聖夜の大冒険
僕はシロウ、今からサンタさんになる子供です。お遊戯会とかじゃないよ!本物のサンタさんさ!僕がサンタさんになった理由?それはね……クリスマスの1週間前だったんだ。お父さんがソリのお掃除をしていた時に腰を痛めたんだ。
「イタタタ……」
「大丈夫?」
「大丈夫さ……今年もクリスマスが来るんだからな……」
クリスマスの夜以外は普通のお父さん。だけどクリスマスの夜はサンタクロースのお爺さんになって世界中の子供達にプレゼントを配っていた。それを知ったのは去年の事だった。この事は僕とお母さんだけの秘密だ。
「あなた今年は無理よ。やめましょう……」
「いいや、自分はまだ若いサンタクロースだから……自分が欠席したら他のサンタクロースに迷惑をかけてしまう。」
「……じゃあ僕が行くよ!」
「「えっ?」」
僕は何も考えずに口が動いていた。去年ソリに少し乗せて貰って、今年はトナカイさん達と少しずつだけど仲良くもなった。
「まだ無理よ!やめなさい!」
「そうだぞ!それにおもちゃは重いし、おもちゃを間違えたら大変な事になるんだぞ!」
「大丈夫だよ!だってお父さんの子だもん!出来るよ!」
「あなた……」
両親は顔を見合わせていた。そして……
「分かった。じゃああと1週間でおもちゃを誰に届けるか覚えるんだぞ!遊びじゃないんだからな!」
「うん!」
僕は目をキラキラさせた。初めての1人での冒険に!そこからはひたすら名前と顔を覚えていった。中にはたぬきやキツネ、ウサギに鳥と言った動物のプレゼントもあった。でも、これは流石に驚きを通り越して怖くなった。
「お父さん……この子にもプレゼント贈るの?」
「あぁそうだよ!その子は去年と今年の半分はいい子で暮らしてたけど……半年前に入院してついこの前亡くなったんだ。でも、いい子にしてたのは事実だからプレゼントを持って天国に行ってもらうんだよ。」
「でも、この場所僕知らないよ?」
地図の場所は僕の知らない場所……
『おもちゃの館115号室』
となっていました。
「大丈夫だ。トナカイ達が知っているからね。」
「……分かった!」
僕はお父さんの代わりにお仕事するんだ。幽霊だってお化けだって動物だって怖くない!みんなが笑顔になるために頑張るんだ!
そうして12月24日の夜になりました。僕は赤い服と帽子、白いお髭はないからつけ髭をしてもらいました。
「いいかい、シロウ。おもちゃに番号を書いたシールを貼ったからその通りに配るんだ。シロウも覚えているだろうが念のためだ。場所は100ヶ所だ。1番から順に届けて朝までに帰ってくるんだぞ!」
「分かったよお父さん!僕頑張るよ!」
「それとな……途中でお菓子とかくれると言われても食べちゃダメだぞ!」
「……?分かったよ。」
もうこの時間だから誰もいないはず、なんでそんなこと言うのかわからなかった。でも、安心してもらうために返事をします。
「シロウ……無事に帰ってくるのよ。私たちにとってのプレゼントはシロウあなたなのだからね。」
「お母さん……うん!じゃあ101個目のプレゼントとして気をつけて行って来て帰ってくるね!」
僕は手綱を握りトナカイ達に合図を送った。するとソリはゆっくり動き出す。
「それとなシロウ!他のサンタに会ったら挨拶もするんだぞ!」
「うん!ちゃんと挨拶するよ!」
僕は手を振って答えた。そして先程言った事は他のサンタさんにお菓子とかは貰わない様にって事なのだと分かった。ソリはゆっくり動き始めて走りだした。そこからは1、2、3とプレゼントを配ってまわった。その合間合間に他のサンタさんに出会って挨拶をした。そして今度は動物の子供達へのプレゼント。ウサギさんから始まって、最後はペンギンさんだった。みんな眠ってて朝起きた時の笑顔が見れないけど……みんなが笑顔になってるといいなと思いながらソリを走らせる。そして100個目……これが最後のプレゼント……場所はおもちゃの館115号室。
僕はトナカイたちに合図を送った。100個目だよって……するとトナカイ達は急に速度を上げ始めた。僕は目を開けてられなくて目を閉じた。でも手綱だけは絶対はなさなかった。ソリの速度が落ちてくるのが分かると僕はそっと目を開けた。その場所は何処か全く知らなかった。周りには風船が飛んでいてブリキの列車が走ってて……まるでおもちゃ箱の中みたいだった。
「おもちゃの国へようこそ!」
「えっ?」
「ここは子供達の好きな物で出来てる夢の場所さ!こちらにはお菓子が沢山用意されていますよー!」
「い、いえお仕事中ですから!」
僕はトナカイの手綱を強く握ってソリを走らせる……そこからも誘惑に負けず僕は目的の場所おもちゃの館にたどり着いた。
「115号室……ここだね。」
僕は窓からそっと入った。中には眠ってる女の子がいて幸せそうに寝ていた。僕は起こさない様にプレゼントを置いてそのまま去った。
そしてソリに乗って帰ろうとした時だ。突然景色が、いや世界が変わり出したのだ。僕は来た時同様手綱をしっかり握ってトナカイ達に合図を送った。揺れる視界に揺れる世界……気を抜いたら気絶しそうなほどだった……けど!
「僕は……サンタさんだから……帰らないと!お父さんとお母さんにプレゼントを届けないと……いけないんだ!」
僕は目をしっかり開いて手綱を更に強く握った。するとどこからか音楽が聞こえた。それは変わって行く世界をゆるやかなものにしてくれていた。
「ジングルベル!ジングルベル!鈴がなるー!鈴のリズムに光の輪が舞う!」
この歌は誰が歌ってるんだろう……そう思いながらトナカイたちは世界を駆けて行った。そして気がつくといつもの夜空になっていた。そして空にはオーロラが出ていました。
「さぁ!帰ろう!みんな!」
僕は家に帰りつくとお父さんとお母さんに抱きしめられたその瞬間安心したのか僕はそのまま眠ってしまいました。
次に起きたのは17時を回っていました。そして僕の靴下の中にはプレゼントが入っていました。大きなプレゼントと小さな紙袋が……僕は大きなプレゼントより紙袋の方を先に開けました。そこには手紙で『ありがとう』の言葉とオルゴールが……蓋を開くとあの時流れた歌が流れました。
『ありがとう!メリークリスマス!』
後ろを振り向いても誰もいませんでした。でもあの声はあの時歌ってた人の声でした。
「ありがとう……」
僕もなぜかお礼を言っていました。そして僕はこのオルゴールを一生大切にすると誓いました。
20年後……
僕はお父さんからサンタさんを受け継ぎました。僕がソリに乗る時は懐にいつもあのオルゴールを持って行くのです。あの時の様に誰かが見守ってくれてる気がするから!