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己を知りチートを知る(3)

 この夜もあの男はやってきた。


 いつもより今日の話は熱を帯びていた。

 魔法が使えるようになり、俺もこの男も興奮していたのだろう。



 風を操るだけと考えているだけでは、風魔法は矢などを落とす防御としてしか有用性が無い。


 飛行のような事も出来るが、自分1人を浮かべ続ける為に、無防備に魔法を展開し続ける術など戦では不要だろう。


 相手を吹き飛ばしたり、切り裂くだけの風魔法は射程が狭すぎる。


 魔力によって魔法の範囲は決まるが、それから先は物理法則に沿って抵抗を受け、重力を受ける為だ。


 水や石を飛ばすと重量があるので効果を期待出来るが、空気でそれを行おうとすれば圧縮するのに相応の魔力がいる。



「酸素、あるいは窒素のみを操作すれば魔力消費が抑えられ、範囲も広がるはずです。」


 これは部屋の石畳が石灰岩と思われる事から、不純物を取り除いて炭酸カルシウムのみ取り出した時に思いついた。


「なるほど…であれば有毒ガスや腐食性ガスを作り、その気体のみ敵陣に放り込むのも有効か…」


 男は顎をさすりながら、関心したようにノートを見つめていた。



「やっぱりな…あんたも転生者か…父上。」


「そうだ。いつから気付いていた?」


 一瞬はっとした顔をしたが、諦めたように尋ねてきた。


 時間や気候について話した時もそうだが、これまで俺の話を目新しさに驚いたり、拒絶する事がなかった。


 父親だからといって、ただの5歳児が話す仮説に、なるほどなどと相槌を打つだろうか。


 そこで試しに、まだ無いはずの元素という概念をぶら下げてみたのだ。

 見事に釣り上げられた事を知り、呆れ果てた様子で首を振る。


「バレたら仕方ないな。風魔って日本人だよな?

 ワ●ピース終わった?」


「終わってない。こ●亀は終わった」


「嘘…だろ…」


 それから暫く日本人同士の他愛のない会話をしていた。



 真面目な話をすると、ハヤテは元陸上選手だったので、身体能力を活かして冒険者を生業にしようと思っていたとのこと。


 二代目国王、つまり俺の祖父はこの世界の人間だが、国政に携わっていた人間がこの時代は転生してきて、大公として裏から実権を握っていたのだとか。


 きっとハヤテが目障りだったから、冒険者として自国を出て行く彼を送り出し、放置していたのだろう。


 初代国王は軍のお偉いさんだったらしく、勝つまで戦い無謀な侵攻をした挙句、後ろから攻められたのだった。


 撤退する際は殿を任せたいとか乗せられて、大公にトカゲの尻尾にされる始末だ…


 敗戦の責を取らされる事を察知した先代は国外逃亡。

 これを討ち取った功績と、冒険者として打ち立てていた武勲からハヤテが国王となった。


 これも大公の筋書き通りなのだろう。

 少し違ったのは、王家貴族本位な圧政を敷いていた邪悪の根源とバレて、うっかり毒を盛られたことだろう。


 こうして王になった彼の知識は、現代のスポーツ科学まで行かずとも、体を作るノウハウが兵士の身体能力向上に貢献していた。


 また、持ち前の真面目さから、王になってから他分野の勉学にも取り組んでいた。


 しかし、魔法という前世では便利すぎるチートがあるこの世界では、根本的な物理や化学の知見を集めるのが困難だったとのこと。



「さて、一通り伝わったな。お前には期待してる。

 というかお前が頼みの綱だ…」


 更に何か続けようと口を開いたが、重々しく空気だけを吐き出すと、諦めたように口を閉ざすのだった。



「分かってると思うけど、明日から城で暮らすことになる。

 風魔とこうして気兼ねなく話せるのも今日までだ。」


 それだけ言うと、申し訳なさげに手を振り姿を消した。



 後は俺の仕事って事か。

 なんでかわらないけど、笑みが溢れてしまう。


 目を閉じ、雑念を振り払うように大きく息を吸った。

「大丈夫。前世で腐るほどやった事だ。」



 これまでもらった情報を元に、問題点や展望と根本は見えてきた。

 それに対して提案する方法を検討、今回はお客さんがお任せって事だから提案も説明資料もいらないが、備忘録としてまとめておく。


 方向性と目標が定まり、それに必要なタスクはあらかた見えてきた。



 最初が全てだ。過程が良くてもインプットが間違えていれば、何の意味もない。

 ここまでを何度も何度も確認する。

拙い文章ですが、読んで頂きありがとうございました。


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誤字脱字や批評でも構いませんので、コメントも頂けるとありがたいです。


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