44 彼女と彼の、極光 其の一
「彼女と彼の、極光 其の一」
太陽暦についての話をしようか。
太陽暦とは暦と季節を一致させるために、4年に一度の閏日を挿入する暦だ。
太陽が黄道上の分点と至点から出て再びそこを通るまでの周期の事を回帰年といい、またの名を太陽年と称するのだという。
地球という惑星が自転していることは幼い幼児もしってる常識だが、その自転する性質のために回帰年には歳差運動による各年の違いが生じる。
回帰年よりも20分ばかり長い恒星年は太陽暦には意味をなさない。
なぜならば、いくつもある太陽暦の全ては回帰年をもとに定められているからだ。
最も人類が信頼してきたとされているグレゴリオ暦は、400年に97回の閏日を設けることで暦と季節のずれを約3320年に一日の誤差とすることに成功しているとのことだ。
…すげくね?
当時の西暦2回分まわせる精密さだぞ。
西暦1582年のローマ皇帝と当時の学者たちには本気ですげえと感動します。
おバカさんでも共通認識の塊である暦がないと今日のアニメの予約もできないってことは知ってるからねえ。
ありがとうですよ、ローマ皇帝グレゴリオ13世どの。
「覆いの幻日?」
「そうよ」
その日の居場所はレイちゃんの研究室。
こぽこぽと部屋の隅々で抽出されている霊薬・魔薬・呪薬どもが小さな産声を上げてる場所だった。
「……閏日のことかな?」
「…? ご友人さまの世界にもそんな日があるのかしら?」
少し興味深いわね。
紫がかった銀髪の魔女は、笑顔でそう聞いた。
「…うんまあ、同じかどうかはよく分からないけどね」
なにしろ、風習も儀式も世界観も違いますから。ええ。
…むしろ、同じな方が変だと思う。
頬がひくつく京香だった。
ちなみに、閏日のある年はオリンピックが開催される年です。
深夜遅くまで大人も子供もTVに張り付くその開催期間。
まあかせて、萌えも燃えたり趣味のおかげで徹夜ばっちこいだ。
録画しながらも垣間見るスポーツの祭典観賞、ばっちこいだ。
「……萌えってなにかしら?」
「………流しておいてください、お姉様」
今さらレイちゃんがあたしの心のモノローグを読みとれちゃうびっくり魔女さんだということに驚く気はないが。
一般人にその単語を覚えさせるにはまだ抵抗があるんだ。
萌えは萌えだ。忘れるな、これは一般用語じゃないんだ!
だから頼む。
一般人の見える場所に羅列してくれるな某新聞ニュース掲載者たちよ。(涙)
一応、基本的には隠れて仲間とにまにましていたいだけの私はチキンなおたくです。
「……おたくってなあに?」
「レイちゃんサマ、頼むから流して。ながしてくらっさああああああい!!!」
頼む。
一般人にその単語はつぶやいてほしくはないんだああああああ。
血涙垂れ流して叫ぶ私の行為は訓練されたオタクとして間違ってないったら間違ってない!!!