1-1 こんなモテ期は望んでいません。
芸能家族に囲まれた平凡な私の世界。ひょんなことから飛び込むことになった。そこで待ち受けていたのは、
甘々?溺愛?禁断?逆ハーレム?だった。奮闘しながらも、自分の中の知らない自分が顏をだす。相手は弟、兄、先輩、後輩、クラスメイトに、同姓からも迫れているって、まさにモテ期……。残念ながら望んでいておりません。私の秘密はそのままにしたいけど、秘密にさせてくれない。
周囲に振り回されてながら、芸能の世界で奮闘する主人公の日常を描いていきます。
凛と輝く彼らの視線に、私は囚われた。
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カケル シグレ
ユイ ナツキ
『No name』の4人がキミに贈る1曲。
『一輪花*』
まもなく、解禁。
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僕は、君の肌に触れたい。
触れたくなる「純粋」な肌に。
『Agnos-アグノス-』
人気急上昇中のモデル―ヒイロを新化粧品ブランド『Agnos-アグノス-』のイメージモデルとして採用!
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彼らは、どうしてそんなに美しいのだろうか?
「ピ、ッピーー」
通学通勤の人混みの中、警笛が駅前に鳴り響いた。
時刻は朝8時。
「広告から離れなさい!」
「やばっ、見つかった」
人が溢れる駅前で、警官が女子高生に強く注意する。
彼女のお目当てのもの。
それは今日貼られたばかりのポスター。
誰もが一度は立ち止まり、彼らに囚われる。
2枚のポスターに写る彼らたちに。
私は、そのポスターに目を向けた。
分厚いレンズ越しで見ても、素敵な笑顔は歪むことはない。
アイドルたちに向かって、「はぁー」と、私の重く深いため息がもらす。
私は、長い三つ編みを揺らしながら重い足取りでその場を後にした。
赤星学園 普通科2年B組の教室。
憂鬱な授業が終わり、教室内はざわめいていた。
「真綾、駅前に貼られてたポスター見た?」
友達の問いかけに思わず、私はげっと顔を歪みそうになった。
けれどなんとか踏みとどまって、肩を揺らす程度で抑えることができた。
「み、見たよ」
危ない。
放課後だから油断してた。
軽い衝撃を受けていた私を他所に、クラスメイトは目をキラキラさせて続ける。
「だよね~。見惚れて、身体が勝手に動いて気付けばポスターを剥がしちゃってた。
まぁ、ケーサツに注意されて奪えなかったけどww」
あ、朝の犯人見っけ。
「ちょっと真綾。変な目で見ないでよ。結局未遂で終わったんだから。
それくらい素敵なの!化粧品広告のヒイロと『No name』のシグレは!」
興奮して語る様子に、私は「そうなんだ」と聞いてる風を装う。
しかし、エンジンのかかった喋りは止まらない。
「ヒイロは高1なのに顔が整い過ぎてる。さすがこの学園の芸能科のAクラスだわ。
年下だし、弟だったら毎日鼻血が出そう!」
さらに勢いは加速する。
「シグレは高3だったよね?シグレの声は悩殺する威力がある。耳元で囁かれたら、腰砕ける!」
この学園の芸能科に通っている彼らは、生徒の話題の中心にいる。
毎度毎度のことながら、飽きずに話す。この流れで行くと、
「ヒイロ君って、お姉さんがこの学園にいるんでしょう?」
キターーー!
「だ、誰だが判ってるの?」
私は、恐々と尋ねた。
「それが分からないだよね。
ヒイロが雑誌のインタビューで姉がいるから、この学園に決めたって答えてたよ。
それにシグレもテレビで妹が同じ学校に通ってるって言ってた」
この話題に、私はいつも心の中で冷や冷やしていた。
「なんか二人って似てるね、シスコンの所とか。
ねぇ、真綾もそう思わない?」
いきなり私に話を振ってきた。
「う~ん、どうだろうね?」
私は、あやふやに答えた。
彼女に、「二人とも極度のシスコンだ」と、なんて言える訳がない。