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Epilogue ~幸せを創る今~

約束の時間より、10分早く、集合場所の新宿駅に、着く。


今日は、一緒に住む家を、彼女と、内見をしに行く。


先日、友人の方と、別れた後すぐに、僕は、彼女に、電話をした。


夜遅くだったこともあり、彼女は驚いていた。


『もしもし。急にどうしたの?』


彼女の驚いた声が、聞こえた。


「大好きだよ。」


僕は、前振りもなく言った。そして続けた。


「次の週末、君が住みたい郊外の家を、内見しに行こう。」


不動産屋には、神楽坂のマンションが、第一候補だと伝えていたが、念のため、彼女が希望していた、郊外の駅近くの家も、幾つか物色させていた。


彼女は、泣き声だった。


『本当に、急に、どうしたの?』


同じことを、聞いてくる。


「君のことが、心の底から、大好きで、大切なんだ。だから、君が住みたい場所で、一緒に将来を歩みたい。」


アルコールのおかげもあり、自分の素直な言葉が、そのまま出てきた。


『ありがとう。私も愛してるよ。』


彼女は、泣きながら、言ってくれた。


『私、仕事辞めたいんだ。』


彼女の、突然の言葉に、少し驚く。


『仕事、大変なだけなんだよね。そもそも、長く勤めるつもりなかったのにね。私、本当は母校に戻って、研究がしたいの。』


彼女が、初めて自身の話を、してくれた。


『資金も貯まったし、母校の大学院に戻って、学位を取りたいの。』


それで、母校に近い郊外に、住みたいと言っていたのか。


どうして、それを言ってくれなかったのかと、聞いてみた。


『だって、男の人は、仕事の方が大切でしょう。あなたの通勤も、大変になるし。勉強の為に、仕事を辞めるなんて、おかしいって思われるんじゃないかと、思って。』


「凄いよ。尊敬する。」


僕は、短くも、本音を伝えた。


『ありがとう。私、あなたと一緒になれて、本当に良かった。』


彼女は、泣きながら、でもきっと微笑みながら、言ってくれたのだろう。


よくよく考えると、彼女が希望していた駅から、新宿駅までは、特急に乗れば、電車1本で30分も、かからない。


駅近の家であれば、オフィスまで1時間も、かからないだろう。


都心に住むと、乗り換えの時間も、かかるから、結局は、大して変わらないかな、そんな風に、自分を納得させたが、それ以上に、彼女を幸せにしたい思いが、強かった。


僕は、甘ったれだけど、彼女にも、僕に甘えてほしい。心から、そう思った。


遠くから、彼女が近づいてくる。


彼女は、僕を見つけて、いつも通り、優しく微笑んで、小さく手を振ってくれた。


『お待たせ。待った?』


彼女は、嬉しそうに、僕に尋ねる。


綺麗な人だ。


心の中で、自分自身に言う。


「僕も、今来たところだよ。」


彼女が、大きな笑顔になる。


彼女の履歴を、僕が消すことは、出来ない。でも、生きている僕は、今の彼女を、幸せに出来るチャンスを与えられている。


過去の元カレの履歴を、今の僕との時間で、上書きさせてみせる。


その為にも、彼女を幸せにして、小さな微笑みじゃなくて、この大きな笑顔に、沢山してあげるんだ。


「じゃあ、行こうか。」


僕は、彼女の手を握り、同じ歩幅で、歩き始めた。

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