第一話 風ッ!
この物語はタイトル通りの戦国時代的な物語…ではありません。
登場人物に歴史上の人物っぽい名前が出て来ますが、この物語は平凡でいて若干特殊な学生の物語。いわゆる学園モノですので悪しからず
風戸・信玄17歳。
中部地方に位置するN県、人口10万のそれなりに田舎があり若干都市化が進んでいる梨乃木市に住み。県立梨乃木高校|(通称、ナシ高)に通う高校二年生。
進学率と就職率がおんなじくらいのナシ高での成績は中の下、定期テストは赤点は取らないものの赤点に近い点数なら大量に取ってしまう勉強ギライの平凡な男子高校生だ。
人に誇れるような事は得に無し、指導部の先生方に若干目をつけられていおり(悪い意味で)、内申があまり良くないが高校生活を目一杯楽しんでいる…と思う。
こんな感じが、俺の自己紹介かな。
おっと、忘れるところだった。最後に彼女募集中だぜい!
…と夜中に全力疾走しながら自己完結してみる俺。
え?なんで夜の町を全力疾走しながら自己紹介してるのかって?そりゃあ…
「まてコラァ!」
「ぶっ殺す!」
不意に後ろから殺気の交じった怒声が飛んでくる。
…うん、ちょい現実逃避してました。
今の状況を簡単に説明すると、あれだ
10人くらいのヤンキー集団から逃げてます。そらもうボルトも真っ青な超全力疾走、超ダッシュ、100メートル8秒台くらいの速度で…
あ、やっぱ流石にボルトは無理。
黒人のバネには敵わないし、俺には100メートル8秒なんて夢のまた夢みたいな?せいぜい100メートル12秒が限界だぜい。
あ〜一回生で黒人ランナーが走るところ見て〜な〜
…ゴメン、また現実逃避しちまった…でも逃避くらいしたくなるよ!こんなヤンキー漫画に有りがちな展開を今まさに体言している事に逃避して何が悪い!?
……ふぅ、ちょっと熱くなっちまった。
話を戻そう。なぜに俺が、よりによってヤンキー集団に追われているのかと説明するとな。
詳しく語るとそれは30分くらい前に遡るんだけど。
30分くらい前、一人暮らしの俺は晩飯を買いに近くのコンビニに弁当を買いに行った訳よ。でも普段はちゃんと自分で自炊するんだぜ?
でも今回はな…ちょっとした事情で晩飯作る時間がなかったから、さっとコンビニで済ませようとしただけなんだよ…つーかホント言うと夜は外に出たくなかったんだが…わざわざコンビニまで行って晩飯食おうなんて、今日に限って思っちまったのが間違いだったんだ。あ〜あ…こんな事になるんだったら昨日の作り置きカレーをアイツにやるんじゃなかったな…
え?どうでもいい話は置いといてさっさと話を先に進めろ?わかったわかった…
じゃあ進めるぞ。
家を出てコンビニに行くまではよかった。
うん、行くまではな
問題は帰りに起こっちまった。
帰り道、俺は店員さんに温めて貰ったDX幕ノ内弁当|(大盛り980円)、旬の野菜サラダ|(240円)とペットボトルのお茶が入ったビニール袋を下げてダラダラと自宅に向かっていた。
その道中、道端でヤンキー座りをしてた茶髪と金髪のヤンキー二人に運悪くからまれた。
俗に言うカツアゲってやつ。
最初は面倒だったし、早く帰って弁当食いたかったから無視してたんだが。
そんな俺の態度が気に入らなかったのかヤンキー二人、俺のDX幕ノ内弁当とサラダとお茶が入ったビニール袋を蹴っ飛ばしやがった!
蹴っ飛ばされた弁当入りのビニール袋は宙で三、四度回転すると当然のようにアスファルトの地面に散乱した。
もちろん中身もぶちまけて
それでキレちゃったのよ俺は。
だってよ、あのクソ共食べ物を粗末にしたんだぜ?
米には八十八の神様が宿るって言うし、肉とか野菜だって農家のおっちゃん達が汗水垂らして育てた物だから。
だから…決してDX幕ノ内弁当が980円というコンビニ弁当にしちゃあ高いな〜って理由でキレたんじゃないからね?
チックショウ!なんでDX幕ノ内弁当の隣にあった普通の幕ノ内弁当|(480円)を選ばなかったかな俺!?そうすれば被害に遇わなかった分の500円は無事だったのに!なんてぜんっぜん思ってないから。うん、ホントに。
で、俺はグシャグシャになった弁当を見て零コンマ五秒後にソッコーでヤンキー|(茶髪)をぶん殴った。
俺の怒りの鉄拳は茶髪の前歯を叩き折ってから3メートルくらい茶髪を吹っ飛ばした。(これはマジ)
ついでに吹っ飛ばされた茶髪を見て呆然としてたヤンキー|(金髪)の顔面もぶっ飛ばしてやった、もちろん前歯をへし折るサービスつきで。
茶髪は気絶して、金髪は前歯抑えてうずくまって動かなくなったから俺はアスファルトに落ちた弁当を拾って自宅に向かった。
それからしばらく歩いて、次の角を曲がると自宅に着くって場所でよ…
来ちゃったのよ、ヤンキー達がさ。
ぶっ飛ばして前歯折った茶髪金髪が仲間引き連れて金属バット持ってやって来た。
クローズかお前ら!?
なんてツッコミ入れて一目散に全力疾走。
それで最初の状態になった訳で、回想終わり!
「あーもう!めんどくせーぞお前ら!俺を追うのがそんなに楽しいか!?このサディスト野郎共!」
なんて言ってみるが、怒り狂ったヤンキー達の耳には入っていないみたいだった。
「うるせぇ死ね!」
「殺す殺す殺す!」
「お前の歯ァへし折ってやらぁ!!」
…うん、説得は無駄だった。これが世に言う焼け石に水?
なんて冷静に判断してる場合じゃねーよ!さっさとなんとかしねぇーとならねぇし!
とりあえず人目に着かない場所まで行ってなんとかしないとならない。
俺は走りながら左右に視線を向ける。
しかし今走っている場所は住宅街で人目に着き易い場所だった。
ちょっと騒ぎを起こせば人が集まってしまう。人が集まれば警察が呼ばれる。警察が呼ばれると…うう、あの悪魔が出て来る…それだけはなんとしても避けなきゃならねぇ!
じゃねーとマジで殺される…
俺は全力で人目の着かない場所を探す。
公園、マンションの駐車場、路地裏、工事現場、なんでもいいから近くにないのかよ!
ん?なんで人目の着かない場所を探しているのかって?
それはだな…って、うお!人目の着かない場所見っけ!
ちょうど最近潰れたパチンコ屋の駐車場があったので一目散に駆け込む。
ここなら滅多に人目に着く事はないだろう。
俺が駐車場のど真ん中に立ち止まると、やや遅れてヤンキー×10が息を切らしながら到着、そんで直ぐさま俺の周りを取り囲む。
ヤンキー×10は肩で息をしているが、全員殺気立った目付きで俺を睨んでいた。
連中、映画で見る薬物中毒のヤバイ奴ら並に目が血走ってやがる…
中にはやっと追い詰めたぜゲヘヘヘッ、って言ってそうなモヒカンヤンキーが舌なめずりをしていた。
つーか今時モヒカンって流行んねーと思うけどな…
「なんだ、もう逃げねーのか?」
ヤンキーのリーダー|(長いのでヤンリーと命名しよう)が金属バットを突き付ける。それに続いて下っ端ヤンキー達がニヤニヤ笑いながら脳内で俺をリンチする算段をしているようだ。
「いや、逃げねぇよ…」
俺は指の関節をゴキゴキと鳴らしてヤンキー達を睨む。
するとヤンリーと下っ端ヤンキー達が腹を抱えて笑う。
「はッ!バッカじゃねーの?10対1だぜ、てめぇに勝ち目はねぇよヴァカ!!」
ヤンリーが金属バットを振りかぶり、俺に向かって突進してきた。
あ、突然だけどさっきの続き。
なんで俺が人目に着かない場所を探してたのかって言うと、まぁ普通の人なら人目に着くとこまで逃げて助けを求めたり、交番に直行するんだけど。
俺にはそんな必要はない。
何故なら…
「オラァ!死ねぇ」
ヤンリーが俺の脳天目掛けて金属バットを振り降ろす。
俺は右によけて金属バットをかわすと、回し蹴りを顔面に打ち込む。
「ガッ!?」
ヤンリーの前歯を折り、同時に吹っ飛ばす。
…おお、5メートルは飛んだな〜
「てめぇ!」
さっき前歯を折ってやった茶髪が殴りかかる。
俺は茶髪の拳をかわさず、あえて真正面から受ける。
顔面に拳が当たり衝撃が来るが、ダメージはほとんど無い。つーか全然痛くなかった。
「弱っちぃな〜パンチってのはぁぁ!こおぉ…打つんだよッ!!」
俺はカウンターのストレートを茶髪の鼻に打ち込む。
グシャ!
硬いものを砕いた音と陥没する感触が拳を伝わる。
フム、今の感触だと鼻の骨へし折ってやったようだぜ!
そんな流れでヤンリー+ヤンキー×9を次々と薙ぎ倒して行く俺。
2分後、さっきまで俺の周りを取り囲んでいたヤンキー達は一人残らず倒れ、駐車場に立っているのは俺だけだった。
「よし、帰ろ」
俺は自分で言うのも何だが、やたらと喧嘩が強い。そして強い上に驚異的なタフネスを持っているのだ。
花山薫|(グラップラー刃牙の登場人物です)並の異常な程の喧嘩の強さとタフネスで、俺の喧嘩を見た一般の方々は「若い子達が化け物にボコボコにされてる!?」なんて勘違いをされて、お巡りさんに通報。
ヤンキーに絡まれた被害者であるはずの俺が加害者と思われるような事がよくある。
なので俺は人目に着かない場所でこっそり絡んで来た馬鹿共を返り討ちにするという訳だ。
余談だが、後輩で悪友であるYによると、俺は梨乃木市喧嘩ランキングNo.3らしい。
ちなみにこの喧嘩ランキング、不動のNo.1とNo.2は身内の悪魔だと言うのはまた別の話。
それからなんで俺が異常に喧嘩が強いのか、というのも、またおいおい説明するとして。
俺は弁当を台なしにした茶髪金髪を無理矢理起こし、弁当、サラダ、お茶代をキッチリ請求|(カツアゲじゃないよ?)をしてから、いつものダラダラとした足取りで自宅へ帰る事にした。
20分後、自宅付近に到着。
ヤンキー達を人目に着かない場所まで連れて行くために随分と自宅から遠退いていたようで、かなりの距離を歩かなければならなかった。
携帯電話の時計を見ると時刻はもう9時を回っている。
こんな時間にまたコンビニへ行って弁当を買う気力は無いので今晩は晩飯を抜きにしよう、腹減ってるけど…畜生…あの茶髪金髪ヤンキーめぇ!俺をぶっ飛ばすならまだ許してやったけど、よりによって弁当を蹴っ飛ばすなよ!
おかげで腹が減るわ、疲れるわで散々な夜だぜぇ〜。でも、次の角を曲がればマイホームだ!さっさと風呂入って寝よう。
そんな事を思いながら俺は角を曲がると、自宅の前に差し掛かる。すると、
「うっわ〜夜中なのに赤い車って超目立つぅ〜」
マイホームの真ん前に赤色の高級外車(ポルシェ)が停まってました…
あんな車堂々と乗りこなすのは俺の知る限りただ一人、身内の悪魔|(喧嘩ランキングNo.1)その人しかいねぇ…
あぁ…なんか超憂鬱になったよこれ…俺のテンションがどこぞの株価の如く暴落しちゃてるよ〜
しかたない、あの人と顔合わせると絶対何かやられるし…今晩はネットカフェに泊まるとしようかね。財布の中には三千円と小銭が少々、懐は寒くなるけど背に腹は変えられない…だって…あの悪魔といると生きた心地がしないんだもん!
というわけで回れ右をして、俺はこの町にただ一つのネットカフェへ向かう。いや、向かおうとした瞬間。
「なんだゲン坊、お前もコンビニだったのか?」
回れ右をした直後、前方から年若い女性の声が俺の耳に入り、同時に声の主であるスーツ姿の女性が目に入る。
やり手の若手弁護士のような風貌に、すれ違う誰もが美人と言うようなルックスの持ち主だが、俺にとってはいろいろと恐怖の対象でしかない。
「あ、あ、あ…姐さッ−ゲフゥゥ!?」
「誰が姐さんだバカヤロウ」
俺が、ん、の発音をするより早く姐さんの蹴りが鳩尾にヒットし、俺は腹を抑えて地面に倒れる。倒れた俺を見て姐さんはハイヒールのヒールで俺の肩を思い切り踏み付けてぐりぐりとする。
超マジ…鬼だなこのお方…
「ゲン坊、また喧嘩したんだって?どうやらお仕置きが必要みたいだな」
そういうと姐さんは俺の襟首を掴んで家の中へ引きずり込んで行った。
…クソォ…今日は厄日だぁ…!
新作です~
楽しんでいただけましたでしょうか?
これからも頑張るけど不定期で更新しますがよろしくおねがいしま~す