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5/9

呪文の属性、威力は?

ユーキがおねだりしたので、ダイキが今までの呪文の解説をします。



「じゃあバクっと説明しとく。

 第一の呪文は、気を散じる脱力魔法。入るな、関わるな、もっと楽な世界に遊べよって意味だ。

 二番目は何だったかな、ケミカルパラノイアか、威嚇魔法。こっちは最新スペルの用意があるから諦めろって。天辺に着いたら反物質呪文かなんかでオダブツかもしれんが、行ってみてのお楽しみだな。

 3つ目は、こっちのレベルについてこれるのか、若造が、て感じ。綺麗なメタフィジック呪文だった。物理攻撃じゃなくて思考能力や常識を潰しに来てる。禅問答ってわかるか? そんなやつだ」


 ユーキの切れ長の目が丸くなった。

「4と5は?」

「4はウィルスだよな、人間よ、身の程を知れ。呪詛魔法。5は一度入ったら出られない、境界呪文だった」


「ダイキってやっぱりすごいんだね。スタスタ階段上がってくうちに頭はちゃんと考えてるんだ!」


「いや、考えてはない。魔法に携わる者の一人として勝手に感じてる。お前に言葉で説明するほうが難しい」


「そっか」

 ユーキはにこっとすると「もう6の扉だね」と言った。

「もうって全部でいくつあるかわからんのに、まだまだ序の口だろ?」

 ユーキは肩を竦めて返事に代えた。


「~弾道の穿つ大気も殺陣(たて)の風、止めてみせようこの見切りにて。カツゲキモチヅキ!」


 どっと疲れを感じた。

「この呪文、バカにしてんのか?」

 ユーキはきょとんと首を傾げている。


「思いあがってるだけじゃん。歴史なのアクションなの? アクション重視ならパルクール要素を取り入れた手に汗握るチェイスとか、橋からジャンプ、とかしようよ? 逆に兵法者が活躍する時代劇なら活人剣? 今さら感満載。……☆ナシにしたいけど、ブラバオプションないんだよね?」


「そんなに悪い呪文なの?」と聞く友人に、

「ターゲットが不明なんだよ。オレの心に全くそぐわない。魔法かけるのに相手が想定できてないってあり得ないだろ?」

「あ、そうか」


 ドアの前でブツブツいっていると、目の前を光が横切った。扉が滑るように開いていったのだ。


「やっぱ魔物さんは最上階でオレたちの会話聞いてるんだろうな。それで開閉を判断してる。嫌な野郎だ」


「でもダイキのほうが格上だ。さ、次行こう!」

「突然前向きになるなよなー」


 そんな会話をしながら第七の扉に向かった。


「~今は昔、翁ありけり、モフモフともに、ぶとうかいに馳せさんじたり。バンブーバトルフィールド!」

「ハハハハ、こりゃいい、短いのに無限の世界観だ。☆5!」


 待ってましたとばかりに開いた扉をくぐった先、次の階段前でユーキに弁当を出させた。


「腹減った。一服させてくれ」


 上にあがる段に座り込む。

 ユーキはその前にピクニックのようにシートを広げた。片手におにぎり、もう一方には唐揚げを持たせてくれる。

 遠慮なくかぶりつくことにした。


「魔力消耗してきた?」

「いや、ここまでは大したことない。ただ、今食べとかないとこの先余裕がなさそうだから」


「え、さっきのふざけた感じの呪文に何か隠されてる?」


「棘、だな。オレたちを排除する宣戦布告みたいなもの。それに呪文全体がだんだん研ぎ澄まされてきてる。効く呪文になってきてるってこと」


「ダイキ笑ってたじゃん」

「敵は笑わせようとしてオレが笑った。乗せられた、効いてるだろ?」


 母親の思いのこもったおにぎりを一口ずつ噛みしめるユーキを眺めながら、説明することにした。


「さっきの呪文、ダブルミーニングなんだ。普通、よぼよぼ爺さんがドレス着て、可愛い犬か猫連れてダンスパーティに駆けつけた滑稽な図を思い浮かべるだろ? 王子様やら妖精やら出てきそうだ。

 でも実は、今は昔、翁ありけり、モフモフ共に武闘、怪に馳せ、惨事たり、かもしれない。

 ドーベルマンみたいな獰猛な犬と爺さんは空手家かなんかで、怪しいことがあれば駆けつけ輪をかけて惨事にしてしまった、て読み解きもあり得る。

 パッと見、昔話や童話のイメージでこちらの戦闘意欲は殺いでおいて、武闘する、戦うぞって棘を仕込んでる」


「呪文も二重構造になってるんだね?」


「ああ、『今は昔』って冒頭からして矛盾してるだろ? 現在なのか過去なのか。ダブルミーニングの印、高位呪文なんだ。真意を隠した呪文は時間差で割り増しに効く。ボディブローのようにね。裏の意味に気づいた時に、裏表のギャップ分ぞっとした弱みに付け込まれる」


「そうか、敵も侮れないね」

「そうだな」


 水筒のお茶を分け合う。アーニャさんはもしかして助けられなくても、連れてきた限りユーキだけは無事脱出させると心に誓いながら飲んだ。


 その後4つの扉を無事に通過できた。

 そして13番目のドア。


「~聖女なく、(けん)でさえなき冒険を勇者と呼ぶは弱きモブのみ。巣穴に戻れ、醜きゴブリン……」

「何だと!?」

 とっさに、横に立っていたユーキと扉の間に身体を入れて庇った。攻撃呪文だ。狙いは……。


「ミスリルミステイク!」



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― 新着の感想 ―
[一言] 深い( ˘ω˘ )
[一言]  最後の呪文、「ミス」が2つ重なってるのは、その前のダブルミーニングに引っかけてあるのかな?
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