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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
阿《ぱっくり》・吽《ぴったり》
37/98

37 彼女と彼の、誰何  其の二



「彼女と彼の、誰何すいか  其の二」




 守護をやろう。


 おまえのために。

 我らのために。


 ―――この愛しくて哀しい世界のために。



 守護を贈ろう、京香。



 この壊れた世界オ・ルビス・リレガセットの魔王から。



 ―――― 訪れた、おまえに。



 最大の祝福と、最高の呪縛を ――― 贈ろう。







 黒い黒い黒章石は、時折色を変える。

 黒から紫紺へ、紫紺から赤紫へ、そして鮮血の緋へと。


 科学の実験だったかで、ルミノール試験をみせてもらったことがある。

 消毒した針で指を突いてメモ紙に自分の血をぺったんこ。その上から霧吹きでっしゅっしゅかしゅっしゅかと試験液を噴霧したのさ。

 先生の合図でカーテン閉めた教室の暗闇のなかで発光した血の色は、なんていうか地味に感動したもんだった。

 終わった後に嗅いだ匂いが昔懐かしいアルコール消毒液の匂いがするよねとか思ったら、「そりゃこれ消毒液だもん」とか先生いってくれたけど。

 実際には、それ以外にもいろいろと入ってたんだけどね。




 赤い赤い血の色は、活性化した絆の証。

 君の心が浸透してくるよ。




 名さえ付けられぬような感情が、あふれるように身体の中へと満ちあふれてくる。


 ふわふわと軽い感情。

 どろりと底を浚うような重い感情。

 刎ねるような暗い感情。

 もうすでに選択し終えたはずの過去の思い出さえもが蘇っている。


 生き孵っている。


 いつもならキミの心と体の奥底に沈澱して混濁したまま鎮静されてる言葉にならぬ思いは、その時だけ色鮮やかに浮上して、綺麗に仕分けされた感情の棚を壊すんだ。


 破壊と絶望がちらりとのぞき。

 希望と祈りがその裏に潜んでいる。


 いつもはただぼんやりとやり過ごしている雑多な感情がちらほらと浮上して、火花のようにくっついては散っていく。

 心は満杯。

 ようやくのように呑みこんだ感情は、世界に比べれば矮小なこの肉体のなかで昇華されてくれるのを待っている。

 暴れておどける感情たちは、やがて再び沈むだろう。

 ぼうっと何も考えずに、肉体に訪れた感情の嵐を遣り過ごそうとしている。

 考えることは無意味。

 否定することは無理。


 だって、感情なんて否定すれば否定するほど暴れる生き物だって。


 イスラン。

 

 ――― キミも知っているからね。





 蓄積された世界の知識は。


 イスラン。


 ――― 君に、どんな祝福と呪縛を与えたんだろう? 










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