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夏の思い出
中学3年生の男の子と女の子を1人ずつ思い浮かべながら読んでもらえると嬉しいです。
22時
7月も終わりそうな夜は蒸し暑く、心も体も暑苦しい。
いつもなら友達と喋りながら帰っているところ、今日は塾の入口で必ず訪れるひとつの瞬間をただひたすらに待っていた。
友達に見られないかな、ちゃんと人気のないあそこに連れて行けるかな、そんな不安は次の瞬間きれいさっぱり消し飛んだ。
来た。
電車を捕まえようと走る彼女が見えた。
偶然を装うために走って追いかける訳には行かない僕は遠くなる背中を半ば諦めながら追いかける。
…今日はいっか。
偶然、赤信号が走る彼女の足を止めた。
らっきー。
「ねえ、今少し時間もらえる?」