65 彼女と彼の、岸辺 其の二
「彼女と彼の、岸辺 其の二」
封の岸は小高い丘の上にある。
世界の果てにつながる墨海に突き出たような丘の上。
悪魔の風が吹き依ると噂されるその場所には人々は立ち入らない。
風に煽られて廻る白の封邪に恐れながら。
その場所には、主の一族である胡鳥族と契約の民であるホビット族が住んでる。
人工の湖を囲み。
【搗】を巡る、風の丘に。
――――白い花は咲く。
「ばんご~う!」
「いちっ!」
「にっ!!」
「さん!」
「しっ!」
「ご!」
「ごっごっ!!」
「セブン!」
「やー」
「くうう!」
「っとお!!」
「そこだいけええ、」
「じゅうにっ」
「とみ!」
「―――――――点呼の番号の読みは、統一してたのむ」
つかだぶっただろう今しかもなぜ異界語である英語がきたし、しかも9と10はどう見てもチャンバラごっこ中だ11に至ってはただの野次馬ですごめんなさいは? 最後に至っては当て字かやるな貴様。
うふふうふふ、ゆとりめ。
壊れた眼であらぬ方を見つめる娘っ子は地味に痛々しいものである。
ましてや自分自身あり得ねえとか思いながらも、どうやら恋心らしきものを抱いてしまったらしい先行き怪しいことこの上ない蛇牙族のミニ―にとっては娘の苦境を放置出来なかった。
「あ~。……おまえら。―― 土産が欲しかったら静かにきちんと整列して並べ」
じゃねえとお前らには金輪際餌付けはしてやらん。
別段大きくもない声量でのミニ―の言葉に、子だくさん=食糧必要最低限=土産は大事、餌付け上等のホビさんの一族の子子孫孫どもは綺麗に整列してのけた。
そのあたりの躾については【食いたければ働きなさい】という信念の親父の性格が多大な影響を及ぼしていることは相違あるまい。
あむあむと乾燥蜜苺を貰ってもぐもぐしているホビット族のチビーズはかわいい。ハムスターのごときほっぺた、可愛い。
「子供たちの反応がくやしいときいいいい!!」
我に返った娘っ子が懐かしい小ネタを叫んだが反応するものはいない。
尊敬する父の友と変人娘の立場にはこれほどの違いがあるのだ。
子供は素直で残酷というはなし。
「おうおう、恋に眩んだ蛇は健気だのう」
離れた場所で胡坐をかいて塩をなめてるのはドワーフ族のおっちゃんである。
高血圧には気を付けろよ、酒呑み20代独身髭なしドワーフさんや。
本日の覚書(あるいは棄書)
蜜苺
ハニ―ストロベリー。
果汁が蜜のように甘い。山奥によく生えてる。蛇牙族の好物。
日干しにすると干し蜜苺。
潰して包んで固定化の魔法LV1.5をかけるとドロップになる。(ただし、噛んだらすぐに果汁に戻ってしまうので、どこまで噛まずにいられるかが勝負。――元気な子供たちの口を閉ざさせるにはこれが一番とか言う話)
子供には優しいミニ―くんはこれをよく土産にする。
セブン。
犯人は京香。
何度もホビット族の子守りをしてきた奴が幸運セブンだとかウル虎セブンだとか叫んでいたために子供らはチャンバラごっこやセブンがわかる。
ウル虎の母がわかるのはホビ家の長男だ☆(ただいまお仕事中)
封邪
風車のこと。
人間たちは、邪を封じているとか勝手に由来をつけ、そのように名前をつけたとか。
人外にとっては、都市伝説的名称(笑)。




