02 彼女と彼の、忠実さ(おもに娯楽への)
今日も一日おつかれさーん!なお仕事が済んだ。
明日は休日、遅い時刻までやってる某100円均一ストアへ寄ってから帰った。
買ったモノは、自家用栽培セット!
―――― 美味しいフレッシュな果物が食べたい。
食への欲求には忠実でありたい私です。
ぺしぺしぺしぺし!
水色のミニスコップが唸るよ!!
用意したスコップと肥料と苗をバケツに入れて、今日も微妙に薄暗い魔王城の曇天のもとへと繰り出した私なのです。
「――――― なにをなさってるんですか? ご友人さま 」
おっと、声がかかった―。
振り返ってみると、獣耳いっちばーん!
魔王城における警備員(正式にはいろいろと長い名前があるらしいが、知るかそんなもん)である、虎人族のマッシュくんが居た。
「 今日はエコ活動に励みに来たのですよ 」
合言葉は、緑の惑星!(私の)お腹いっぱい!
笑顔でこちらは応対したというのに、相手は眉間にしわを寄せて応対しおった。
ねえ、失礼じゃない? マッシュくん。(おもに私のか弱い心臓に対して)
「―― どこがか弱い … 」
ぽそりと漏らしたマッシュくんの小声は聞こえませんでした。
ははは、言いたいことは真正面からいいなさいね、マッシュくん。(超笑顔)
でなくば意見とはみなされないよ!!(笑!)
「ところでさあ、マッシュくん」
「…なんでしょうか、ご友人さま」
出会った当初はその鋭い牙をむき出しにして威嚇してきたマッシュくんだが、最近はなにかを悟ってくれたらしい。
おかげで話がスムーズに進む。
(ここで出会った当初からひとを無視して話進めてたのは誰ですかとかいう突っ込みは入らない。――― マッシュくんは彼奴等と違って、読心術は持っていないのだ)
「なんで植えた端から枯れたのかな、私のストロベリーさん」
なんとなく女の子なイメージがするので、勝手にストロベリーさんと名付けてみた。
ちなみにバナナだとバナナくんになる。(もちろん、イメージが男の子だからだ!)
「――― 魔王城の周りにはいろいろとありますから。…猛毒を含んだ種類のものとか、肉食の種類のものとか、呪的作用のあるものとかが」
おそらくは土が持ってる毒素とか魔気だかに負けたんでしょう。
―― 禍々しいな、おい。
―― 魔王城ですから。
声には出さずに表情で会話してしまった。
いやん、以心伝心。
「 いや、誰かが単純なだけだろう 」
やはりぼそりと小声が聴こえた気がしたが、気にしない。
「マッシュくんのことか」
なんだ、そうか。
そこは空気を読んで理解した私でした。
「 ちげえよ!! 」
どう考えても、おまえのことだ!
一瞬泣きそうな顔に見えたよ、どうしたのマッシュくん。
だがしかし。
否定は許しませんよ、マッシュくん。
だって、この前レイちゃんがそんなこと言ってたもん。
『マッシュは単純すぎて呪いがかかりにくくて困る』って。
呪いを趣味とするレイちゃんは、とても悔しそうでした。
「いつのまに俺に呪いかけたんだ!? あの魔女!!」
叫んだマッシュくんは、ダッシュでレイちゃんを捜しに行きました。
あーあ、S属性が喜びそうな行動するんだからマッシュくんてば。
「…あれだからレイちゃんに遊ばれるのにねえ」
かきかきかきかき、さくっ。―― 合掌。
“ストロベリーちゃん、ここに眠る ”
やや丸字の日本語でプラ製の名札にそう書いた後、枯れてしまったストロベリーちゃんのお傍に突き立てた。
まあ、あれだ。
魔気とやらに変質してしまって、食べられない猛毒のストロベリーちゃん爆誕とかにならなかっただけ良しとしよう。
下手なB級映画のような展開は欲しくはないのですよ、ええ。
「…あ、しまった。頼まれてたDVD持ってくるの忘れてた 」
やばい。
オタクの路を進む私だが、友人である魔王にポータブルDVDプレイヤーセット(懸賞で当てました)でお勧めのDVDを貸すのは嫌なことではない。
たまに、気になりつつもまだ見てないDVDとか借りてきて一緒に見る。
面白いぞー。隣で突っ込む魔王の姿は。
あれだけでレンタル料金の元は取れると信じてる。
「さーせん、魔王さま! 約束してたDVD持ってくるの忘れました!!! 」
魔王の居室へ戻った後、素直に頭を下げましたら。
「 ―― とってこい、今すぐ 」
即行で自室へと転移させられてしまいました。
ふざっけんな―、転移酔いしたらどうしてくれるー!!
最近の魔王様は、B級映画のありえなさが大変お気に召しているらしいです。
主人公は意外に感情が表情に出ます。
無防備なんです、こっち(異世界)だと。
そして、マッシュくん(実は本名じゃない)。
ところどころでボロが出ています。敬語苦手なの?