己を知りチートを知る(4)
ざっくりとしたタスクを一連のフローにしながら、項目毎の手順を抜き出す。
工程フローと手順書を作るように。
タスクを並べ、処理速度から期限をそれぞれ決めて線を引く。
工程表を書くように。
それぞれに必要な材料を分け、いつまで用意するかを決める。早すぎても遅すぎてもダメ。
他にも知識の無い部分は無いか…
誰にやらせるか…
不確定要素は何か…
その要素による遅延を吸収しきれる余裕代は…
動かす人材に重複は…
そもそも重なる工種の干渉は…
深い所に体が沈んでいくように、イメージを深めていく。
実際に現場が動いている所をイメージするように。
どのタイミングで危険が出るか…
どんな影響が及ぶのか…
注意の指示はどうするか…
……etc.
……とりあえず、こんなところか。
内政や外交といった未知の分野に、一抹の不安を感じるが…なんとかなるだろ…
蝋燭も短くなり、暗闇がより濃くなっていた為、今日の所は諦める事にした。
火を消し、書き殴ったノートを闇の奥底に仕舞い込むと、安心したようにベットへ崩れていた。
「…月○日、朝礼を始めます。」
作業内容…危険予知…あれ?今日は大事な日だった気がする。
点検表にチェックを入れてると、決まって声を掛けられる。
顔が白く塗り潰されてる。
デニム生地の繋ぎを着て、緑のヘルメット。
毎朝他愛もない話をしてたと思うけど、誰だか思い出せない。
「あんま監督いじめちゃダメですよ。」
ヘルメットから長髪が伸びている人が、後ろから会話に混ざってくる。
「本当ですよ!手加減して下さいよ。」
俺の声が聞こえる。そのまま2人と一緒に歩いて行き、作業状況にカメラを構えている。
六畳程の仮設ハウスに入って、PCを立ち上げる間に煙草へ火を点ける。
今日なんかあった気がするんだよな…
PC画面は、契約見積と予算書が並んでおり、後から工程表が開いた。
何度確認しても、やはり合わない…
この重なってる工程線は干渉するから重ねられない。
そもそもどの工種も線がおかしい。
人数を増やすと金額が合わない。
能率(処理速度)が合ってない。
下請けの金額的に人は増やしてもらえない。
残業も同じく無理だろう。
追加で払う予算は無い。
つまりこれは終わらない。
2本目に火を点けた所で、勢いよくドアが開いた。
顔の前を仰ぎながら、わざとらしく咳き込んで男が入ってきた。
「どう?順調?」
そう言いながら、現場に似つかわしくないスーツに革靴のまま、ズカズカと上がり込んでいた。
俺はというとそれなりの返事をしながら、点けたばかりの煙草を消し、全てのタブを消している。
そのまま男が隣に座り、愚痴を溢しながら色々指示をしてくる横で、俺は聞き流しながら指示された仕事を淡々とこなしている。
無駄な仕事を終えた所で、書き直した工程表を画面に出して、王様気取りでふんぞり返っている彼を見ながら、心静かに言った。
「どうします?これ。」
一月以上もオーバーしたスケジュールを見て、それは一瞬たじろいだように見えたが、再びふんぞり返り、堂々とこう発した。
「オマエノセキニンダカラナ」
拙い文章ですが、読んで頂きありがとうございました。
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】に評価を頂けると幸いです。
誤字脱字や批評でも構いませんので、コメントも頂けるとありがたいです。
評価ボタンは励みになりますので、何卒応援よろしくお願いします。




