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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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吉良成高の策

明後日の大河ドラマで隅田川に達した頼朝を、足立遠元と共に出迎えた豊嶋清元、有経、葛西清重、父子が出るか…。


豊嶋清元よりも、三男の葛西清重の方が色々と活躍しているので期待薄ですが。

■川越 足利軍本陣


足利成氏が本陣としている屋敷には、下野、常陸の有力国人に加え、関東管領である上杉顕定、長尾景春、足利家の分家筋にあたる吉良成高が集まり、憮然とした表情で酒を煽る成氏を他所に、成氏に一騎打ちを挑むも、その後、成氏を罵るだけ罵って逃げ出したうえ、追撃した兵を火攻めにした豊嶋宗泰を「卑怯者」「武士の風上にも置けぬ」等と言い合い、喧噪に包まれている。


パリーン!!


「黙れ!! うぬらは、豊嶋宗泰への悪態を言い合う事しか出来んのか!!」


成氏が突如立ち上がり、手に持っていた盃を床に投げつけ諸将を一喝すると、先程まで喧噪に包まれていた広間が静まり返る。


成氏が、豊嶋宗泰自ら一騎打ちをしに来た事を知らされたのは、豊嶋軍が逃げ去った後であり、成氏としては一騎打ちに応じるつもりは無いが、その場に居た者の誰も言葉合戦で豊嶋宗泰の浅慮を笑えたにも関わらず、言いたい放題、一方的に罵られただけでなく、挑発に乗って敵を追い、散々な目に遭い逃げ帰って来た。

いち早く知らせを届けぬばかりか、不甲斐ない国人衆達に対しても苛立ちを募らせている。


「其の方達も既に聞き及んでおろう! 既に兵達があらぬ噂をしておる。 豊嶋の手の者の仕業であろうが、ここまで虚仮にされたにも関わらず、其の方らは悪態を付くだけで、豊嶋に一泡吹かせる策の一つも立てられぬのか!!」


成氏が言うあらぬ噂。

それは川越城を囲む成氏軍の足軽、雑兵の間で広まりつつある話で、豊嶋宗泰が成氏に一騎打ちを挑んだが、味方の陣を見回っていた成氏は一騎打ちなど時代遅れだと言い、急ぎ陣屋に引き籠り、家臣に豊嶋宗泰を囲んで討ち取れと命じ、そして逃げた宗泰を追撃した兵は、枯草が生い茂る荒地に火を放ち、逃げ道を塞ごうとしたが、風向きを読まずに火を放ったため、自らが火に焼かれる事になった…、と…。


「恐れながら申し上げます。 策と言うには稚拙なれど某に考えが…」


憤怒の形相で怒鳴る成氏を前に、多くの者が黙り込んだ中、関東管領である上杉顕定と共に成氏の本陣に来ていた吉良成高が声を上げる。


「おお、吉良成高か、吉良家は我が足利家の分家筋筆頭と言っても過言ではない、何か良い策があるなら遠慮なく申されよ!」


誰もが押し黙る中、控えめに進み出た吉良成高は一通の書状を成氏に差し出す。

差し出された書状を成氏の側近が受け取り成氏に渡すと、書状を広げ読み始めた。


「成高! これは如何なる事か!! 其の方、豊嶋に通じ余に歯向かうか!!」


「恐れながら公方様に申し上げます。 その書状を公方様にお渡ししたは、某に二心が無い事の証にございまする。 そもそも公方様と共に豊嶋を討ち、奪われた所領を取り戻す事が出来るにも関わらず、公方様を裏切って豊嶋宗泰に頭を下げて所領を返して貰う必要がございましょうか。 しかしながら、このような書状を送って来ると言う事は、豊嶋は既に、なりふり構っておれぬという事、なればこそ某があえて豊嶋の調略に乗れば、向こうの策は筒抜けになり申す」


「そもそも豊嶋を討てば、其の方の所領は取り返せる。 わざわざ豊嶋に頭を下げて奪われた所領を与えられる筋合いは無いと言う訳か」


「左様でございます。 なればこそ、それがしが豊嶋の誘いに応じ、偽りの情報を流しまする」


「して、偽りの情報とは如何なるものだ?」


「されば、まず、陣中にて宇都宮成綱(うつのみや しげつな)殿と小山成長(おやま しげなが)殿が軍議の度に諍いを起こすが、その度に公方様が宇都宮殿の肩を持つ為、小山殿が常々不満を漏らしている。 また幼い結城家当主をお支えしている多賀谷殿と山川殿のお2人のうち、多賀谷殿を公方様が結城家の筆頭であるかのように接しており、山川殿を多賀谷殿の家臣のように扱っている。 このような内容を豊嶋に流し…」


吉良成高の話が終わる前に、名を上げられた者達が激昂しながら、口々に成高に対し怒声を浴びせる。


「皆々様のお怒りはごもっとも、ありもしない事を言われれば当然にございまする。 しかしながら、今申し上げた偽の話を豊嶋に伝えれば、豊嶋は小山殿や山川殿と接触を図り、甘言を弄して内応の誘いを致しましょう。 もしもお2人の内どちらかに豊嶋より調略の手が伸びましたら、甘言に釣られた振りをして豊嶋の手の内を聞き出せば、如何に策を弄したところで最早豊嶋は公方様の掌で踊っているようなもの、後は公方様の掌の内とも知らず策を弄し1人踊っている豊嶋宗泰を握り潰すのみにございまする」


「策士、策に溺れると言う訳か。 面白い!!」


「それと後2つ程豊嶋の首を絞める策がございまする」


「申せ!!」


「はっ!! 1つは日野に陣を張る豊嶋軍の多摩川を挟んだ矢川に砦を築き、身動きが取れないように致しまする。 また川越から矢川まで、大軍が素早く進める真っすぐの道を作り、各所に陣所を設け、豊嶋に動きがあれば一気に大軍を動かして豊嶋と合戦に及べるようにすれば、最早豊嶋は攻める事も引く事も出来なくなり申す」


「なれど大軍が進める道を作れば、その道を通り豊嶋が攻め上がって来るのではないか?」


「故に陣所を設けます。 間隔を空けて陣所を設け、敵に動きがあれば、狼煙、や火を燃べる事で、一早く川越に豊嶋の動きが伝わるかと。 ただ砦を任せる将につきましては、公方様に従い、関東八館に数えられた、お歴々がよろしいかと愚考いたしましたが、豊嶋如きに出馬されるのは勿体なく、また武蔵の地に明るい者の方が何かと良いと思いまする故、長尾景春殿が適任かと」


「景春に砦を守らせるか。 確かに関東管領家の家宰であり武蔵の国人衆にも顔が効く。 豊嶋に従う国人衆を翻意させる事もできるか。 してもう一つの策は如何なるものだ?」


「もう一つの策でございますが、まず常陸の大掾清幹(だいじょうきよみき)の討伐に向かいました、佐竹義治殿には、大掾を早々に討伐し急ぎ川越に戻るように使者を送ります。 大掾を討伐後、下総に兵を進めるとお聞きしましたが、千葉や里見などは豊嶋を滅ぼせば立ち行かなくなる事は必定、今攻める必要は無いかと」


「下総と上総は見殺しにせよと言う事か?」


「上総の真里谷殿も押されてはおりまするが、豊嶋を打ち破れば里見など、物の数では無いかと。 それに下総は内から崩れましょう」


「確かに、真里谷には、守りを固めるよう書状を送れと言う事か」


「御意。 そしてここからが本題でございますが、今、江戸では米の値が上がりつつあるとの事、どうやら公方様が兵を挙げる前より、領内の米等を村の貯えまで買取り、船で何処かに運び込んだようで、江戸では米が不足気味との事、どうやら船で定期的に江戸に米を戻しているようですが、米を扱う商人が売り渋り値を上げておるようでございまする。 そこで我らは江戸湊、品川湊、千葉湊、六浦湊の商人より米や酒を買いしめ、また宴を開き、遊女を呼び込む事で、米の値がさらに上がり、領民の心は離れ、いずれ一揆なども起こりましょう」


「だが商人共は。我らに米を売るとは限らぬであろう。 それに、酒を買い宴を開き、遊女を呼び込むなぞ士気に関わる」


「恐らく商人共は米を売ると思われまする。 入間川も利根川も豊嶋がその気になれば荷留め出来るにもかかわらず、しておりませぬ。 商人には商売の自由を認めているものと。 それと酒と女でございますが、確かに多少なりと兵の規律が緩むかと思われますが、兵の多くは農民共、公方様が酒を振舞い宴を開き、遊女を呼べば兵達も士気があがり、長陣への不満は無くなるかと。 豊嶋が流した噂も、酒を振舞った際に、『実は、豊嶋宗泰は一騎打ちを挑むも、怖気づき逃げ出した』と噂を流せば兵達もそれを信じましょう。 某の元に豊嶋の手の者が調略の書状を届けに来た以上、既に多くの間者が入り込んでると思われます故、遊女を呼び込んでも問題は無いかと」


「確かに…、既に間者は多く入り込んでおろう。 今更間者云々と言うよりも泳がしてやれば国人衆への調略もやりやすかろうな」


「左様、某の元に間者が公方様率いる軍の内情を聞きに来やすくなりまする。 それに、川越城を守る兵達は目の前で宴を開かれれば、我らが油断していると思い、夜討ちをしかけてくるかと。 その兵を血祭りに上げれば、お味方の士気は上がり、反対に川越城の士気は落ちるが必定」


「ハハハッ!! 面白い! 宴を開き、油断していると見せかけて、夜討ちをしに来た兵を血祭りか! 皆の者、成高はどうじゃ?」


成氏は吉良成高の策を聞き、笑いながら、本陣に集まった諸将の意見を求める。

本陣に集まった諸将は、考える様子を見せるが、心の中では、いつまで続くか分からない合戦で、ある程度の兵糧等は定期的に所領から運ばねばならないが、入間川の水運を使い、豊嶋領にある湊の商人から買い入れる事が出来る事で無駄な手間が省け、また費用は江戸を手に入れた成氏に持たせればと思い、また夜討ちの為に川越城から出て来た兵を討ち取れば、味方の士気も上がると多くの者が吉良成高の策に同意した。


「恐れながら、某からも一つ」


諸将が同意を示し、成氏が軍議を締めようとした時、吉良成高の隣に座る長尾景春が声を上げる。


「景春、其の方も、何か策があるか?」


「策と言う訳ではございませぬが、此度の合戦、長引く可能性もございまする。 故に豊嶋、成田、太田の所領にある村々へ、公方様の名で乱暴狼藉乱取りを禁止し、農民には村へ帰り作物を育てるよう、お触れを出しては如何かと」


「それをして何になる。 そのような触れをだせば兵達の不満が溜まろうが!」


「恐れながら、商人より米や酒を買い入れ、遊女を呼び込むなら、不満は溜まらぬかと。 それに今この川越を囲む兵達の多くは農民でございます。 今年の田植えに帰れなければ収穫も減りましょう。 なれど豊嶋、太田、成田領の農民が普段通り田植えを行えねば、上野、下野、常陸の収穫が減るだけでなく、武蔵で飢饉が起きまする。 田植えまでに豊嶋を滅ぼせればよいですが、長引くのであれば、田植えをさせねば、飢饉に対する施しをせねば公方様の名に傷がつきまする。 それに秋になれば年貢として公方様に納めさせ、収穫が減った国人衆に分け与える事も出来まする故」


「既に豊嶋、成田、太田の所領は余の物であると領民に知らしめると言う事か。 確かに豊嶋を滅ぼした後、武蔵が飢饉となれば手当てせねばならぬが、普段通りに作物を育てさせればその心配も無いと」


「御意のとおりにございまする」


景春の話を聞き、成氏はすぐさま頭の中で計算をする。


江戸を手に入れさえすれば、交易等で莫大な利益が得られる以上、無理をしてでも兵糧や酒を買い、遊女を呼び込んでも、最終的には自分に帰って来るだけでなく、長陣になったとしても、豊嶋や太田、成田の領民が育てた米を年貢として収めさせれば領国で収穫が減っても補填は出来る。

そして年貢を自分に納めさせると言う事は、豊嶋が得られる年貢は激減する。


成氏は、諸将に向かい、吉良成高、長尾景春の策をとると宣言し、それぞれに役割を割り当てていく。


吉良成高と長尾景春は、策が認められた安堵からか、合戦で手柄を挙げられなくとも、献策をした事で、戦後の褒美が望めると思ってか、2人の顔からは笑みが零れていた。

稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。

宜しくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[一言] ようやく出てきました! 「江古田原沼袋での合戦」の主要登場人物にもかかわらず影がとてもとても薄かった我らが吉良先生!! 今回、『埋伏の毒』を仕掛けますよ!と先生がおっしゃっていますが… 先生…
[一言] 策士策に溺れるかぁ どっちだろう? そもそも、諜報活動って、豊嶋以外積極的にしているのかなぁ 情報筒抜けかも?
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