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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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血で赤く染まる利根川

戻って来た物見のもたらした情報では予想通り無傷と思われる3000人程の兵が態勢を整え、殿(しんがり)として待ち構えており、逃げてきた兵達を船で対岸に逃がしているとの事だ。

だが流石に2万近い兵が居る為、船でピストン輸送をしてはいるものの、まだ10000人以上が河川敷で船を待っている状態との事だ。


「婿殿、殿(しんがり)は3000程、我らの半数にも満たん。ここは一気に攻めかかり蹴散らすのはどうじゃ?」

「某も成田正等殿の言われる通りと思います。 兵たちの士気は高く一気に蹴散らせるかと!」


成田正等と太田資常が馬を寄せ殿を蹴散らし、更に利根川を渡河しようとしている兵を討ち取るべきと主張する。

「道真殿、道灌殿は、いかが思われます?」

「虎千…、いや宗泰殿、確かに士気は高いが兵は疲労しておる。あの轟音の出る物で一撃を与えた後で討ちかかるなら良いが、弓や投石の後に攻めかかるのでは味方の被害も増えよう」

「うむ、道灌の言う通りだな…。して宗泰殿、あの轟音の出る物は何処に?」


「恐らくこちらに向かっているので間もなくすれば到着すると思います。 では鉄砲・大鉄砲を撃ちかけたうえで総攻めと行きましょう」

そう言うと、各将は味方の元に戻り兵達に一時休養を取らせるが、30分もしないうちに鉄砲、大鉄砲隊が到着したため、全軍に指示を出して進軍を開始する。


利根川の河川敷にはまだ10000人以上の兵が船を待っていた。

対岸には栗橋城(茨城県猿島郡五霞町付近)があるものの進軍の際に渡河した場所ではなく、水深が深い場所の為に徒歩で渡河が出来ずに取り残されている感じだ。


豊島、太田、成田軍の接近に気付いた殿(しんがり)が迎え撃つ構えを見せるが、道灌の軍を加えて12000人程となった軍を前に遠目でも悲壮な顔をしているのが見て取れる。

可愛そうだから見逃してあげよう…なんて事をしても、次に戦場で会ったら刃を向けて来るのが戦国時代。

そして関係ない農民などを殺し略奪すれば恨まれるが、合戦において討ち取られた場合、特に大将や国人領主が兵を残して先に逃げ、その結果となれば恨みは大将や国人領主達に向けられる。

なので容赦をする必要はない!

それどころか、豊嶋家、太田家、成田家に手を出したらどうなるか骨の髄まで恐怖を覚えさせることで、次に戦場で会う事があれば農民兵達は尻込みをする。


「鉄砲隊構え!!! 撃て~!!!」

ドドドドッーン!!!


300丁の鉄砲が火を噴き殿として前に立ちふさがる兵が血を撒き散らし倒れる。

「鉄砲隊下がれ! 大鉄砲隊前へ!! 構え!! 撃て~!!」

ドドッーン


50丁の大鉄砲が火を噴くと今度は前に居る兵だけでなく後ろの兵まで血を撒き散らし倒れだす。

今迄は小さめの鉄球を多数詰めた散弾を使用していたが、今回は本来の口径に合った弾を放っている。

球状だと命中率、飛距離が下がるが散弾なので良しとしていたが、本来大鉄砲に使う弾は先端に丸みを持たせた円錐形にし後ろを少し凹ませたうえで螺旋状の溝を掘っている。

銃弾自体に螺旋を刻む事で効果があるのかは知らないが、銃身にライフリングを刻む技術が無い為、弾に溝を掘ってみたという感じだ…。

だが大鉄砲と言うだけあって通常の鉄砲よりも銃身が太く、大量の火薬で撃ちだすので鉄砲よりも飛距離が若干長く、破壊力が段違いに違う。

その大鉄砲50丁から放たれた弾は複数の兵を貫き命を刈り取っていく。


「大鉄砲隊下がれ!! 鉄砲、大鉄砲隊は弾込めし、味方に当てぬよう自由に動き撃て!! 他の者は突撃だ!! かかれぇ~~~!!!!」


4倍近い兵を前に立ち塞がり守りを固めて少しでも時間を稼ぎ味方を逃がそうとしていた殿(しんがり)部隊は鉄砲、大鉄砲の一斉射で完全に心が砕け、突撃を開始すると殆どの兵がその場に留まって戦うことなく逃げ出した。


その後はもう合戦と呼べるものでは無かった。

殿(しんがり)が逃げ出した事で利根川の河川敷に居た足利成氏の兵に豊嶋、太田、成田軍が襲い掛かる。

逃げる際に少しでも身軽になろうと刀や槍を捨てた者、鎧を捨てた者、武器や鎧を捨てていなくても既に戦意を失っている者達が逃げ惑い、それを豊嶋、太田、成田軍の兵が追いかけ槍で刺し、刀で斬り、突き、次々と命を奪っていく。

そして自由に移動して撃てと指示を出した鉄砲、大鉄砲隊も集団で逃げた兵の後ろから一斉射を加える。


逃げ惑う兵とそれを追い次々に討ち取っていく兵、中には利根川に飛び込み泳いで逃げる者も居たが、重い鎧を着ていた武者などは途中で川に沈んでいく。

大きな川や海の近くで育った者は泳げるが、農民兵や日頃泳ぐ事の無い武者などは利根川に飛び込み泳いで逃げようとするも、その大半が溺れそして川の中に沈んでいった。


河川敷に居る味方の兵を少しでも助けようと船が近づいて来るが、浅瀬に近づくと逃げ惑う兵が群がり船を沈めてしまう。


合戦…、いや虐殺が始まって1時間程すると、利根川の河川敷に立っているのは豊嶋、太田、成田軍の兵だけとなり、数えきれない程の死体が河川敷を埋め尽くしている。


「宗泰殿、それなりの数の兵が散り散りに逃げたが、更に追い打ちをするのか?」

無数の死体が転がる河川敷を見つつ道灌が声をかけてくるが、逃げ散った兵を更に追ったとしても恐らく多くて100人単位、少なければ数人か1人程度で逃げている為、無駄な労力になるとこれ以上の追撃はせず兵達に塚を作る為の穴を掘るように命じる。

農民兵と思われる者は五体満足な死体だが、武者と思われるものは首の無い死体となっている。


「討ち取った兵の鼻を削ぐだけでも大仕事だな…。 それに加えそこら中に武具が転がっておる。 成氏軍の持って来た兵糧なども取りに行かねばならぬし、終わる頃には明日になってそうだ」

道真がそう言いながら兵達に指示を出しいつの間にか捕えた数人の武者から誰の首かを聞き出している。


成氏軍の打ち捨てられた武器や鎧は後で売り払い金にして兵達に分配する。

武者の首級を挙げた者は、討ち取った者の名と誰の首かを記しておき後で褒美を与える。

成氏軍が残した兵糧は後々諍いの火種にならないよう3等分して3家で分ける。


首級と削いだ鼻は関東管領上杉顕定に届ける事で一致した。

関東管領に従う将と兵を助け敵対する足利成氏軍に大打撃を与え数千の兵を討ち取ったのだから褒美をもらえるはずだがもう一手打つ事にした。


「元重、疲れている所すまぬが、風魔衆を使って上野、武蔵、相模へ急ぎ噂を流してくれ」

「噂でございますか? して如何様な噂を?」


「関東管領の家臣・太田道灌が古河公方率いる20000人の兵を相手に援軍の来ない籠城しているのに見かね、豊嶋、太田、成田の軍が援軍に向かい、古河公方の軍を大いに打ち破り、首を挙げる事その数1万。関東管領・上杉顕定は大いに喜び賞賛し、3家に対し多大な褒美を与えると言っている、と言った感じだ。 盛大に噂を広めろ!」

「なるほど、命じられていない合戦故に褒美が出ない可能性が高い為、上野、武蔵、相模に噂を広め褒美を出さざるえなくするという事ですな。 かしこまりました即座に指示を出し噂を流させます」

命を受けた風間元重は直ぐにその場を立ち去り配下に指示を出しに行った。


そう、関東管領からしたら大勝し敵対勢力の力を大いに削いだのだから褒美を出すのが普通だろうが、今回は命じられたのではなく、勝手に豊嶋、太田、成田の3家が援軍に向かったという事で、感状1枚で済まされる可能性もある。

それを防止するために噂を盛大に流す。


噂が広まればその噂は、上野、武蔵、相模の国人衆達の耳に、そして関東管領である上杉顕定とその家宰である長尾景春の耳に入る。

だが褒美が感状1枚だけだったとなればその事も噂となり、関東管領に従う国人衆達の耳にも入る。

20000人の敵を少数で打ち破り、1万近い首を挙げたのに感状1枚しか出さない吝嗇な男だと噂が広まれば、関東管領としての権威、そして信頼にも関わって来るから、与えたくなくても褒美を与えざるを得なくなるはずだ。


そもそも栗原城と道灌を見殺しにしようとしていたのだから、感状1枚しか出さなければ俺が風魔衆を再度使って噂を流し、威信を地に落とすつもりだが…。


さて上杉顕定はどうするかな。

誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。

宜しくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「褒美を出さない」のは、主従関係がぶっ壊れる大原因ですからねぇ。 これで大敗北した古河公方も、褒美を出せない関東管領や家宰も、両方権威ダウンさせることができるかな?
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