となった若いぴちぴちボーイをお連れいたしました。
ちなみにただいまぴちぴちボーイは、蒼い顔で地面に座り込んでおります。
転移酔いした? まさか。
「お客さん、踊り子さんに触れちゃあ駄目ですよおおお?」
ぴっちぴちの若いお肌は確かに癒されますけどね! てへ!
「「「「………………馬鹿がいる」」」」
目の前に並ぶコトリ族、ホビット族、ついでに親父―ズの連中に怒涛の冷たい視線攻撃を受けたことはいうまでもない。
…短いな。
ストレスがたまると道化になって発散する。
これが京香の処世術。