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はじまり


バレてしまった。

私が、男装していた女だということが、遂にバレてしまった。

男装騎士ミカエラは、よりによって一番バレたくない相手にバレてしまって、

焦っていた。



「ミカ、お前、、、」

騎士団長でもある軍神と名高い、王弟、

ギルロイドの目が、ミカエラを見て見開かれている。



ーーー騎士団に男装して潜入していた私、

『ミカエラ』は、

騎士団に潜入して数カ月目にして、

騎士団長、『ギルロイド・スカーレッド公爵』に、

男装して潜入していたことがついにバレてしまった。



(あーぁ、・・・早かったなあ)



もうおしまいか。

この優しい団長さんとの日々は。



ーーーーーーーーーーーーーーーー




姿見鏡の前に立ち、騎士服に身を包んだ私は、


「まさか、騎士服に入る日が来るとはなぁ、」と呟いた。



事の発端は、2カ月前。


「ミカエラ、お前に、騎士団への潜入を命じる。」


薄暗い部屋の中で、壮年の男が、

目の前に跪く少女、ミカエラに話しかける。


頭を垂れる少女の短い金髪が揺れる。

下を向くアーモンド型の瞳は美しいマリンブルー。

唇はサクランボのように可憐だが、肌は青白く、

夜の闇に溶けてしまいそうな儚げな少女だ。


(は?騎士団に潜入?)


「現王派の貴族や大臣連中からの依頼だ。

王弟の『ギルロイド・スカーレッド』を失脚させる弱味を見つけよ、とな。」


今この国は、現王『アーサー』と王妃を中心とした『現王派』と、王弟であるギルロイド・スカーレッド公爵を中心とした『王弟派』の2つに、貴族の派閥が分かれている。

『現王派』は、政略結婚により嫁いだ王妃と王妃の生家に良いようにされている気弱な頼りない現王を担ぐ派閥。

『王弟派』は、軍神と名高い騎士団長の王弟を担ぐ派閥。


(王族の権力争いに関する依頼かあ・・・嫌だなあ)

現王の王妃は、浪費家で我儘で傲慢で、悪評まみれの正妃だ。

その正妃の依頼を叶えるのは嫌だというのが正直なところだ。


「現王の王妃が懐妊したとの情報が入った。

産まれるのは男児だそうだ。

男児が産まれるまでに、王弟を失脚させたいらしい」


「あの王弟の弱味・・ありますかね?

王弟の評判なんて、『軍神』『戦を勝利に導いた英雄』『騎士団の皆が憧れる騎士団長』とか、そのような噂ばかりですが。」

「弱味が無いなら、捏造しても構わんとのことだ。

王弟は、ああ見えて用心深いからな、中々外部の者は王弟の身辺を探れなくてな。

いざとなったら適当な女を使って陥れるか、

お前が色仕掛けでもしても構わん。

もし可能であれば・・殺しても構わんと。」



(何言ってんだこの爺。色仕掛け?殺す?

あの軍神を?本気か?)


ミカエラは、儚げな見た目に反して、ちょっとばかし口が悪かった。



「騎士団の新人募集が春から始まる。

イシスと一緒に潜入しろ。

お前の外見なら、男から警戒されにくいだろう。

難しい依頼ではあるが、王妃の子が産まれるまでの数カ月の猶予がある。

それまでに王弟をどうにかしろ。」


「・・・ご命令、承りました」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


主人の部屋から廊下に出て、階段を降りると、

イシスが壁に寄りかかっていた。


「よおミカエラ、依頼内容聞いたか?」

「フザケた依頼だよなあ全く」


私が毒づくと、イシスがヘラヘラと笑う。

イシスは、この組織で数年前から一緒に働いている仕事仲間だ。

今回の仕事の相棒でもあるイシスは、

スラリとした体躯の、銀髪にシトリンの瞳をもつ20代前半のイケメンだ。


「男装して騎士団に潜入なんて、頭がおかしいよ上の奴らは。」

「無理な命令するよなあ、お偉いさんたちも」


だがまあ命令された以上、やるしかない。

今回は王族の王位継承権に関わる依頼なため、

成功報酬は凄まじい額だ。


とはいえ、数カ月単位で男装か。


下手に大人数で動いても、王弟に気付かれかねないから、今回メインで動くのは私とイシスの2人。

仕方ない、やってやろうじゃないか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そう意気込んでから早2カ月。


季節は春になり、

私とイシスは騎士団に入団する試験に受かり、

本日から王都の騎士団に入る。


洗面台の前に立ち、真新しい騎士服に身を包む己の立ち姿を見る。


「まさか、騎士団に男装して入る時が来るとはなあ・・」


「着替えたか?ミカエラ」

洗面所の扉がコンコンとノックされる。

「今行く、イシス」


騎士団に入るため、私とイシスには偽りの身分が用意された。

イシスと私は同郷の出身で、幼馴染で、適当な貴族の令息という設定だ。

だからイシスと私も同室にして貰えた。



新入り騎士は、初日は順番に騎士団長に挨拶をしに行かねばならず、

私とイシスは騎士団長の執務室に向かう。


「失礼致しました!!」

私達の前の順番だろう男が、執務室から出てきた。

赤銅色の短髪の体格の良い男が、ピシッと姿勢良くお辞儀し、元気よく挨拶をしている。


(おー、いかにもThe・熱血って感じだな)

そう思いながら熱血君を見ていると、

熱血君がこちらを見て目が合った。


「!!」

ん?熱血君の目が見開かれた。


どうしたのかと思い首を傾げたが、熱血君は私の顔をボーッと見つめ続けてきた。


「なぁ、イシス、僕さ、あいつにガンつけられてる?」

「は?いや、ガンつけてるっていうよりは、、」



「次、ミカ・マグノリア、入れ!」

扉の横に立つ騎士が声を張り上げる。

熱血君がビクッ!となり、足早に去っていった。


お、呼ばれた。

扉の前に行き、扉をノックする。












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