土竜(12)
当分の指導役としてハイサムという初老の男と同行する事になった。取決め通り、金ランクの護衛依頼を受領し、彼の待つ荷車へ向かう。
街中は風国と違い、小綺麗な格好の人が多かったが、皆ターバンのような民族衣装を身に纏っており、魔法適性が外見では分からない。
俺としても頭を隠せるのは好都合だ。こちらの民族衣装に着替えてから、ハイサムの元を訪れたのだが…
「なんだ子供じゃないか。こんな幼子1人が護衛など聞いてないぞ!それに買付に同行させろなど…シンドバッドは何を考えてるんだ。」
そう言いながら、彼は荷車の車輪を蹴りつけた。
「申し訳ありませんが、私は金ランクです。それに多勢を率いて目立つよりよろしいかと。若輩者ですがよろしくお願い致します。」
丁寧に礼をしたが、彼は舌打ちしさっさと先を歩いて行った。
今回の目的は火の国近くの街へガラス製品の売り、鉱物資源の買いだ。
ここには砂が大量にあるためガラス製造が容易である。だが土魔法では製造出来ない事から、高級品として丁重に取り扱われる。
土魔法で製造、加工出来ないのは、たぶん液体の構造を持った固体という微妙な性質からだろう。
火国沿いは最重要防衛線のため、魔法師が多数配置されているが、原料ではなく製品を運搬するようだ。
こういった事情も推察するのでは無く、教えるのも仕事だと思うが…そうこうしてる間に街を出て、見渡す限り砂漠となっていた。
前方にうっすらと人影が見える。近付くと10人ほどが群れて、道無き道を塞いでいる。
「少々待っていてもらえますか」と言いながら一足先に駆けて行き、荷車から50mくらい遠ざかり会敵した。
「おいおい、ガキがきた…」
“彼らの脳内血液を凝固”
糸が切れたように倒れ込んでいきながら、痙攣してる者や泡を吹いてる者もいた。次々と首を落として回収する。回収している最中に荷車が到着した。
「どういうおつもりですかハイサム様?」
たどり着いた彼は、驚きを浮かべながら「何の事だ?」と狼狽えている。
「わからないのですか?今死ぬか喋ってから死ぬかどうする?」
どうやら俺がただの子供で無いのは気付いたようだが、まだしらを切っている。
この盗賊は彼と通じている。彼らと会敵した位置、街と距離が近すぎる。そして俺らのルートに待ち構えていた。
それに彼らの装備が薄すぎるし、衣服が綺麗すぎる。
“ハイサムの足元半径1m、深さ1.5mの砂を彼の頭上へ”
「さて、今死ぬか喋ってから死ぬか、どうする?」
肩まで砂の海原に浸かった彼は悲鳴を上げ、助けてだの殺されるだの騒いでる。
「そうか。では望み通りに。」
吹き飛んだ首は、口を開けたまま砂に落ち、ゆっくりと目を閉じた。
「一旦街に戻る。また車を引いてくれ。」
「は、はい…」
こうして俺たちはまた商会に戻り、シンドバッドの元を訪ねた。
「随分早いと思いましたが、何かありましたか?」
「盗賊10人と裏切り者を処刑しました。シンドバッド様、知っていたのですね。」
王宮の一室のような豪華な装飾品が立ち並ぶ部屋で、彼はその中の1つを撫でながら佇んでいた。俺が問うても、こちらを見る事もなく答えた。
「合格ですよ。ようこそシンドバッド商会へ、アーサー君。」
「ありがとうございます。まずは何をすればよろしいでしょうか?」
「先に伝えていた通り、あの荷を売って、鉱物や金属加工品を仕入れて来てくれるかな。交渉役にハトホルを付けよう。荷車にもういるはずだ。」
今回の件は試されるというより利用されたのだろう。俺は少しの歯痒さを感じながら、礼をしてその場を後にした。
商会の仕事として売っても自分の給料は増えない。取られたフリをして、裏で売ってもらいマージンを貰う。奴の方はそんな所だろう。
商会の方は横領していた尻尾は掴んだが、処罰出来ずにいた所にちょうどいい人材が来た。思惑通り現行犯で切り捨ててもらえたという感じか。
「まずは信頼を得る事が先決、か…」
天を仰ぎながら、呟いた。
前世でも信頼を得るためのコミュニケーションを心掛けていた。相手が聞き役の場合、知識や自分の考えを一方的に伝える人がいるが、これは有効では無い。
意見を出し合うように対話し、相手の要所を突くように知見を出す。
気を付けるべきはマウントを取ってはいけない。自分の弱点を出し、相手に突かせる。
逆に信頼が不要な場合には…隙を見せてはいけない。それが俺が前世で学んだ信頼関係。
拙い文章ですが、読んで頂きありがとうございました。
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