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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
51/98

51 彼女と彼の、四年前  其の四


「彼女と彼の、四年前  其の四」




 探している人がいたの。

 その人は厳しくて、優しくて。

 ―――― 会って、何かを伝えたかった。


 とても、優しくしてくれた人だったから。





 感覚がそれを教えた。

 別に、その人がそこにいるというわけではなかったのだとは思う。

 振り返れば、なぜそのときそれほどに確信めいた思いで能力を使ったのかはわからなかった。

 そこは、それまでに訪れたことのある異世界に比べて渡りやすい場所だった。

 ましてや、その日は覆いの幻日。

 ―――極光という漏れ出た世界の力が、異世界にいた京香には何よりのしるべとなる日。

『使い物にもならん、愚かな能力ちからだ』

 役に立たん。

 そう嗤ったものもいたこの能力を使おうと思ったのは、何の導く結果だったのか。


 それは4年の時間を置いても、いまだにわからない。






 ぐるりと、世界が変わった。


「あ、あ、あ、っああああああああああ」


 衝撃が身に走った。

 能力が異常なまでに拡大していく。

 疲弊していた筈の体力は蘇り、心配と焦りで疲労していた精神は向上していた。

 そして、恐怖があった。


 怖い。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


 濃密なまでに収縮されていく能力。

 密度を増して、階層を上がっていくかのような桁違いな存在の確定。

 ―――― 意識下におけぬほどに膨らんでいく潜在の能力の暴走に。


 卑小な人としての意識が、恐怖した。



 ―――――――ここは何処!



 変化した環境に、京香の存在が変化へんげしていく。

 消えかけた世界だと判っていた。

 神という世界を律する存在のない世界だと。

 界を渡るだけの能力しか持たぬ身とはいえども、その把握はたやすく出来た。

 けれども、まさか、こんな。



「―――― ここは、何処」



 混乱する頭のなかで、その言葉だけが繰り返し表出された。







 ああ。

 ――――身の奥に棲む水が、変異していく。








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