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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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臣従と養子

1486年9月


各地で刈り入れが始まり、領内の収穫高見込みに加え、他国の収穫高見込みなどの情報が徐々に入りだしているが、豊嶋領で前年と比べ2割減、下野や常陸では4割から6割、甲斐などは8割減との事だ。


今年の夏は雨が多く、晴れの日が少なかった事もあり、こうなる事は予め予測はしていた為、交易省の川上屋彦左衛門に命じ、西国より米を大量に仕入れていた。

西国の収穫期は関東よりも早いため収穫後の安いうちに米や穀物を買い付けることができたので現在、大船が西国と関東を往復し輸送している。


また奥州の収穫期は少し先だが、恐らく凶作だろうとのことだ。

商機到来!! 米や穀物が高く売れる。


と言いたい所だが、実際の所、いずれ奥州を平定する為にも、同族である葛西氏に恩を売り友好関係を築く必要がある。本来なら高値で売れる米や穀物を安く融通し、葛西氏が周辺の国人領主などへ従属と引き換えに援助をし、勢力拡大を図って貰う必要があるので、現実は利益が殆どでない。

まあ赤字にはならないが、大幅な黒字とはならないのだ。


それに、凶作となった甲斐や下野、常陸などの国人衆を調略するのには、お金よりも、米や穀物という現実的な餌をぶら下げた方が喰いつきが良いだろうし。

う~ん、お金を普及させて日ノ本の経済を米本位からお金本位に移行させようとしている俺としては逆行している気もするのだが…。


仕方がない。

なんせ、お金本位にする為には、食料…、この時代だと米やその他穀物が相応に安定供給されるようにならないといけないし。


■鎌倉御所


関東や甲信越で農繁期を迎えた頃、ここ鎌倉御所に、足利成氏を始め北関東の国人衆が、関東公方である足利政知の元へ臣従の挨拶をする為に集まって来ていた。


下野国の国人衆で主だった者は宇都宮、小山、結城、常陸の主だった者は佐竹、小田が、当主自ら鎌倉に赴いて政知に臣従を誓う。


「皆の者大儀である。 面を上げよ! 余が真なる関東公方、足利政知である。 もはや関東公方を自称する者はおらぬ、皆はこの関東公方である余に誠心誠意仕えよ」


広間に入って上座に座ると、平伏して出迎えた者達に政知はそう言うと満足そうな顔をしながら成氏に声をかける。


「成氏、其方とこうして会おう事になるなど、余は思ってもみなかった。 此度、公方を自称するのを止め、余に従うとの申し入れ大儀である。 よって足利一門であることを考慮し罪を免じようぞ」


満足気に成氏を見下しながら悦に浸っている政知の言葉に、成氏は不快感を露わにする事無く、平伏し罪を許された事に対して礼を述べている。


「うむ、それと、宇都宮、小山、結城、佐竹、小田を始め本日参った者の罪を免じ、所領を安堵する。 これよりは関東公方である余の為に励め」


「「「ははっ!! ありがたき幸せに存じまする」」」


下野、常陸の主だった者が礼を述べ平伏すると、その他の国人衆達も同様に平伏をしている。


上座から一段下、政知から見て左斜め前に座る俺から見て、成氏の演技は完璧であり、一瞬たりとも不快そうな顔も、悔しそうな顔もせず、神妙な顔をしていた。ただし流石に国人衆達は、成氏と俺の密談内容を知らない為、一部悔しそうな顔をしているのだが、それを見た政知が更に悦に浸り満足そうな顔をし、クドクドと関東に下向して来てからのことなどを話し始めた。


いや、あんたがしっかりと関東管領である上杉家を御しきれなかったから戦乱が長引いたんだから!!

そもそも伊豆に引き籠って関東へはロクに顔を出してないで、よくもまあ自分の威光で関東に静謐が訪れたとか言えるな。

まあ、そう吹き込んだのは俺なんだが…。


「して成氏、其方より申し入れのあった、養子の件であるが、茶々丸を養子とし、いずれは古河足利家の家督を継がせよ!」


「ははっ!! ありがたき幸せにございまする」


あたかも成氏が古河足利家の次期当主にと養子を欲したかの言い方だが、もともと政知自身が手に負えない事に加えて、亀王丸に家督を継がせたいと思っていた所に、俺が養子の件を吹き込んだ。

成氏には茶々丸の人柄を伝え、話がまとまったのだが…。


政知は古河足利家の家督を茶々丸がいずれ継ぐことで、厄介者を追い出し、可愛がっている亀王丸に家督を継がせ関東公方に据える事が出来るうえ、あわよくば古河足利家を吸収しようという思惑があるようだ。


その後、謁見が終わり、政知が退出し、成氏と国人衆達が部屋を出て帰国の途に就く。


と言っても、陸路での移動は時間がかかるので、豊嶋家が用意した船に乗り、江戸城へ向かい、そこで一泊し、明日は船で利根川を遡上し古河を目指す事になっているのだが…。

その船上には政知の息がかかった者が誰もないとあって、多くの国人衆達が政知の事を罵っていた。


そんな中、誰が言ったのか、成氏に対し「あのような物言いをされ、悔やしゅうは無いのですか!!」と言う者もいたが、成氏は平然とした顔で「公方殿は今まで両上杉にお飾りとされておった鬱憤が溜まっておったのであろう。 やっと関東公方になれたのだ、多少なりとも舞い上がっていただけだ」と言い宥めていると、普通に成氏の横に座っていた茶々丸が成氏の方を見て口を開いた。


「いや、あの男は元々坊主であり、まともに太刀を握った事も無い男だ。 舞い上がっているのは事実だが、あまり調子に乗らせるとつけあがるぞ!!」


茶々丸の言葉に成氏が苦笑いを浮かべるが、先ほどまで政知を罵っていた国人衆達は、政知に関して興味が出たのか、茶々丸に色々と質問をし始めたのだが…。


ていうか茶々丸…、国人衆達と打ち解けるの早すぎ!!

政知の周辺は無骨な坂東武者はおらず、どちらかと言えば京かぶれや、口達者な者が多く、反りが合わなかったのは分かるんだけど。

どうやら国人衆達に茶々丸の人柄を、成氏が事前に知らせていたようだが、それにしても馴染むのが早すぎるし、意外と国人衆達からの好感度も高い。

恐るべし茶々丸!!


「宗泰殿、これで俺もあの父の元を離れる事が出来、自由の身となった、改めて礼を申す」


「いえ、茶々丸殿が見込みある武士であり、鎌倉にて収まらぬ器ゆえ引き摺り出したまでの事、お気になさらず」


「見込みのある武士か…。 和歌や詩を毛嫌いし、じっとしている事の出来ぬ粗暴者と言われておったのに、人が変われば評価も変わってくるのだな…。 一つ学んだぞ!」


見込みのある武士という言葉を聞き、少し誇らしげな茶々丸だが、すぐに表情を引き締めると成氏の方を向き、居住まいを正す。


「成氏殿…、いや義父上、某の元服の儀につきまして、古河に戻り次第元服をさせて頂きたい。 そして初陣については刈り入れが終わり次第、常陸、下野で義父上に従わず争っている国人衆討伐に出陣させて頂きたく!」


突然の事に、成氏は若干驚いた表情をしたものの、あらかじめ予測はしていたのか、元服は吉日を選び行い、常陸、下野への出陣は年が明けてからだと諭すように声をかける。


「かしこまり申した! しかし年が明けてからでは、それまでの間、争いが絶えぬ地域に住む民百姓が苦しむ、何か民を助ける手は無いのでございますか?」


「ない! 物事には出来る事と出来ぬ事がある。 確かに争いに巻き込まれる民百姓を思うと忍びないが、今兵を出せば、味方にも多くの死者、手負いが出るであろう。 兵の多くも民なのだ」


成氏はそういうとさらに、茶々丸へ、今年は米の出来が悪く、どこも凶作であり、恐らく刈り入れが終われば、すぐさま各地で乱取りが行われるであろうこと。

それらより自らの治める地を守る事が最優先であり、所領の民を守る事もせず合戦に赴く事は出来ないと話す。


「分かり申した。 ただ元服は早めにお願い致したく。 某も良い歳、いつまでも茶々丸では…」


茶々丸がそう言うと、同じ船に乗っていた国人衆が自身の幼名や元服時期、失敗談などを思い思いに話し場が沸き立つ。


その夜、江戸城の広間で開かれた酒宴でも、失敗談などで大いに盛り上がり、夜遅くまで皆大酒を飲み、料理に舌鼓を打つ。


翌朝、広間が死屍累々の様相を呈していたが、豊嶋家の侍女達は手慣れた様子で一人ずつ起こし、野菜がたっぷりと入った味噌汁を飲ませて回っていた。


うん、昨日失敗談で盛り上がっていたけど、この惨状も失敗談の一つに入らないのか?

もう俺はこの光景に慣れたけど…。

  


稚拙な文章ではございますがお読頂き誠にありがとうございます。

また誤字報告ありがとうございます。

本当に、誤字脱字、言い回し等、稚拙で申し訳ございません。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >朝敵認定…。 >関東公方を押さえても京の幕府を押さえていないので難しいか>もしれません。 >伊勢は京の幕府と繋がりが強そうですので。 この時代そこまで情報の伝わりが良くないのと、幕…
[良い点] いつも楽しみに読ませてもらってます。 [一言] 追記ですが、機関の名前は○○○所や○○○預所で、責任者は頭人や執事などが無難だと思います。
[気になる点] 省を修正される予定は無くなったのですか?それと省の長官では四等官制を踏まえて卿と同義なので、朝廷に叛意を疑われないのが不自然かと思います。特にこのタイミングの大蔵省はチャレンジャーです…
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