「関東不双の案者」と呼ばれる2人の爺
秋の収穫も終わり、最終的に大泉一帯の所領で収穫できた米は全部で2300貫、麦が500貫、大豆が300貫、その他蕎麦や稗、粟が合計して300貫だった。
開拓してすぐ強引に野菜などを植え、それまで野菜を植えていた畑に他の物を植えたのが良かったな。
開拓したてのほぼ荒れ地に植えたジャガイモやサツマイモもかなり収穫出来ていてしっかりと保存すれば飢えに苦しむ事は無いはずだ。
サツマイモに関しては、煮切干製法で干し芋にすれば保存食にもなるし、数が揃えば商人に卸して金に換える事も出来る。
確か日露戦争で野戦食としても活用され、「軍人いも」とか呼ばれていたみたいだし、恐らく作れば作っただけ売れるはずだ。
それにあまり栽培されていなかった大根をかなり作らしたのでこれも切干大根や沢庵も作れる。
この時代は治水もしっかりとされてないから大雨が降ればすぐ収穫に影響が出るし、確か小氷河期と呼ばれていて気温が少し低く飢饉も起きやすいから保存食の充実は必ず役に立つはずだ。
ただジャガイモの芽は食べないように徹底させないと。
そして畜産に関しては養鶏は順調に進んでいるが、牛に関してはあまり進んでいない。
豚や羊なんかも育てたいけど、ネットで調べたらどうやらまだ日本には伝来していないようなので、船を作って明や琉球辺りまで足を伸ばさないと手に入らないので今は諦める事にしている。
ただ一年目から養鶏が軌道に乗った事はある意味ラッキーだった。
これで鶏肉の安定供給への道と、卵が手に入る。
まあ生で食べるには色々と問題があるからTKGは無理だろうけど加熱調理した卵料理は食べられる。
醤油の生産にも成功しているので料理のバリエーションも増えるから良いことずくめだ。
後回しになっていた燻製小屋で鳥や魚の燻製を作れば保存食の充実と販売品の充実に繋がり今以上の金銭収入が得られるはずだ。
所領での収穫高報告を聞き、ホクホク顔で城に戻ると、庭で照がキャッキャッと楽しそうに遊んでいる声が聞こえる。
また爺様こと道真が来てるんだろうな。
最近は侍女見習いとして同年代の家臣の娘を照姫に付けて遊び相手にしてるけど、あの爺さん、全員に爺様と呼ばせて自分の孫娘のように可愛がってるし。
てか毎月石神井城に顔を出して1~2泊していくってどうなの?
俺としては、夜とかに周辺の情勢や今まで道真が参加した合戦の成り行きなどを聞けて助かるんだが、岩槻城を毎月留守にして大丈夫なのか?
そう思いながら、庭に向かうと、今日は爺が2人に増えていた!!
「おお、虎千代、戻ったか」
「これは景信様、本日はどうされたのですか?」
「どうしたもこうしたも無い、ワシはただ孫に会いに来ただけだ。 つい先ごろ道真殿にお会いした際、石神井城で孫と遊んでおると聞いてワシも孫に会いたくなったのじゃ。 ワシの事も景信様などと呼ばず爺と呼んでくれ」
「かしこまりました、爺様」
なんだこの孫バカ2人は…。
俺が爺様と呼んだら景信がメッチャクチャ嬉しそうな顔してるし、照に爺様と呼ばれたら完全に武将の顔じゃなくなってる。
長尾景信と太田道真と言えば「関東不双の案者(知恵者)」とも呼ばれているがそう呼ぶ人が見たら確実に驚く絵面だ。
関東管領家はこの人を家宰にしてて大丈夫なのか?
まさかこれが原因で景信の死後、息子の長尾景春が家宰を継げなかったんじゃない?
いや、流石にそれは無いか…。
「爺様方、本日は照たちのおやつにとプリンなる物を作っております。 ご一緒に如何ですか?」
聞きなれないプリンと言う言葉に首を傾げる道真と景信だが、照姫や他の娘が「プリンだ~」とはしゃいでいるのを見て「じゃあ相伴にあずかろうかの」とか言い、コーヒーの支度を始める。
いや、だからコーヒーはお湯を注ぐだけで飲めるから!
茶碗に入れて茶筅で泡立てて…、ってもう好きにしてくれ。
「ほぅ~、これがプリンか、不思議な食感だが甘く美味しいの」
「本当じゃ、これは美味い、照はこのような物を毎日食べられて羨ましいの」
プリンを食べた爺2人組はコーヒーを飲みながら思い思いの事を口にしている。
「爺様、これは牛の乳と卵、そして砂糖のみで出来ております。 作り方も簡単故、紙に書きお渡しいたしますのでお戻りになられたら他の孫や家臣などに振舞ってあげてくださいませ」
作り方を教えると言ったら驚かれたが、どうせプリンは日持ちしないから売りに出せないし、むしろ作るために砂糖の需要が増えれば俺が儲かるから全く問題はない。
因みにこの2人、今晩は石神井城に泊まるらしいので、晩御飯のおかずに茶碗蒸しを出したら、驚いていた。
シイタケ栽培はまだおこなってないのでシイタケは入ってないけど、キノコに銀杏、殻を剥いた小エビなどを入れておいたら大好評だった。
シイタケ栽培は現金収入に直結するから実施したい所ではあるけど、食卓にシイタケが出されるのは困る。
俺はシイタケが嫌いだから!!
それはさておき、最近の石神井城は城と言うより保育園か幼稚園状態になっている気がする。
照の侍女見習いとして同年代の女子が約20人ほど毎日出入りしてるし、俺の小姓? 側近見習いとして同じく5~8歳ぐらいの男子も出入りしている。
照の侍女見習いはほぼ照の遊び相手状態だが、日に数時間は母が手習いとして読み書きを教えたりもしている。
いずれは和歌や連歌も教えると意気込んでると聞いたが、俺としては聞かなかった事にしている。
そして小姓見習いの男子は32人、ただし俺は遊んでる暇は無いので基本的に石神井城の近くにある三宝寺から僧を招いて読み書きを覚えさせると共に、腕に覚えのある僧に依頼し体力づくりの為に走り込みをさせている。
本当は本格的に剣や槍、弓などの修練もさせたい所だがまだ子供なうえ、重臣の子供も混じっていて下手に怪我をさせると後々面倒という事でまずは下半身を鍛え、その後大体7~8歳ぐらいになったら徐々にするとして、現在の所は子供用に作った軽い木刀と長い棒で素振りや突きをさせている。
俺も朝起きたら軽い木刀で素振りはしてるけど、未だに木刀に身体が振り回されてる感じだ。
なので今は基礎体力だけを付ければ良いと思う。
10歳ぐらいになりそこそこ筋力が付いてから本格的に修練すれば良いし。
うん、決して運動したくない訳ではない。
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