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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
45/98

45 彼女と彼の、極光  其の二



「彼女と彼の、極光  其の二」




 極地にありしは極光たり。

 その光、世界の存在の放出なり。




 極地と呼ばれる場所に共通される現象がある。

 すなわち、極光オーロラだ。

 空を覆うように溢れるその光は、この世界の不思議を語るようだ。

 地球におけるオーロラの原理はいろいろと複雑なので省くが。

 蛍光灯だと思ってほしい。

 短い電磁波の照射によりエネルギーを得た電子が元の状態に鎮静される際に余分に得ていたそのエネルギーを電磁波として放出するという原理。

 そう、極光はエネルギーの拡散される姿であるのだ。


「…イスラン。――――極日はいつから始まった?」


 ある程度の規則性をもって極地に生じる極光。

 その極光の現れる日を、この異世界のものたちは【極日】と呼ぶ。

 そして、いくつも存在する極地の極日が重なる日。――――余剰なエネルギーを拡散する周期が完全に重なる日の事を、―――[覆いの幻日]と彼等は呼ぶのだ。

 世界を覆う幻の日。

 4年に一度生じる ――――― 世界のエネルギーが拡散される日。


「……… この世界の神が去り、世界が滅びに進んだ頃からこの世界の極光は強まったのではないの?」


 尋ねた答に返事は帰らなかった。






 ねえ、神様。

 ―――――――― キミがいてくれたなら、この世界はもっと優しい世界になってくれたのかしら。


 私にではなく、彼等にとっての楽園に。









 北欧における神話のなかに戦乙女ワルキューレの物語りがある。

 彼女たちは、戦場の戦人いくさびとの士気を鼓舞し、勝利を願う。

 死したる戦士は黄昏の日(ラグナロク)が来たるまで、その戦士の館で魂を休ませる。

 勇敢な戦士は、いつかくる世界の終焉にて戦う日を待ちて眠る。

 ――――― 最後の刻を待って。


「イスラン。――――戦乙女の鎧が見えるよ」

「……なんのことだ?」


 見上げるのは魔王城の上空に広がった極光。

 そう。

 オーロラは、北欧にて戦乙女の鎧だと信じられていたのだ。


 戦え。

 戦え、戦士たちよ。


 ―――――――――生きるために、誇りを持って。


 おまえたちの牙を磨け。

 おまえたちの知恵を見せよ。


 最後の日まで、生きるための術を磨けよ。



 ―――――― 神々の墜ちるそのときまで。





「………… 生きることがすでに戦いだと、知っていた地域の伝承……さ」


 空を見上げれば、光はゆるやかに囁いていた。



 ―――― 在れよ、と。







 

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