the 2nd: Jealousy ~狂おしい嫉妬と猜疑心~
あの名前が、ずっと頭から、離れない。
電話が終わって、彼女が席に戻ってくると、不安で僕の顔が、歪んでいたのだろう。
『どうしたの?大丈夫?』
彼女は、僕の隣に座って、背中をさすりながら、心配をしてくれた。
「え?何が?別に大丈夫だけど。」
僕は、強がるので、精一杯だった。
『きっと、仕事で疲れて、酔っ払っちゃったんだね。』
彼女は、そっと僕の頭を撫でながら、言ってくれた。
彼女は、スタッフを呼んで、水と会計を頼んでくれた。
請求書が来ると「僕が出す。」と一応言ったのだが、僕らのデートは、必ず割り勘だ。
彼女の方が、給料が高いので、僕に一度だって、奢らせてくれない。
レストランを出て、駅まで一緒に歩く。
いつもなら、僕から、彼女の手を握るのだが、どうしても、手が動かなかった。
いつもと違うと察して、彼女から、僕の手を握ろうとして、僕は、咄嗟に振りほどいてしまった。
彼女は驚いた表情を見せて『ごめんね。気分が優れないんだったね。』といつも通り優しく言って、微笑んでくれた。
その後、僕は、ずっとうつむいたまま、歩いた。
彼女は、僕のペースに合わせて、少し早歩きになりながら、僕の雰囲気を心配して、色々と話をしてくれたが、全く耳に入ってこなかった。
こんなことに、嫉妬してる自分が情けない。こんな優しい彼女に、猜疑心を持っている自分が不甲斐ない。
落ち着いて考えてみれば、一年も付き合って、これから同棲もするというのだから、彼女が浮気をしてるなんて、思うべきじゃない。
でも、狂おしい嫉妬と猜疑心が、ずっと僕の心を搔き乱す。
仕事をしている時だけは、忘れられる。
僕は、自分の仕事だけでなく、同僚や先輩たちの仕事も、奪うように手伝っていた。
彼女からLINEが来るのだが、きちんと向き合えず、「今忙しい」とだけ返す。
管理職で10人の部下を見ている彼女より、僕が忙しいわけがないのだが、自分の器の小ささにウンザリする。
言いたいことがあるなら、ハッキリ言えばいいのに。
彼女に対して、いつも思っていた感情が、自分の胸に突き刺さる。
僕も、真実を知るのが怖くて、彼女に、直接聞くことができない。
どうすればいいんだ。
僕は、本当に頭が、おかしくなりそうになり、藁にも縋る思いで、彼女を紹介してくれた彼女の友人の方に、電話をしていた。
「お久しぶりです。あの、僕のこと覚えてますか?」
一瞬だけ間があったが、すぐに答えてくれた。
『勿論。覚えてるわよ。私は、あんたたちの愛のキューピットなんだから。でも、電話くれるの初めてだよね。一体どうしたの?』
「突然で、本当に申し訳ありません。でも、近いうちに、直接お会いできませんか?」
電話の向こうで、警戒するような、雰囲気が伝わってきたが、僕は続けて言った。
「彼女が、浮気をしてるかもしれないんです。それが気になって、しょうがないんです。もしかして、何かご存じだったりしませんか?」
『どうして、彼女が、浮気をしてるって思うの?』僕を、責めるような口調で、友人の方が、言う。
僕は、素直に、僕の知らない男性の名前に、彼女が、何度も電話をしていることを、伝えた。
数秒の間があって『そっか。あの子、まだその電話番号にかけてるのね。』
友人の方は、何かを知ってるような、口調だった。
『分かった。いいわよ。私が知ってる限りだけど、教えてあげる。』
『空いてる日だと、そうね、今週の金曜日か、あとは今晩ね。』
僕はもう、心が壊れてしまうと思い、今晩、友人の方と会う約束を取りつけた。




