伊賀者
1482年5月
島津家から来た使者は3月に行われた婚儀が終わると慌ただしく薩摩へ帰って行った。
海を埋め立てて船を横付け出来る湊を薩摩湾に建設すると言っていたので早ければ年内には湊の整備が大まかに終わるかもしれない。
恐らく今頃は湊作りに加えサツマイモ栽培、塩水選をし苗にした稲の正条植えの実施、堆肥の製造に汗を流していると思う…、農民が…。
各種職人達が手押しポンプや水車作りとかで過労死しないか心配だ
だってこの時代は労働基準法とか無いから職人さんとは仕事多いときなんか休みなく働くからね…。
自営業みたいなものだから仕方ないか。
それはさておき、伊賀に行っていた風間元重の弟である風間兼重が帰って来た。
主殿の広間には風間元重と風間兼重、そして伊賀から来た男が3人、女が1人平伏している。
「豊嶋武蔵守宗泰である。 面を上げられよ」
そう言うと、平伏していた4人が顔を上げるが、3人の男の内、1人は筋骨隆々で厳めしい顔をしているが他の2人は何処にでも居そうな平凡な顔をしており、女は30代ぐらい? だと思うが艶めかしい雰囲気を纏っている。
「お初にお目にかかります。 某は音羽半兵衛と申します」
厳めしい顔の男は音羽半兵衛と言うらしいけど、敢国神社で織田信長を狙撃した人の祖先かな…。
音羽半兵衛が名乗ると順番に名乗りを上げていくが、今回江戸に来たのは音羽半兵衛の他に服部孫六、野村孫太夫、望月彩芽と言うらしく、4人の一族郎党や武蔵に移り住む事を望んだ者など合計で約2500人の大所帯らしい。
とは言え一度に2000人が移動すると流石に目立つので順次向かって来ているらしいが、話を聞く限りその中で乱波働きや情報収集が出来る者は約500人程との事だ。
この時代に女の人が一族を率いているのが珍しいので望月彩芽に目をやると、妖艶な微笑みを浮かべた。
「宗泰様は女子が一族を率いているのはお嫌でございますか?」
心を読まれたのかと思い一瞬驚いたが顔に出さないよう平静を保ちつつも疑問を口にする。
「嫌ではないし女子でも才があるのであればそれを活かす事がお家の為となろう。 だがこの戦乱が続く世ゆえ才あるとはいえ風当たりも強かろうと思ってな…」
「確かに風当たりは強うございます。 現に伊賀望月家も私めが家を纏めるのを良しとしない者が多く、家が割れておりまする故…」
「それで伊賀の地を離れ武蔵に来たと?」
「それもございますが、兼重殿から伺った限りでは宗泰様は女子を戦場に連れて行くとのこと、そのようなお方に興味がございましたので」
うん、ヤバい!!
メッチャ妖艶…、というか大人の女性が放つ色気が凄い!!
耐えろ俺、耐えろ俺!! マジで怒られるから、耐えろ俺!!
「ゴ、ゴホン!!!」
元重がわざとらしく咳ばらいをし俺の方へ向き直る。
「殿、こちらの4名ですが、風魔衆が定めている掟より厳しい掟を設けており、また風魔衆と共に働く事に異存はないとの事、何卒お召し抱え頂ければ」
「当然召し抱える。 して禄はいか程欲しい?」
突然、禄はいか程欲しいと聞かれるとは思ってなかったようで4人は驚いたような顔をし顔を見合わせる。
兼重が禄についても話しているとは思うが自分達がそれ以上の禄を求めるだけの力があるのであれば与えても良いと思うし、役に立たなければ理由を付けて禄を減らせばいいだけだし。
「おそれながら、我らは1000石と伺っております。 手柄を挙げお役に立つことを証明しなければそれ以上の禄を望むなど…」
「ではそれぞれに1000石を与える、 風魔衆として働いて貰う事になるが、それぞれ得手不得手があるだろうから風間元重と相談の上、得意な事で手柄を挙げよ。 それと彩芽、其方には一つ頼みがある」
名指しされた望月彩芽は一瞬驚いた顔をしたが直ぐに妖艶な笑みを浮かべる。
「其方には歩き巫女を育ててもらいたい」
「歩き巫女でございますか?」
「そうだ、歩き巫女を育て各地の情報収集をする。 それには巫女としての立振る舞いに加え男を悦ばす技も必要になろう」
「宗泰様…、いえ殿は私が男を悦ばす技が得意だとご存じで?」
「いや男の勘だ。 其方の立振る舞い全てにおいて妖艶でそれでいて気品ある色香が漂っておる。 それを歩き巫女となる者に教えて欲しいのだ」
俺がそう言うと、望月彩芽は微笑みながらも了承した。
とは言え今まで歩き巫女の育成はしていなかったから本格的に活動開始するのは最低でも2~3年後になるだろうけど…。
うん、京に居る流民とかから若い女の子を集めるように命じよう。
その後、4人に1000石の所領を与える旨が書かれた朱印状を渡して謁見が終わった。
4人とその一族郎党と家族が一時的に住む長屋へと案内を終えた風間元重と兼重が戻って来たので詳細を詳しく聞くと、どうやら4名とも伊賀では有力な家柄だったが一族同士の争いや他家との争いで没落気味だったそうだ。
特に望月家は当主が女という事もあり、一族間の争いが絶えず疲弊が激しいらしく彩芽があの手この手と家を纏めようとしても他家の介入を受けていた事もあり、伊賀望月家の当主を叔父に譲り自分に従う者だけを連れて武蔵にやって来たとの事だ。
流石に他家が介入し煽ったら纏まるものも纏まらなくなるよね…。
まあこれで一応は風魔衆の増強がなった。
直ぐに役立つとは思わないけど数年もすれば豊嶋家の情報収集能力が飛躍的に伸びるはずだ。
それにしても彩芽さんの所に今夜あたり夜這に行きたいな…。
誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。
宜しくお願い致します。
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