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土竜(5)

 そう思った時期が俺にもあった。

 だが、間違える要素が中々思いつかず、2段目が中々積み上がらない。


 奴との会話は無視して、休憩がてら今までの違和感を遡っていくか。



 まず直近ではヒューゴを街へ呼んだ事。

 そして無意識にヴァイオレットと作業させている。

 能力的な面とキャラの相性として効率的な判断だな。


 間違えて……っておかしいか。


 そもそも俺は彼女を不確定要素としていたのに、何故彼女を連れてきた?


 彼女が心配だった…何故だ?

 ロベリアやデービットの悪意から守るために?

 あり得ない。彼女はロベリア達からすれば、毒にも薬にもならない。


 また迷宮に迷い込みそうになった所で、一旦深呼吸して頭を上げ、立ち止まる事にした。



 下界に降り立った俺こと神は、代わりに色々と作ってくれている。


「バカ!便器に尻の割れ目を縁取るなよ!」


「風車に羽根付けるのは、水路が出来てから付けてもらえよ…ポンプ動いちゃうじゃん…」


「地下の部屋は鉄筋入れて?図面書いてあるから配筋して?」


 絶妙に間違えているのだが。

 見ていると思わず口が出てしまい、気が散るから見ないようにしよう…


 冒険者アーサーの旅が遠のいた事に、思わずため息をついてしまった。



 アーサーといえば、彼女を和名にしたのは何故だ?

 スミレ…間違い…過ち…


 ふと前世の記憶が蘇り、自然と口角が上がっていた。

「そうか。彼女は…」


 光が俺の周りを取り囲み、周りが白くなり一寸先も見えなくなっていた。

 雪原の中、地吹雪でホワイトアウトするように、何も…



 気がつくと、見知らぬ部屋の中にいた。

 さっきたで見ていた映像から察するに、俺の代わりに下水を作ろうと土砂をごっそり空間にしまう途中で、魔力が切れたようだ。


 手順を踏まず、思いつきで作業するとこうなってしまうのは、先のガーベラ商会で学んだ。

 ともかく、家が沈んで無かったのは良かった。


 まずは地盤改良、杭を打つ。

 打つといっても土中に鋼管を出現させる事が出来るので、住宅を動かさなくとも良いのは助かる。


 この鋼管は最後に杭の厚みを変えるが、後で土魔法師が増えてから出来るから、とりあえず沈み込まないだけの小径でいい。


 次に杭同士を繋ぐ桁と梁を作る。

 鉄筋の配筋や溶接、型枠、コンクリート打設、養生をすっ飛ばし、そもそも掘削の手間も省ける魔法は便利すぎるな。


 この部材と基礎は神殿の天井部分になるから、何回かに分けて慎重に作らなければ。


 最後に小さい部屋を作る。

 本来なら掘削して周りの土砂を固めながらだが、先に基礎と繋ぐように壁と床を作り、後で中の土砂を撤去。


 トイレの穴と繋げれば、スライム先生のボットントイレが完成だ。


 これでワンセット。

 一軒ずつ回って魔力と相談しながら、地道に進めていく。


「そうだ…忘れる所だった。」

 神様の置き土産であるフィット型便座の形状を変え、記念すべき第一軒目の施工が完了したのだった。



「急に起きたかと思えば、材料持って走り回りやがって!まずは一言あってもいいんじゃないかい?」


 ガーベラが息を切らしつつ、クレームを入れてきた。

 俺がしでかした事ではないが、確かに非がある。


「それに、勝手に建物ごと移動しちまって!手続きや土地の売却もあるんだよ!」


 それは俺がしでかした事だ。悪いとは思ってない。

「顔に出てるよ!このおバカ!」


 また良い拳骨をもらってしまった。

 なんだかやり取りは親子のようだな。妖艶で美麗な淑女に叱られるというのも悪くないものだな。


「冗談はさておき、申し訳ないと思っている。

 でも時間が無くてな。」


「まぁいいさ。お前を見込んで来たけど、儲からなけりゃすぐ出て行くよ。」


 軽口のような口調で言うのだが、そこには大きな商会を女手だけで育て上げた重みがあった。

 だが勝算はある。


 今のところ、街には仕事が余るほどあり、金をばら撒いている。

 他所からも人が増え続けている。


 商売は結局のところ金を持った人間が多い所でないと儲からない。

 王都は人が多いが貧困層が多く、売り物には苦労しただろう。窃盗や強盗のリスクもある。


 食材も電気がない上、氷の無い国では管理が難しい。

 普通は貴族が大口となるのだろうが、家があの状態では王都内の貴族は当てにならない。


 また農産、畜産が上手くいけば、他の街や国から仕入れる金やパイプが出来る。

 最初は目が回るような忙しさだろうが、すぐ人を増やせるようになるだろう。


「大丈夫。すぐにそんな事も言ってられないくらい忙しくなる。」

 その言葉を聞くと、彼女はやれやれといった様子で、肩をすくめて去っていった。



 中断されてしまったが、続きをする前にあれを直しておかなければと、新たに建てられた木造の風車小屋の中に入ったのだった。

拙い文章ですが、読んで頂きありがとうございました。


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誤字脱字や批評でも構いませんので、コメントも頂けるとありがたいです。


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