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第四話 風ッ!(怒)

今の状況を説明するなら「ヤバイ」の一言ッスね。

いや〜通り魔探してたらまさか…ヤンキー×4に取り囲まれるとは…いくらセンパイが助けに来てくれるといっても、ちょっとは逃げた方がいいかもッスね〜


ってなわけで私は太股のホルスターに付けたスタンガンを引き抜き、正面を塞ぐ茶髪ヤンキーの首筋に当て、スタンガンのスイッチを入れる。


バチッ!!という音とヤンキーが呻く声が同時に響き、茶髪が地面に倒れる。

よし、これで突破口は開いたッス。後は全速力で逃げるッス!


私はヤンキー×4の包囲を突破して一目散に走り出す。後ろからヤンキー達が罵声を浴びせながら追い掛けてくるが、無視する。今はただ、逃げる事だけを考えないと。


「このクソアマァ!」

「待ちやがれ!」


うわぁ…こりゃ捕まったら完璧犯されるッスよ…ってかまだセンパイは来ないんスか!?


私はポケットからGPSを取り出して一瞬だけ画面を見た。センパイを表す青矢印と私を表す赤矢印が同じ方向に向かって動いている。

…しまったッス!これじゃセンパイから遠ざかってるじゃないッスか!ヤバイッス!なんとかしないと!でも後ろのヤンキー達が血眼で追っかけてるから引き返すのは無理だし…人目のつく場所まで走らないと!


そう思った時、不意に後ろから髪を引っ張られて私は仰向けに地面に転んだ。

…痛い、真上から金髪のヤンキーがニヤニヤしながら私を抑え込んだ。

怖い…でも逃げなきゃ。

私はスタンガンを金髪の腕に押し当ててスイッチを押す。

「ガっ!?」

金髪が苦悶の表情で手を離す。私は急いで立ち上がるとまた全速力で走り出した。

もう一度GPSの画面を見る。センパイがさっきより近い位置まで迫っていた。

よかった…と安心して気を抜いた瞬間、目の前にモヒカンヤンキーが現れて道を塞いだ。

いつの間にか回り込まれたということに気づく暇もなく顔を殴られる。

「…ッ!?」

すごく痛い…でもそんな事を感じる暇も無く、私はモヒカンと追いついてきた金髪に引きずられて路地裏に連れられた。なんとか抵抗するが、後から加わった茶髪と坊主ヤンキーに抑えられて身動きもできなくなった。

「ッ!離せ!」

叫んでみるが、金髪に口を塞がれて叫ぶこともできなくなる。

「このクソアマ、スタンガンなんか持ちやがって」

「へへっ…たっぷりお仕置きしてやるよ!」


クソッ!なんで!?なんでまだ来ないんスか!センパイ!!


金髪がナイフを取り出して私の上着を切り裂く。

「オイ、犯した後この女の髪切っとけ。そうすりゃやったのが俺達じゃなくて通り魔だって思うだろ」

「お前頭いいな!」


…なんでヤンキーってこういう事だと頭が回るんスか…


抵抗しようともがいていた時、金髪が私の胸に触れた。瞬間、恐怖と嫌悪感で身体が動かなくなり、本能的に目を硬く閉じた。

…ヤダ…ヤダ!やめろ!なんで初めてがお前らみたいなクソ共なんだよ!?…センパイ!助けッ…


その瞬間、

「ガッ!?」

っと金髪が叫び、ヤンキー達からの拘束が解かれた。

「なんだテメェ!?」


…センパイ?


そう思って目を開くと、私の視線の先には、まるで女性だと間違えてしまいそうな綺麗な顔に、長髪で眼鏡をかけた男が立っていた。


あれって確か…うちの学校の副会長…?





やれやれ…こんな低俗な事をするバカが居たとはな。

それも、よりによってうちの学校の生徒を襲うとは…バカな奴らだ。制裁をくださなければならないな


「このヤロォォ!?」


ニワトリのトサカのような物を頭に付けた不良が、ナイフを振りかざして俺へと迫る。


…なんだあれは?グリップの握りが甘すぎる。それに無駄に腕を振り上げている。ナイフの長所をまったく生かしていない…使い方を知らないのか?屑が…


トサカ男がナイフを振り下ろす。だが無意味、遅すぎる。俺はトサカの手首を蹴りあげ、ナイフを弾き飛ばす。丸腰になったトサカの鼻を肘鉄で潰し、顎を蹴り上げ、中段突きで水月を打つ。トサカは中段突きの衝撃で飛び、ゴミ箱に突っ込んだ。

「テメェェ!!」

側面から茶髪が叫び、拳を振りかぶる。

…バカかコイツは?今ので俺との力量差を理解できんとは…


ため息をつきながら茶髪の拳を受け流し、カウンターの上段蹴りを側頭部へ叩き込む。すると茶髪は無様に呻いて倒れた。

これで金髪、トサカ、茶髪の三人を無力化した。後は坊主頭の不良のみ、だがコイツは利口なようだ…俺に勝てないとわかると尻尾を巻いて逃げ出した。



「無事か?」

「あ、ありがとうございましたッス…」

地面にへたり込んだ女子生徒へ声をかけると、女子生徒は小さく頷いて答えた。

「ところで君は…何をしていたんだ?こんな時間帯に女子高生が独り歩きをするなど、襲ってくれと言っているようなものだぞ?」

「その…」

女子生徒が言葉を紡ごうとした瞬間、

「コイツだ!コイツにやられたんだ!」

先程尻尾を巻いて逃げ出した不良が新たに6人の仲間を引き連れていた。

なぜこんなに早く増援が来れたのわからんが、7対1、倒せないこともないが、面倒だ…ここは退くべきだな…


俺は背後の女子生徒にアイコンタクトで逃げるよう合図をする。幸い女子生徒は察しがよかったようで、俺の伝えたい事を理解したようだ。

俺達は隙を見て逃げだそうとした時、リーダー各の不良が吠えた。

「女みてぇな顔しやがって!やっちまえお前ら!」


………あ?このカス共…今なんて言った?

まさか…この俺が…女みたいな顔だと…そう言ったのか?

リーダー各の不良が金属バットを振りかざす。

「ぶっ殺してやる!!」

…上等だ…返り討ちにしてくれる…


そう、俺が構えた瞬間。不良集団の背後に見覚えのある人影が現れた。

…あれは…風戸・信玄?まさか奴もカス共の仲間か?


そう認識しようとした時、背後の女子生徒が安堵と共にこう呟いた。

「うう…来るのが遅いんスよ…センパイ…!」




…オイオイオイ…このクソ野郎共は何やっちゃってんの?俺のかわいい後輩とダチ公を取り囲んで何をしようとしてんのよ?ええ?


俺はまず手始めに、バットを振りかざしていたヤンリー(ヤンキーのリーダーの略)の肩を掴み、問い掛けた。

「なぁ、これから何すんだよ?」

「あぁ?お前芳樹の話聞いてなかったのかよ?これからあの女みてぇな顔の野郎をぶちのめしてから隣の女を犯すって言っ…たぶしゃら!?」


俺はヤンリーが全てを言い終わる前に、無意識の間に放っていた右拳でヤンリーの顎を砕いていた。

あ〜…うん、最後まで聞く必要なかったな。

俺の脳内裁判は満場一致で判決を下した。

判決…血祭りじゃゴラァ!!


ヤンリーが殴り飛ばされたことによってヤンキー×6の視線が俺に集まった。瞬間、

「あ…うわぁぁ!…ゲェ!?!?」

一番近い位置にいたカスの鳩尾に拳を叩き込む。


…ゲロ吐いてんじゃねぇよ、きったねぇな


「コイツ昨日の化け…!?」

…喋るんじゃねぇクズ野郎共…お前らの汚ねぇ声なんか聞きたくねぇんだよ…


背中を向けた坊主頭のヤンキーの頭を掴み、力技で地面にたたき付け、

「ヒッ…!?た、助けッ…ゲフッ!?」

腹を思いっきり蹴り飛ばした。その勢いでハゲは吹っ飛び、棒立ちになっていたヤンキー×2を巻き込んで地面に倒れる。

「ば、バカ!どけよ!」

「助けて!?」

ハゲを退けて逃げようとするクズ二人(面倒なのでA、Bと命名)の頭をわしづかみにして、AとBの頭をシンバルを打ち付けるようにぶつけた。

A、Bが泡を吹いて気絶する。

「た、頼むよ!み、見逃してくれ!」

「見逃してやるわけねぇだろうが、バーカ」

最後に残ったクソ野郎は土下座して俺に謝りだした。そんなことされても俺は許す気など微塵もない。ってなわけで、俺はクソ野郎の後頭部目掛けて踵落としを放った。

「グベッ!?」

よかったな〜俺が昔姐さんにやられた時はハイヒールのヒールだったから死ぬほど痛かったけど、お前はスニーカーの踵だから全然痛くねぇだろ?


最後の一人に制裁を加えた後、俺は直ぐさま座り込んでいるヤシロのもとへ駆け寄る。

「大丈夫かヤシロ!?」

「バカ!」

ヤシロは近くに落ちていた鉄パイプで俺の頭をガンガン叩く。

めちゃくちゃ痛いけど我慢だ俺…ヤシロが感じた痛みはこれの何倍も大きいんだからよ…

「アホ!ボケ!クズ!カス!能無し!ノロマ!デカブツ!!」

ヤシロの声は震えていて、俺を見る目には大粒の涙が溜まっている。

「チェリー!童貞!」

…グハッ!?最後の二個はかなり傷つきますよヤシロさん!


「うう…怖かった…怖かったよぉ…センパイ…!」

ヤシロは俺の首に腕を回して抱き着き、ついには声を上げて泣き出しだ。

震えて泣きじゃくるヤシロに、俺はあやすよう優しく頭を撫でて落ち着かせるために背中を軽くたたく。

「ゴメンな…遅くなっちまって」

「ホントッスよ…副会長さんが来てくれなかったらもうダメでした…」

そう言われて俺は近くにいたカイエンを見る。

「ありがとよ…カイエン。ヤシロのこと助けてくれて」

「礼はいらない。俺は偶然通り掛かっただけだ。そんなことより、この子はこんな時間帯に一体何をしていたんだ?」

「それは…」

俺はカイエンに今夜俺とヤシロがやろうとしていた事の内容を事細かに説明した。俺が説明している間、カイエンは呆れたような目で俺達を見て、最後にため息をついた。


「風戸、君はバ…すまないバカだったな」

「オイ!今なんで言い直した!?そんでなんで謝ったの!?」

カイエンは失言だった…とでも言っているように両目を閉じて首を左右に振った。

ちょっ!お前バカにしすぎだろ!!

「とにかく、通り魔を捕まえるのは諦めろ。あれはお前達に捕まえる事は出来ない」

「あ、うん。そりゃわかってるぜ?ただヤシロがな…どうしても通り魔にやられた友達の敵討ちをしたいって言ったんだよ。だから、無理だとわかっていたけどヤシロの好きにやらせていたんだ」

「そうか…見つからなかったのは残念だったな。だがもう帰れ。奴の出没する時間帯は過ぎた」

そう言われて俺は携帯電話の時計を見る。時刻は午後十時十三分、通り魔が出没する時間帯はとっくに過ぎていた。

「ああ、そうするよ。でもその前にやることがあるからさ、手伝ってくれねぇか?」

「やること?」

そう…まだ絶対にやらなきゃならない大事な事が残ってる…





「ご…ごめんなざい…」

「もう…じばぜん…」

「ゆ、許じで…ぐだざい…」

「だ、だから…こ…殺さないで…」

深夜一時、俺は今、河川敷にある陸橋の上で遠くを見ていると、真下から弱り切っただみ声が俺の耳に入る。

「えぇ何?聞こえない」

もちろん嘘だ。本当はめちゃくちゃ聞こえてる。

「ぐ…このクソ野郎!後でおぼえ…ガボゴボッ!?」

「口の聞き方に気をつけろカス」

カイエンが持っていたロープを放す。するとボチャン!という池に何かを落としたような音が響いた。

あ、今どんな状況か説明しないといけねぇな。

今の状況、簡単に説明すると俺はヤシロを襲ったヤンキー×10人に制裁を加えているところだ。制裁というのは陸橋の上からヤンキー共の足をロープで結んで逆さに吊るし上げて、俺とカイエンの気分次第で橋の下の川に落とすってやつだ。 俗に言う水責め?


「後で…何すんだって?」

口答えしたヤンリーのロープを引き上げて、俺は問い掛ける。

「ガハッ…ゴホッ…ず、ずびばぜん…ごめ…んなさい…」

「やっと謝ったな〜お前。じゃあ、最後に質問。それに答えたら許してやるよ」

自分でもびっくりするくらい冷たい声を発してヤンリーとヤシロを襲ったモヒカン、茶髪、金髪を引き上げる。

「お前ら…ヤシロ以外の女の子にもやろうとしたのか?」

もしそうならこいつらには社会的にも人間的にも生かしておくことはできない。

つーか俺が許さない。傲慢だと言われ様が俺は答えによってコイツらを本気で始末するだろう。そうならないと願いながら、俺はヤンリーに問うた。

「し、しでまぜん…!」

「本当か?もし嘘だったら…テメェら自慢のバタフライナイフでイチモツ削ぎ落として二度と使い物にならなくするぞゴラァ!!」

「ヒィィィ!?」

「ほ、ホントですよぉ!」

「う、嘘なんかついてないです!」

「出来心だったんですよぉぉぉぉ!!」

「や、やめてぇぇ!?」

お?本気で泣いてるから嘘ついてねぇみたいだな。よかったよかった…これで少しは気が晴れたかな

「そうか、じゃあ誓え。二度とこんなバカな真似はしません。それとこれから先、俺の言うことを聞く従順な下僕になると、そう誓えコラァ!!」

「ち、誓います誓います!!」

「だから許してぇぇぇ!!」

ヤンキー×10は涙ながらに懇願すると俺への恐怖心で気絶した。


やれやれ…馬鹿どもの調教ですっかり遅くなっちまった。早くかえらねぇと姐さんにしばかれる…

「さてと…悪いなカイエン、遅くまで手伝ってもらってよ。後は俺が片つけるから、帰っていいぞ~」

「いや、せっかくだ。最後まで手伝おう」

「いやいいって!!お前は副会長なんだから明日も早いだろ?」

「気にするな。こんなものが朝までに片付けられなかったら、いろいろと面倒になるからな」

コ、コイツ…!!朝会ったときはスゲェ無愛想だったのに、本当は付き合いのいいヤツだったのか!?

結局ヤンキー×10の片付けは朝の4時まで続いたが、カイエンのおかげで一般の方々のめにとまることはなかった。


このあとヤンキー×10が更生して世のため人のために俺の手足となって働くというのは、また別の話ってことで


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