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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
66/98

66 彼女と彼の、岸辺  其の三





 岸にあるものはなあに?

 

 砕けたいわおの果ての姿か。

 波頭に揉まれて辿り着いたもぐさの繁栄か。

 


 時と天地が忘却した沈黙の蒼の幻影。



 ―――― 岸にあるものは、ただ全ての境界を赦すもの。



 けして、けして。



 ソレを踏み破ってはいけないよ。










「久しぶりに皆そろいましたね」


 生まれたばかりのホビの一族の末子は女児だった。

 さすがに今回は多胎出産ではなかったようだ。二回も双子が続いたからなあ、いいかげんにこの一族の反則的な繁栄能力には納まることを覚えてほしいところだよ。

 眠っている赤子は使い古された感のある蔓籠に寝かされていて、お手手がちっさくて頬がふっくらでお尻がでっぷりむちむちでとてもとても可愛いのです。

 ホビの一族の特徴である巨大足だけは可愛いというにはやや抵抗はあるものの総じて愛でるにはたるもんだというのは、好き勝手になでようとしてはその父親にはねのけられるを繰り返しているどこぞの変人の心からの感想だった。


「お前が言うな」

「出席率が悪いのはおめえだろう、ポン」


 そんな場景は見事に流して、【ホビット族の慇懃無礼】と裏にて呼称されるポン=ボルンへと突っ込んだのは、その親友たちだった。


「それはすいません。なにしろ、子育てで大変でしたので」


 今も今とて、片手と片足で京香をはねのける慇懃無礼は、笑顔で親友たちの突っ込みに返事した。

 このチビのでか足の豚馬とんまあああああー!

 言葉にはせずに心で叫んだ瞬間。


「何か言ったか、下郎」


 ………!!!!


「…おーい京香、息しろ息」

「人工呼吸かショック療法の出番じゃねえのか? ミニ―、おまえどっちするー? ちなみにおれは静かに見守る係なー」


 最近ミニ―くんを何かの玩具のように扱いつつある気配を感じる某おっちゃんがひょうひょうと告げていた。


「なぜみまもる…」

 むしろ全力で救命に勤しめや。


 一刀両断するどこぞの慇懃無礼に一瞬無呼吸に陥ったあたしだったが、今日も安定したコントになってるミニ―くんとおっちゃんの会話でつい突っ込みしてしまった。

 ある意味つっこみせざるをえないあたしの習性を生かした人命救助の作戦だと言えなくもないかもしれない。(願望)


 追記。


「それじゃあ、ロドム。息の根を止める係は是非私にやらせてくださいね」


 笑顔で告げるホビの一族の親父は本気でも冗談でも怖いから、逃走経路の準備をするべきだなと思う。





















 本日の覚書


 ポン=ボルン


 噂の親父―ズの最後の一人。

 奴を慇懃無礼と呼称するのは京香のみだが、あえて誰もソレを止める奴はいない。

 ポンに告げ口して遊びたいとか間違ってないわなとかいうあきらめにも似た感情をもってるからだとかそんな…(汗)

 家族大事のホビット族の親父。

 15人の子持ち、嫁あり。

 慇懃無礼サドだなんて後が怖くて誰もいえないよ。

 京香のことを変人と呼ぶ。

 家訓は【腹が減ったら働きなさい】【言われる前に動け】【目上の人は敬いなさい】…。

 最近その家訓に【変人は真似てはいけません】と追加するべきじゃないかと密かに悩んでいるらしい。

 【ホビット族の慇懃無礼】。













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