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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
阿《ぱっくり》・吽《ぴったり》
21/98

21 彼女と彼の、装身具(アクセサリー)  其の三


  




「ほえ? ―――んぎゃあああ、また着地点の設定間違えたあああああああ!」

 ぎゃぴ。ラ―くんにばれたら、またいじめられるよおおおやばしやばしやばしうっかりM認定もらえちゃうかもしれんそれはやばしジェムっちのお仲間扱いされてしまういやーん覚醒するMな私?そんな私に出会うのはあと10年後でもいいじゃないかああああ。

(ちなみに20年後や30年後以降のM覚醒は絶対にご辞退する。年取ってからの人生観の変動は、ストレス負担が著しすぎて本気で寿命が縮みそうな気がするので)


 いきなり目の前に現れて自己中心的な保身混じりの感想を叫び出したのは、茶髪黒目の人間族の少女。

 白のインナーにお気に入りのピンクのサマ―カーディガン。ダークグリーンのショーパン姿は、この世界には存在し得ない衣装だった。


「………」

「………」

「―――何だ、このいろいろとダメダメっぽい異邦人は」 


 素直に突っ込んだ蛇牙族のミニース=ファン=スローは、京香を質問攻めにしたあげく科学の発展のための検体同意書を(むりやりに)書かせようとしたことで、『懲りない学ばない頭を使いこなせないの3N異界人』と称される篠原京香に悪夢を見せたというその偉業より某所からの強い尊敬を受けることになった。






「入るぜ―」

 何処をどうやって辿り着いたのかわからないのだが、ようやく目的地についたらしきロドのおっちゃんが声をかけて入っていったのは窖のなかに設置された邸でした。

「…岩の中に見事に埋まりこんでるんですけども、このお屋敷」

 どんな建築家による所業ですかこれ。

 昔むかしの石炭が主流だった時代。――最低の所属階級であり、最多の労働者であった炭鉱の作業夫たちはその命の危険から信仰を大切にするものも多かったのだという。

 そうでなくてもお守りを身につけて作業するのは通常のことであり、器用なものは祈りをこめて岩で神像を彫りだす者もいたというのは嘘かまことか。

 とにかく。

「これは信仰ではないだろう、これは」

 乾いた呟きで京香は地味に突っ込んだ。

 どどんと埋まった邸の前には、蛇の絡まったシンボルマークが存在していた。

 ………医者か科学者か哲学者。―――どっちだ。

 その屋敷の所有者に対して、いやあな汗をかきつつ考察した京香だった。

 もちろん。

「なにしてんだ京香。――はやくこい」

 戻ってきたロドのおっちゃんがそのすばらしい筋肉質な腕でもって京香をその屋敷へ引っぱり込んだことで、その考察はしてもしなくても同じ結果に繋がることになったのだが。

「待って待っておっちゃん。なんだかすごい嫌な予感が! すごい嫌な予感がするんですけどもおおおおおお」

「ほいほい、悩むな感じろとりあえずおまえさんの感覚は間違ってねえと思うぜ―」

「いやあああそこは否定してええロドのおっちゃん!!」


 髭のないドワーフに連れ去られた少女の声は、涙の色をにじませていたということだ。








「おお、俺の実験体。素敵に今日も科学のために生きてるか?」

「いやあああああああああああ、もう実験いやあああああああああああああああああああ」


 半狂乱で叫ぶ京香の目の前には。

 ふしゃしゃしゃしゃしゃと笑う蛇牙族の青年。

 長く伸びたその茶色の髪を無造作にクリップで留めた30歳。

 だらんと裾が伸びた白衣は、医者の制服でもなく哲学者の証でもなく、ただのマッドサイエンティスト。


「おお? そんなに喜ばれると俺様の研究魂に火がつくぜ? おっ嬢ちゃん」


 ふしゃしゃしゃしゃ、と笑う口元には蛇の牙と、赤くて長い舌。

 「狂蛇」「世界を周る冒険者」「隻眼の蛇」。

 京香が出逢った二人目のS属性であった。










 じゃっがー。


 ちなみに、一人目のSはもちろんラ―くんですとも。

 間違ってない。


 次は、来年までお待ちくださいませ。(ぺこり) 


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