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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
阿《ぱっくり》・吽《ぴったり》
38/98

38 彼女と彼の、誰何  其の三


「彼女と彼の、誰何すいか  其の三」





「……なにが目的なの?」


 手渡された黒章石は、この異世界に訪れるための支点となった。

 自分の血と、異世界の魔王の血。

 曖昧な境界を跨ぐための補助とするには、最高の導具だった。


「そうだな。――― 私が魔王()であることがきっと全てだよ」


 陽の光も当たらぬ魔王城の一室で、結ばれぬ世界オ・ルビス・リレガセットの8代目魔王イスラン=アル=ジェイクはそう言った。

 その言葉は、混沌と慟哭で渇いていたあたしの心にひたりと沁み入った。


 イスラン。

 キミはあたしの友で、あたしはキミの友。


 言葉にしたらたったそれだけのこと。

 感情にしたらすごく不透明なことを。

 キミは―――― 自然な形で与えてくれたね。


「じゃあ、一緒だね」

「…ん?」


 差し出した手は無駄にはならなかった。


「あたしも、篠原京香あたしでいることが、きっと全てだから」


 何もかもが違うあたしたちは、きっと。



 ――――一番大切なことが平等おんなじだったんだ。





 問いは、一番初めに。


「おまえは何者か」



 時は巡り、世界は重ねられて。


 いつか、答えは照らし出される。



 ―――― 応えは、いつか符合する。




 ねえ、イスラン。

 私のお友達。


 ―――――― キミと過ごす、この場所が。


 きっと、わたしは愛しいんだよ。





 ―――――――貴方が選んだその関係が、別のなにかに変わる日が来ないことだけを祈っている。


 ねえ、イスラン。


 貴方は、……私を「―――」とは、呼びませんよね?






 もはや祈る神もいない世界ばしょで、願っているの。


 貴方は魔王。

 わたしはそのご友人さま。


 そんな素敵な解答を、わたしはずっと抱えていたい。


 優しく哀しいこの世界の片隅で。




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