57 彼女と彼の、二枚貝 其の二
「彼女と彼の、二枚貝 其の二」
「深原族? って、なにそれ?」
訊いたことないなあ。
そんな話をしたのは、窖での酒盛りでの話。
「ふむ。―――そうだなあ、あんまり俺もくわしいわけじゃあないんだがな」
どん、と一升瓶を床に置いたドワーフ族のおっちゃんが酒のつまみに語りだした。
「海の波間に生きてる一族だ。海藻や小魚を食って生きてるとかでな。―――海の人魚族ってのにちかいかもしれんな」
まあ、俺はみたことはないんだが。
ごごっと日本酒をロックで一気飲みするドワーフ。
もうちょっと味わって呑んでほしいなあ、せめて。
店長お勧めの一品とかいう酒は、おかげでピン札一枚分はしたのだ。
あたしのゆきっちゃんがあああ!!
…涙を呑んで買ってきた身としては、切なくなる呑みかただと思ったさ。
「まあ確かに造形だけをいうなら、やつらは人魚族に近いが。……あの色は別格だろう。 海の藍に馴染む藍がかった白の肌、何よりも奴らの爪と眼の色は独特だ。―――オパールがかった原色なんぞ、なかなかねえからな」
こくりと、唯一の蛇牙族であるミニ―スが果汁で割った酒を手にして補足してきた。
「詳しいね」
ちょっと意外。
「まあ、それなりに旅してた時期もあったからな」
海縁を廻るのもそれなりに面白かったぞ。
隻眼を細めて呟いたミニ―くんは確か方向音痴だったはずだが。
「…よく無事だったね」
帰巣本能的トラブルが生じなかったことに驚いた。
そしたら、
ぽん。
と肩を叩かれた。
「…?」
ロドムのおっちゃんだった。
「京香。―――世のなかには、奇跡という言葉があるんだぞ?」
「………」
…何も言えなかったさ。
目の前の髭なしドワーフの眼元がうるんでるとか頬がひくついてるとか拳が震えてるとかそんなそんなさ。
……何があったなんて聞けるわけがない。
後日、もう一人のミニ―くんの親友に出会ったとき、何故かぽつんと一言補足された言葉がなお京香の涙を誘ったものだ。
『……友情って大事だよな』と。
―――どんだけ。…どんだけ、周りに迷惑かけてたんだ、そこの蛇牙族!!!!
陸の全てを制覇したというつもりはないが。
とりあえず、訪れたことの在る場所も増えた頃、ふと思ったのである。
陸とくれば海だろう、やっぱりと。
この辺は島国出身ならではかもしれないが、まあ何となくそう思ったわけですよね。
魔族だとか古族だとか聖なる一族だとかいろいろと名称だけは多いこの異世界ですが、海に生息してる一族がいるよねきっととかおもったわけですよ。
ティターン親族じゃねえけど、鉾もった巨大神族とかいないかなって。
ポセイドンさま、エキドナの息子、さあ出てこいよっと。
カッコ笑カッコとじを前提に酒のつまみに聞いてみた。
どうでもいいよた話は酒の場所でが基本ですしね?
で、その結果が冒頭に戻ったわけです。
オリジナルきたあああ。
と、生ぬるい目線でうっきうっき話を聞き、予測をつけて、さあ、ゴーイング!!
そして、以下省略。
「なんですの、このアホな顔した娘っ子は」
「…………きついね、お姐さん」
………海水がしょっぱいことをよく認識した第一次遭遇のはじまりでございました。まる。
本日の覚書
深原族
まさかのオリジナル種族。
見た目は人魚族と似通っている。
違いはヴィルギンの方が色濃い。――深海もいけるヴィルギンだが、流石に海底3000などの場所にはいけない。
肺が発達しており、陸の人魚族よりも尾びれが大きいなどの差がある。
色覚よりも明暗覚のが強い。
手先の器用さは人魚族よりも強いかもしれん。時折、マッチョ筋肉持ちがたまにいるゾ☆
護身用と狩猟用に、ナイフとか熊手とかパターとかを常備してる奴もいるよ。
ミナイ・グー
黄金真珠の分霊。
なぜかありんす言葉を話す不思議な娘っこ。
マニアックにも大袷さま至上主義者。
何のフェチだとは突っ込んでやるな。10倍で返ってくるから。
にの職に就く。