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天上の一吸(3)

 まずはここに修道院を建てる。

 財源は奴等の溜め込んだ金や宝物を使わせてもらう。財産も王家没収ということは俺の物だ。


 この国の教会は欲にまみれ堕落し、信仰は廃れているため、修道院という形式だけ取り、勉学を教わる孤児院にする。


 それなら教会みたいな建物は小さいハリボテで良くて、あとは勉強するスペースと寝泊まりできる…


「あ…!あるじゃんいい物件!」


 早速ウィリアムに伝え、領民を使って元伯爵家の改装工事がスタートした。部屋の間取り、柱の位置、寸法を取り、図面を起こす。


 次に離れの中の家具を資材に変え、玄関をぶち抜き倉庫代わりにし、家の中にあった家財達も資材に変えて運び入れてもらった。


 ここまでで、昼に差し掛かっており、領民の奥方達が炊き出しをしてくれていた。


 俺はもらった握り飯を食べながら、大工さんと打合せしていた残す柱にマーキングをしていった。


 強度計算は専門外と任せきりにしていた前世を悔いつつも、この国は木造建築がほとんどであるため、大工の技量が高い。

 出来無いものは仕方ないんだ。協力してもらおう。


 昼休みを終えて集まり出した皆に、次の指示を出す。


「じゃんじゃん壊してって!

 ある程度壊したら足元怪我するかもしれないので報告して下さい。

 俺が片付けつつ、資材にします。」


 ガーベラの所で買った大槌とノコギリを渡しながら、靴の甲から先を覆うように土魔法で鉄板を入れてやる。


 解体工事の間に、俺は資材を作り離れへ運び、それで大工に机、椅子、2段ベットを作ってもらう。


 アベリアとヴァイオレットにはその間に、周囲の村へ修道院の宣伝と工事従事者の募集へ行ってもらった。


「衣食住が保証され、算術などを教えてもらえますよー。」

「1日手渡しで銀貨1枚貰えますよー。」


 反応はやはり懐疑的でイマイチだったようだが、こういうのは継続だろう。

 明日給金を渡せば風向きも変わるだろう。


 日が傾いて来たので、解体物の資材を離れへ運び、出来た物と資材を整理し直した。

 離れは最後に教会にして、結婚式場として少しばかりお布施をもらうか。


 そんな事を考えながら初日の仕事を終えて、給金を渡している最中に、自分達の寝床を失った事に気付いた。

 仕事に集中してすっかり抜けていた。



「フーマ様?これは一体どう言う事です?」

「明日にはベットが入って中で眠れます…」


 野営を組んだ所で、帰ってきたアベリアに説教されてしまった。ウィリアムが宥めてくれている。


「ま、切り替えよう!腹が減ってはなんとやらだ!」

「全然反省してない!ウィリアム!ガツンと一回言わないとだめだよ。」


 そう言ってはウィリアムに宥められている彼女を放って、俺とヴァイオレットは料理を始めた。


 今日は牛丼。牛じゃないが、味付けでなんとでもなるだろと結構ざっくり作ったが、中々行ける。

 3人は黒っぽいタレに少し引いていたが、肉汁と相まって絶妙の仕上がりに、麦飯をおかわりしていた。



 夜も深くなり、丘の上で満天の星空を眺めていると、ヴァイオレットが側に寝転んだ。


「フーマ様。今何考えてますか?」


「うーん。明日の朝飯は何を作って、それからアベリア達にまた村に行ってもらうように言って、ウィリアム達に次の部屋の指示をして、あと俺は…」


 そこまで言うと、ヴァイオレットはふふっと笑って、俺の手を握った。


「明日の事ばかりじゃないですか。こんなに綺麗な星を見ながら、隣には私がいるのに。」


 言いながら恥ずかしくなったのか、顔を背けてしまったが、手はきゅっと握られたままで、そこから彼女の温かさを感じた。


「俺はあの下衆に唇を奪われた。お前で塗り替えてもいいか?」


「仕方ないですね。キスしたいからってそんな言い訳…」

 生意気な彼女の口に蓋をした。

 少し甘辛いのはきっとさっき食べた玉ねぎのせいだ…


 月明かりが影を落とし顔色はよく見えないが、照れて目を背け、唇を手で触っている彼女が可愛らしく、もう一度唇を求める。


 少し風の冷たい夜に、右手と唇だけがあついくらいに熱を持っていた。

拙い文章ですが、読んで頂きありがとうございました。


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】に評価を頂けると幸いです。

誤字脱字や批評でも構いませんので、コメントも頂けるとありがたいです。


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