転移
目が覚めたときには真っ白な場所にいた。
アニメや漫画でよく見る、みんなが想像するあの場所だ。
眠たい体を起こして立ち上がって前を見ると、長い髭をいじっているおじいちゃんが椅子に座っていた。
「ふぉっふぉっふぉ。お主はなぜ自分がここにいるかわかっておるか?」
そう言われてやっと、自分の身になにが起こったかを思い出した。
高校に入学して数ヶ月、尖りまくりの俺に友達なんていない。
そんな時期に開催された夏祭りで、俺は金魚すくいを延々と1人でやっていた。
「おい! そろそろどっか行ってくれ! あんたのせいで後ろが詰まってるんだよ!」
「なんだと? 俺はこの日のために1万円も貯めてきてるんだ。後ろのやつなんか知るかよ!」
「てっめええええ!」
“バァン”
!?
なにが起きたのか理解できなかった。
しかし、そのあとすぐに自分の置かれた状況を把握した
「ゴポポポポポォォォォォ」
(苦しい、苦しい、息ができない」
どうやら金魚が泳いでる水槽に沈められているようだ。
「ゴポポポ、シュポン」
(うがああああ、金魚が喉に詰ってえええええ)
「グハッ」
そうかこうやって俺は死んだのか。
「ふぉっふぉっふぉ。思い出したようじゃのう。分かっていると思うがここは天界でわしは神じゃ。今からお主の進路を決めるから好きなのを選んどくれ」
「で、なにがあるんだ? 異世界転移とかできるのか?」
神は少し悩んでから言った。
「んー……異世界に行くことはできるんじゃがお主の場合はのお……」
「ん? なんか問題でもあるのか?」
「まあなんというか、現世で最後に思ったことに関する世界にしか転移できないんじゃよ」
(ということは俺の場合は……)
「つまりお主じゃと金魚すくいが世界のベースになる世界に行くことになるのじゃ」
「はあああああああ?????」
終わった。そんな世界でまともに楽しめるわけがない。異世界転移は諦めるしかないか。
「あ、ちなみにそれ以外の選択肢だとお主は消滅するか、なんの楽しみもない天国に行くしかないがのお」
「そんなの異世界転移するしかなくね?」
そんなこんなで意味のわからない異世界に転移することに決めました。