1:新たなる 旅立ち想い いざ挑め
再掲版になります。
こちらの手違いで消してしまい、続きを楽しみにしてくださっていた方には大変申し訳ありません。
設定を付け足し、ストーリー以外はほぼ別物になっておりますので、是非読んでいってください。
目を開ける。
どこまでも広がる闇黒の空間。
その中には2つの異質なものが浮かんでいる。
現実世界の俺、鹿笠嶺輝の姿を模したアバター。
それから、空間にそのまま埋め込まれた姿見。アバターの存在はこの姿見に映っていたことで知った。
ああ、もうひとつ。
さっきから光ったり鳴ったりしている訳でもないのに、やたら存在感のある「エディット」と書かれたボタン――のようなもの――が、視界の右下に居座っている。
この状況を端的に説明しよう。俺は「アウロラゲームズ・ニュータイトルプレミアムパック」を購入し、そのキャラクタークリエイトエリアにいるのだ。
入っているタイトルは、独自のエンジンでこれまでのゲームが霞むほどのリアリティとクオリティを実現し「神ゲー」の名をほしいままにする「Freedom・Future・Online」という王道ファンタジーなVRMMOと、「Infinite-Inflation」という『気づいたらステータスやらダメージやらの桁が跳ね上がってる』『現代ファンタジーポストアポカリプスインフレ』なるジャンルごった煮VRMMO。
それから「箱庭・クリエイティビティ」という『未だに根強い人気を誇る某サンドボックスゲームのクリエイティブモードが四角くなくなった』ようなゲームもあるが、事前情報によると『プレイヤーが一切の苦痛や負担を感じないということで、組体操大会が謎に人気』だそうだ。
さて、早くプレイしたいので「エディット」を押す。どうやらこのボタンは「ボタンを押す」という意思を持っている状態で、ボタンの上に指を持っていくと反応するというハイテク仕様らしい。
〈アバターの外見とステータスの調整を行います〉
「……外見調整。髪色は『真黒』で少し長めに、肩辺りで邪魔にならないよう纏めて。目は深い群青色、ほんのりと狂気を宿した感じで」
〈反映しました〉
なかなかいい感じだ。うーん、でももう少し弄っておくか。
ちなみに『真黒』とはこの会社の別ゲーにあった色で、どういうわけか光を全く反射しない。同じ会社だからこのゲームにも実装されているかと思い試してみたわけだが、どうやら当たりのようだ。
「ステータス調整」
次に、今の言葉に応じて展開されたステータスパネルに目を向け、プレイヤーとしての名前を入力する。俺の名前「鹿笠嶺輝」の「嶺」と「輝」を合わせたダブルミーニングだ。
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≫Freedom・Future・Online≪
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【零】
《賜璧未設定》
LV 1
BP 0
HP 50/50
MP 30/30
ATK 1
DEF 1
《装備品》
右手【初心の武器】……賜璧決定時に武器種が決定され、どれほど使っても決して壊れることがないといわれる不可思議な武器。ATK×1.0
左手【初心の武器】
頭【初心者用革帽子】〔非表示中〕……何の変哲もない皮革製の帽子。駆け出しに好まれる。DEF×1.0
胴【初心者用革胴当】……何の変哲もない皮革製の胴当。駆け出しに好まれる。DEF×1.0
腕【初心者用革籠手】……何の変哲もない皮革製の籠手。駆け出しに好まれる。DEF×1.0
腰【初心者用革洋袴】……何の変哲もない皮革製の洋袴。駆け出しに好まれる。DEF×1.0
足【初心者用革長靴】……何の変哲もない皮革製の長靴。駆け出しに好まれる。DEF×1.0
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《ステータス》
STR 0
HAR 0
DEX 0
AGI 0
INT 0
RES 0
TEC 0
LUC 0
《スキル》
SP 0
〈コモン〉
【照覧Ⅰ】……捕捉している対象の情報を表示する。【隠蔽】スキルなどに妨害される。
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他のゲームでの「職業」にあたる「賜璧」と、今後のステータスを左右するBPは――
「賜璧は『剣士』でBPは『乱極』にする」
〈では、BPを200付与いたします〉
「もう出発でいいよ」
〈抽選を開始します……〉
――wikiの情報だ。いわく『抽選で選ばれたステータスにしか振れなくなるが、レベルアップ時の取得BPとSPが倍になる』『基本的に終盤まで役に立つと予想されている、現時点での最適解』とのことだ。STRかDEX、TECになるといいな。
〈抽選が終了しました。ステータスをLUCに固定します〉
しかし現実は非情なもので、薄れ行く意識はその言葉をやけにしっかりととらえた。
orz
Freedom・Future・Onlineの略称「オン」の由来は「タイトルを縮めて(FFO)引っくり返して(OFF)もう一回引っくり返す(ON)」。裏の裏は表。
Infinite-Inflationの略称「H」の由来は「タイトルを縮めただけ(I-I→H)」。単純。