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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
阿《ぱっくり》・吽《ぴったり》
36/98

36 彼女と彼の、誰何  其の一

 

「彼女と彼の、誰何すいか  其の一」






 京香が初めてこの『結ばれない世界オ・ルビス・リレガセット』に訪れたとき、目の前にいたのは黒髪金目の男の人だった。

 綺麗な白い膚をもつ彼は、まるで美しい人形のようにも見えた。

 驚きと警戒を視線と仕草で見せたその人は、混乱している京香に向かっていったものだ。


「何者か」と。


 それはきっと正しい問いかけで。

 でも、答えるのは難しい問いかけ。

 だってそうでしょう?

 自分が誰なのかなんて。

 それを知りたいから生きてる人はたくさんいるんだから。

 自分が何者なのか。

 その答えが見つかっていない人なんてきっとたくさん存在してる。


 今もし、あなたが誰で、あたしが何かって訊かれたら。

「イスランは魔王さまで、あたしはその友達!!」

 そんな風に答えることは簡単なんだけどな。







 京香の耳には小さなピアスが付いている。

 元の世界では、黒ガラスの玩具だと思われているが本当はそんなものじゃない。

 呪をかけた術者と被術者の血を合わせることで生じる、約束の石。―――黒章石だ。

 術をかけたのは、この壊れた世界の魔王陛下。――イスラン=アル=ジェイク。

 術をかけられたのはあたし。―――異界より訪れた来訪者―― 篠原京香。

 どんな内容の術かと訊かれても、あたしにはよく分からない。

 その手のことは叡知の魔女と呼ばれてるレイちゃんが詳しいんだけどね。


『……知りたいんですの?』

 うふふふふ。


 ……………銀の鞭を両手で握りながら笑うレイちゃんの顔が怖かったあたしには訊く勇気はありませんでした。

 あれだね、レイちゃん。

 おバカに教えるからには根性出して最後まで聞きやがれよコラってことだよね、スパルタ教育の殿堂入り魔女さま?

 そのまま素直に『知りたいです』などと言おうものなら、銀の鞭で調教されながら脳味噌を痛めつける作業が一昼夜展開されそうな気がして諦めたのは……根性無しのあたしでした。

 だって、レイちゃんってあれでイスランの教育もこなしたとかいう名教師さまですよ。

 魔王の先生ってどんだけって話ですよ、こわやこわや。


 ――…一言でいうのであれば、『相対護法の呪』よ。……『共生の呪』ともいうわ。


 レイちゃんはそう説明してくれた。

 おバカなあたしにはよくわかってはないんだけど、ただその後にあったいろんな過程から判ったこともある。


 あたしは当然だけど、この異世界のことを何もしらなかった。それでも言葉に困ることだけは一度もなかった。

 同じようにイスランもあたしが持ち込んだ漫画や小説、DVDなんかを見てて、言葉に困ってる様子はなかった。

 こちらの世界にはない概念や風習なんかを確認されることはあったけどね。

 同じようにおススメの漫画本を見せようとしたラ―くんには無言でポイされたけど。(異世界の言葉なんぞ判るか! と言われました)


 あの呪によってイスランはあたしの脳内の言語野のある程度を把握できるようになったのだと考えることができる。

 そして、あたしも。


 これで記憶をつかさどるといわれてる海馬や前脳にある人格を形成するとされる連合野にもアクセスされてたとか言おうもんなら、あたしはマジで奴を絞めるよ。

 女性のプライバシーを大切に扱えといつも言っているのは伊達じゃないんだぞ、こら。














































ルビの候補は、翻訳サイトさま利用で。


 ワールド・ア―・ナッタイド (英語)表記:World are not tied

 オルビス・リレガセット (ラテン語)表記:Orbis religasset

 マイマエイ・オルシィドット (フィンランド語)表記:Maailma ei ole sidottu

 ヴァ―デナ・イキ・ブンディット (ノルウェー語)表記:Verden er ikke bundet




 ――― 結ばれない世界。…途切れた世界。






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