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土竜(22)

 俺は11歳になり1年早く入学したため、少し早いが学習院を卒業出来た。次代を担う学習院の成績優秀者は、毎年女王陛下と謁見し労いの言葉をもらう。


「貴殿は大変優秀な……」


 もちろん俺が選ばれ、ハトホルを同行させていた。


「……アーサーさん、よく頑張りましたね。今後も土国の為にその力を奮って下さい。」


 シンドバッド商会の規模は順調に膨れ上がり、国の経済を支える彼らは実権支配するまでに成長していた。


 俺は強大な土魔法師でありながら、商会内ではNo.2としての地位を得ている。


「ありがたきお言葉、頂戴致します。」


 親友のハイダラは同志を集め、俺と共に立ち上がると言ってくれた。


「この場をお借りして、女王陛下へ進言させて頂いてよろしいでしょうか。」

「無礼だぞ!たかが一介の学生風情が!」

「良い。申してみよ。」


 跪き低頭していた俺はすっと立ち上がり、彼女を見据えた。


「私は風国第三王子、実の名をフーマと申します。」

「貴様!」「蛮族の穢れた血め!」

 騎士団達が思い思いの罵倒を口にして槍を俺に向ける。


 “この部屋の鉄を空間へ、木材を90°回転させ固定”


「俺は女王と話している。「キャッ」貴様らは黙って見ていろ。」

 俺が睨みつけると、槍先を失いびくともしない棒切れを持たされた衛兵達は尻込みし口を閉ざした。


 俺の噂を耳にして、束になっても敵わないのは理解しているようだ。


 それより今悲鳴が…?

 ハトホルが袖を引いてくるので視線を送っている方を見ると、女王が回転した椅子から落とされ、平伏していた。


「これが貴様の話とやらか?」

 顔を真っ赤にして俺を睨みつけている。とりあえず事故なので、俺は気にせず続けた。


「私は風国と土国を統べる皇帝となります。」


「言わせておけば貴様ー!」

 衛兵が一斉に飛び出すと同時に、俺は足元周囲の大理石を弾き飛ばし、壁に拘束する。


 俺は袖口を掴んでいるハトホルの手を取り、女王の前へゆっくりと歩いて行く。土下座のような格好で俺を見ている彼女の前で再度跪く。


「このハトホル王女と結婚させて下さい。私が必ず守り、幸せにすると誓います。」


「娘と結婚するだと?」「はい。」


「お前がこの国を統治するだと?」「はい。」


「私に王位を降りろと?」

「はい。あなたには待っている人がいる。あなたを陰ながら支え、迎えに行く為ひたむきに努力していた人が…」

 俺は彼女にしか聞こえない声でそう囁いた。


 彼は非道と後ろ指を指されようが、裏切られ危険に晒されようが、1人の女性を愛し、釣り合う男になれるよう努力していただけなのだ。


 商人でありながら損得とかけ離れてひたすらに…


「要求を受け入れよう。私は何をすれば良い?」


「察しが悪いな!夫婦になれば良いだけだろ。俺はシンドバッドを王に任命する。


 そして…今度はお前がまた守ってやる番だ。」


「フーマ!口が悪いよ。母様に向かってそんな言い方…」


 そう言いながら跪いている俺の腕をブンブン振り回すものだから、肩が外れそうになる。


「あぁ…ハトホル。夢みたい…」

 女王が彼女を押し倒すように抱きつき、俺の肩は完全に外れてしまった。


「お母様…私のこと…本当にお母様なんだね…」

「片時も忘れた事など無かったよ…ハトホル…」


 離れ離れになっていた母子の再会に水を差すのは野暮だろうと、俺はだらんとした腕を抑え、謁見の場を後にした。



 俺はその後、王宮の一室に通され一晩過ごすことになった。


「お邪魔しまーす…フーマ起きてる?」

 月明かりだけのほの暗い部屋に、ハトホルが入ってきたようだ。息を潜めそのまま寝床へ潜り込み、背中から抱きしめてきた。


「何の用だ。」

「やっぱり起きてた。まだ怒ってるの?さっき謝ったじゃん。」


 彼女が声を発するたび、耳元に息がかかりこそばゆい。背には膨らみかけた胸を寝巻き越しに感じる。


「怒ってない。それよりこんな夜中に男の部屋に来て…わかってるのか?」

 俺も子供の体とは言え、既に男となっている。


「わかってるよ。私の方がお姉さんだもん。」

 そう言って肩に頭を埋めている。彼女の火照りが肩越しに伝わる。


「肩が外れてしまって腕が動かないんだ。」

「嘘つき…もう治ってるくせに。」

 ふふっと笑う彼女の熱い吐息が首元を掠める。俺は仰向けになり、彼女の唇を求めた。


「甘えん坊だなぁフー…ムグ」

 生意気な口へ蓋をした。


「愛してるよ。」と言うと彼女は顔を真っ赤にし、目を潤ませて見つめてくる。


「不意打ち禁止!でも…私もだよ。」

 今度は彼女から口付けをしていた。何度も…何度も……



 もう一度水浴びしなければならないほど汗をかいたのは、きっとこの国が暑すぎるからだろう。


 俺は日の出と共に起き上がり、まだ眠っている彼女の髪を撫でた。白い髪に左手の指輪が透けて金色に輝く。


 産まれたままの姿で眠る彼女へ布団を掛け、書き置きをして王宮を出た。


 一仕事一片付け。最後だからと油断しない。高所作業や吊り作業、最後まで危険は付き纏う。


 仕上げと行こうじゃないか。ロベリア。


 “俺をクロユリの街へ”

拙い文章ですが、読んで頂きありがとうございました。


18禁設定をしていなかったため…性描写は別小説に書く事にしました…イチャラブは以下へ書いて行こうと思います。

https://novel18.syosetu.com/n6810hn/1/


お手数お掛けしますが、両方楽しんで頂けると嬉しいです。


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】に評価を頂けると幸いです。

誤字脱字や批評でも構いませんので、コメントも頂けるとありがたいです。


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