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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
阿《ぱっくり》・吽《ぴったり》
15/98

15 彼女と彼の、落書き事情  其の六





 この世界には、神様がいたのだと言う。

 神様たちは、この世を作り、この生をつくり、この死を倦んだ。

 そして、最後に。


 魔を、厭った。



 ――― 世界はとても美しくて、とても複雑で、とても活発でした。けれど、それゆえに魔は生まれたのです。


 幼い子供に寝物語を語るように、叡知の魔女は語り紡ぐ。

 異界の神話を。


 ――― 悲しみと苦しさと倦厭が、魔を生んだのです。




 …ねえ、レイちゃん。 

 物語りは、もういらないよ?

 冷たくて、哀しくて、苦しいだけの物語りなんていらない。

 耐えるだけの強さを、皆が持っているだなんて誰がいったの、誰が決めたの。

 優しい物語りがいいよ。

 明るい物語りがあるといいよ。

 笑いあって生きていける夢物語がいいよ。


 ―――― 泣いてもいいから、勇気をくれる物語りがいい。



 だって、そうじゃなかったら。



 ―――― 私は、――― を、―――てしまう。






「―― ご友人さま? 」


 声をかけられたので、目覚めた。

 ぱちくり。

 上のまつ毛と下のまつ毛がお別れする瞬間。


「 ……… 」


 右を見れば、赤髪蒼眼のイの友その一。

 前を見れば、人の胸の上にのし上がってやがる、赤銅色の鱗を持つ、小さな竜王。

 左を見れば―。


 ぷよん、ぷよん、ぷよん。

 

 鬱蒼とした天気、鬱蒼とした林。

 その魔に侵された空気のなかで、跳ねあうスライムたち。


「 夢でも見たのか。京香 」


 ちびなくせに、嫌になるほど男前な声で、最後の竜王ヴィラード=オクスが声をかけてきた。

 

 「…夢なら、いいのに…ね」






 京香のありえない行動に興奮してしまった二人の興奮が、スライム女王【ぷよんちゃん】に移った結果か。

 彼の女王は、いきなりぶよんと跳ね跳んだ。

 高く高くたかく。

 ―― 京香をその身体の上に乗せたままで。


『にょほええええええええええええ!!!』


 女性に夢見たい年頃の二人は、既に京香に女は感じないことにしている。

 のだが。


 ――― それは、あんまりだろう。


 心から思ってしまった、京香の叫び声だった。

 そんな京香の救命信号だか断末魔だかは、なんとか竜王のサーバントが拾って見せた。

 その反射神経に、京香は感謝するべきだ。

 だが惜しいかな。

 京香は、そのとき既に失神していたのである。

 ―― バンジージャンプは苦手なんです、命綱くらいつけておいて。

 そのような発言がこのあとにあったかどうかは知らないが。

 軽く20ミヌの間、京香は気を失っていたのだ。


「ねえ、ラ―くん。ジェムっち」

 京香は、今日も晴れ間のない魔王城の天気を見ながら呟いた。

「 この世界の神様は、何処へ行ったのかなあ 」

 誰もが知らない問いを発した。


 ぶよんぶよんぶよんぶよん。

 ぶにょんぶにょん。

 ぴこん、ぴこぴこ。


 スライムたちは何が楽しかったのか、宙を飛んで遊んでいる。


「…この世界以外のどこかだろうよ 」


 ラ―くんは、そう答えたし。

 ジェムっちは笑っていた。―― 仮面のような笑みで。






 黒のマジックを1本貸して。

 太いマジックで、2本の線を引いてくるから。

 そして、その上に新しい名前を書くの。



 神様でもない、魔女でもない、竜王でもない、人魚でもない、―――― 魔王でも、ない。


 たった一人のあなたに。



 私がつけた名前をあげる。









「―――  ひどい神様もいたもんだ 」


 ぼそりと京香が呟いた言葉なんて、そのまま壊れてしまえばいい。








  本日の覚書   1ミヌ=1分。

  


 

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