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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
49/98

49 彼女と彼の、四年前  其の二



 覆いの幻日を迎えるのは、これで何度めだろう。

 達観したかのような思いで、その極光を浴びる。

「レイクシエル。…体調はどうだ」

「…陛下こそ、無理はなさいますな」

 先日の環元の儀式よりまだ体調は戻ってはいらっしゃいますまい。

 対と呼ぶには語弊はあるが、己の師にして綬者である最古の魔女レイクシエル=オッドがそう切り返してきた。

 この大極地とも呼称される城守と綬者を並立するこの極地《魔王城》で1000年の務めを果たすものにそれをいわれるとは思わなかった。

「これでも俺は若い。…次代も育っても居らんのにくたばるわけにはいかんだろう」

「生意気ですこと」

 女の見栄かそれでも化粧は整えた姿で、レイクシエルはそう返した。

 まあ、いまだ200も数えない若造にこのようなことをいわれては立つ瀬もないか。

「…にしても不思議なものだ」

「…」

「極日は不思議と体調がすぐれぬ。―――もりどもの総意だ。そして、極光を浴びると少しばかり体調が回復するという――― なあ、どう思う。《叡知の魔女》どの」

「………」

「極日とは本来世界に祝福が巡る日とされていたはずだった。だが、いまは――違うだろう? 綬者よ」

「陛下…」

「これは祝福ではない。祝福は消えたのだ。――― はるか昔、神が去ったときに」

「………」

「悔しいことだな、己の勤めが果たせぬということは」

「…陛下」

自嘲するように話せば、レイクシエルは深く沈んだ声で俺を呼んだ。 

 神が去った時代に、俺は生じた。

 だからこそ、それが悔しくてならない。

 出来ることなら、神の居た時代に俺は存在したかった。

 そうすれば、俺はきっとーーー・



「――日が落ちる。もうそろそろ部屋へ戻るとしよう」

「ええ…」


 物思いをやめて、彼女に休むよう伝える。

 俺の去り際、彼女が俺に頭を深く下げていたことを俺は知らなかった。

「それでこそ、我らが魔王陛下でございます」

 誇らしげに告げた彼女が、真実喜んでいたことも。






 日も暮れたころ、野営の火が城に灯る。

 そんな頃に異変は訪れた。

 宝玉の間の近辺に、異様な気配が生じたのだ。


「…バカな。 あの場所には何者も近づけぬはず」


 焦りながらも、疲れた身体を転移させた。

 


 この魔王城における最重要地区へと。






 ―――――――――― 待っていたのは、出会い。




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