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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
52/98

52 彼女と彼の、四年前  其の五

「彼女と彼の、四年前  其の五」





 混乱がまず一義いちぎだった。

 その世界のどこかは判らぬ場所に、位相をずらして移動した直後のことだ。

 やはり、その世界が特殊であったためだろう。

 それとも、その日こそが特殊であったからやもしれぬ。

 確かに言えることは、その日が始まりだったということ。





 感覚が教えるその光の一つに、己のいる場所を合せた。

 もとより、結ばれず消えかけていた界は、他の結実し確定された界に比べれば招聘することは簡単だった。

 位相をほんの少しだけずらす。

 たったそれだけで、世界は変わった。

 そして濃厚な世界の気配を直接、識に感じた。 

 纏めていたはずの黒髪は壊れ、力を帯びて翻った。

 開いた眼は、おそらく瞳孔の色を銀へと替えていたことだろう。

 誰よりも力あったあの人のように。


「何者か」


 暗い闇の中、光が見えた。

 その中心にある力ある宝玉と、それを支持している玉座から影が生じているのが見えた。

 ああ、守護者か。

 多くの世界に置いて、力ある石は存在する。

 石は無機物である。

 けれど、それゆえに有機物に比べて安定した力を内包することができる。

 ゆえに多くの力ある者たちはその強大な力を石に換えて保持したり付与したりすることが多いのだ。

 見える限り、あの石は何かの能力を貸与されたようには見えなかった。

 では、あれはただの守護石かとも思ったが、その割には守護者らしき存在が別途にいる。

 ならば。

 ―――― 預言石か。

 能力ではなく、某かの意志と知恵を係留し伝言していくための石。

 神の御石。

「うあ、っ!」

 そこまでを把握して、そして忘れた。

 比して向上した能力にまだ慣れない。

 流入してくる情報があまりにも精密であり濃厚であり、―――― 覚え続けるのは難儀だった。

「―――― ここは、何処」

 混乱に満ちた声がただ空間に響いた。





 脳裏の裏で、この空間に遅れて転移してきた存在がいることは把握していた。

 黒い黒い色の存在。

 穢れではなく、むしろ透明な漆黒のような光すらも内包したような存在。

 穢れではない。

 穢れではない、黒。

 大きな能力を持つ、神が与えた役割を持つ世界の支えとなるべき存在だということはよく分かった。

「ここは、何処」

 警戒している相手へと尋ねた。

 黒色のそれが近づいてくる。

 守護者と御石は後方でただ在るのみだった。

 誰に聞けばいいかもわからず、ただ呟いていた京香・・はもう一度同じ言葉を呟いた。

 今度は、指向性を持った問いとして。

 力ある黒への問いとして。


「この世界は、なに?」


 近寄ってきた男は、何も言わずに京香を抱きしめた。








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