67 彼女と彼の、岸辺 其の四
封の岸には守がいる。
ソレすなわち、極地であるということさ。
「あざーっす。お邪魔しまーす!」
どかどかどかと音を立ててというつもりはないが、とてとてとてという程度には威勢よく進入する某小娘。
「……あっ、あっ、あっ! 嘴痛い痛いやめてお肌に穴が開きます! あっ痛い痛い痛いいたい」
「………」
「………」
「………食われるといいのにね」
ぽつりと絶好調な子だくさんな親父が言った。(ちなみに奴の年齢は30歳だ)
岸守の一族、胡鳥族に突かれる娘を眺める親父たちは今日も安定した引きっぷりだった。
…止めてやれよ。
ばんそーこーはどこですか。
お肌がひりひりするので、ポンの嫁こに消毒してもらいました。滲みまう~。
嫁こは出産後で疲れていたので付き添っていたポンの妹にぺたぺたばんそーこ―を張ってもらいました。
ポンの妹と嫁こは実によいオナゴである。
なのに、どうしてポンの家族なのかそこが不思議だ。奴は慇懃無礼サ(自重)なのにな。
ひりひりするお肌と怖ろしい嘴へのトラウマを新たにしつつ、もう一度岸守の一族のもとへと連れて行かれる篠原京香。
消毒液の匂いがくさいですと彼女へ苦情が寄せられるのはその数分後である。
あたし連れてきたの、あんただしっ!!!(涙目)
【噂どおりの阿呆じゃ】
【全く】
目の前のコトリがひどい。
ただいま現在、二羽のコトリが線対象になるようなポーズでこちらを見下ろしています。
二羽のコトリの正体は、現岸守であるグロック=スロウと岸守の控えであるウィ―ド=スロウだ。
【よいか、そこの阿呆】
【境界は大切なものじゃ】
【そこへ道理も通さず、侵入するなど】
【言語道断】
【許すべからず】
【ここは城守どのの顔を立て】
【忠告のみにて見逃すものの】
【次はないぞ】
【心しておけ】
「はあい」
挙手して良い子にお返事。
嘴怖いしね。
【…………】
【…語尾を伸ばすでない】
「はいなっ! 」
胡鳥族の岸守たちは、お互いに依存し過ぎだと思うんだ。
―――― 一言ずつ交互に言いあうってどんだけ!!!
本日の覚書
胡鳥族。
封の岸の岸守の一族。
海鳥のように甲高い声と大きな嘴が特徴。銀白色の羽をもつ。
ホビット族とはお互いに独立した生態系を保持。
風車に関してのみ、両者は協力しあうとか。
風詠みの一族にして、墨海の壁。
…じつは、京香は個人的にこの一族が苦手であったりする。
ホビット族
いわずとしれたホビの一族。子だくさん。
封の岸に咲くリアナの保持者である。
農夫の一族なだけといったらそれまでなんだが。
種族的特徴は低身長と巨大足。