婚礼の後
婚礼の儀が終わり、集まった人達が帰って行き、石神井城が静かになった。
それにしても婚礼の儀の時に爆睡していた照姫は泥酔した大人達の宴会が終わった後、起こさないよう侍女に抱えられて部屋運ばれて寝間着に着替えさせられたうえで寝かされていたけど、わざわざ俺の部屋に寝かす必要性は何処にあるんだ? とツッコみたくなってしまった。
朝起きたら知らない男が横で寝てたとかそんなドッキリは要らんだろうに。
まあ俺の顔は見ていただろうからドッキリにもならないだろうけど、まだ4歳の子供なんだから少しは配慮しろよ、朝起きた照姫はここは何処? と言う感じで周りを見渡して部屋に俺と2人だけと気づいたら泣きそうになってたし。
半泣き状態の照姫をお付きとしてついて来た侍女の所へ連れて行ったらメッチャクチャ安心した顔になってたよ。
ほんとこの時代の人間は…、児童相談所があれば即刻職員が飛んで来るレベルだよ。
因みに、出席した人達には引き出物として饅頭と最中、スティックシュガーにカルパス、インスタントコーヒーをお渡しした。
この日の為に職人に桐の箱を作らせて、母と共に饅頭と最中を一個一個袋から出して箱に詰めたんだよ。
理由は全員に渡すだけの数が無かったという事で、饅頭、最中共に1箱に5個ずつ、スティックシュガーは1箱に50本分、チマチマと移し替えましたよ。
インスタントコーヒーは適当な量にしたけど、それでも結構めんどくさかったし。
饅頭と最中は梱包材から出してるから痛みが早いだろうけど、まあこの時代の人は胃腸が強そうだし少しカビが生えていてもお腹壊さないでしょ。
うん、大丈夫という事にしておこう。
後は身分の高い人、有力な国人にだけシャンプー・リンス・ボディーソープ、そして石鹸を別途お土産に持たせた。
しかもシャンプー・リンス・ボディーソープに関しては使い方の説明書を付けて、石鹸はこの時代で作った物でなく毎日補充される石鹸だ。
これは良さを知ってしまったら無い生活に耐えられなくなる事を期待してわざとお土産にした。
無くなったら買いたいと言って来るだろうから商人を通して高値で売りつける事ができそうだからだ。
ついでに言うと意外とこういう物が交渉の材料にもなったりしないかとの期待もある。
そして婚礼の儀が終わったので大泉の状況を確認する為に城を出ようとしたら、今度は父にストップをかけられて、数日は照姫と親交を深めろとの事で外出禁止令が出されてしまった為、数日の間、寝食を共にし、昼間は石神井城周辺を案内し、木で作った積み木のような物で遊んだりとある意味保育園の先生のような生活を送った。
ただし餌付けは怠っていない。
毎日、午前と午後に饅頭、最中を1個ずつ与え、時には卵と牛乳、砂糖を使った自作のプリンを与えたりとしっかり餌付けした。
オマケで歯磨き粉と歯ブラシも与えて歯磨きを教えて食後は必ず口の中を綺麗にする習慣も植え付ける。
虫歯って意外と命に関わる場合があるからね。
いざとなれば歯を引っこ抜けばいいんだろうけど、この時代、麻酔も無いし、入れ歯やインプラントなんかも無いから歯を大切にしないと。
そんな退屈なお守を数日こなした後、晴れて大泉の所領に足を運ぶ。
一月近く足を運んでいなかったものの、守役の原田時守や白子朝信が何かと面倒を見ていてくれたようで、田には稲穂がたわわに実り、畑には野菜や芋などが青々とした葉を茂らせ、スティックシュガー等の販売で得た金を使い雇った者達が台地の木を切り倒し耕作面積を広げる為の開拓に励んでいる。
手伝いを頼んでいた白子朝信の話では白子川の源流起点の井の頭の泉周辺に建設中の酒蔵も、今年の冬までには4軒ほど完成し寒仕込みには間に合うとの事で11月頃から制作を開始すれば早くても年内に第一弾の清酒が完成し、そのまま間をおかず、次を仕込めば2月末には第二弾の清酒が完成するだろうとの事だった。
酒の原料となる米は大泉の所領で得た年貢米を全て酒造りに回すことでそれなりの量も確保できるはずだ。
今は酒蔵建設と同時に酒樽、それも概ね10升は入る樽の制作に力を入れている。
どうせ大人はあればあるだけ酒を飲むんだからチマチマ1升程度の量が入る土瓶に詰めて売るより樽で売った方は手っ取り早いし、樽なら輸送中に割れて中身が零れる事も少ないはずだ。
うん、やっぱり清酒はこの時代必須だよね。
製法が漏れないように徹底すれば莫大な利益が出るし。
その他に石鹸工場も完成し、現在量産体制に入っているし、菜種油を採るための採油工場も完成しつつある。
本当は椿油も欲しいけど、椿は群生してないし、今から耕作に向かない場所に椿を植えても収穫までに時間がかかるから諦めた。
これで来年からはスティックシュガーとインスタントコーヒーに加え、清酒、石鹸の売り上げで相当な金が手に入るはず。
その金で人を雇い、大泉一帯の開拓と石神井城から大泉までの台地も開拓してしまおう。
今は殆ど雑木林と言った状態だけど、開拓すれば稲は無理でも芋類や綿花、野菜なんかは作れるはずだ。
水車を使って水汲みポンプを動かして石神井川の水を大泉の方まで引ければ台地に水田を作る事も可能かもしれないし、川上屋に言って江戸湊の商人を通じ奴隷として売られている人や流人、後は鍛冶師を手配してもらおう。
開拓しても作物を育てる人が居なければ何にも始まらないし、現在慢性的な職人不足だからな。
いずれは専業兵士も組織しないといけないから。
まあ兵士は再来年ぐらいで良いか。
ただ情報を仕入れる為の人材は欲しいので、それが出来る人は早めに雇いたい。
守役の時守に言って人材を引き抜いて来てもらおう。
と思ったら向こうから石神井城にやって来てくれた。
う~ん、何というタイミングの良さだ。
これも知らない誰かの助けかな?
誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。
宜しくお願い致します。
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