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7台目 「中古転生トラック販売ディーラー【T/E】」(後編)【最終話】


 それで? って……いや、大物かい君は。いやまあ、そう言われれば「だからどうってことはない」んだよね。本当にどうってことはない、っていうかどうにもならない。

 説明したように、この世界は何時でもないし何処でもない。どことも繋がっているけどどこへも行けないんだ。


 ここに来る方法は「誰かを転生させたいという強い意思を持つ事」、帰る方法は「その意思を何らかの方法で昇華させること」だけなんだ。それは実際に転生トラックを買うことでも、誰かのBadEndを見て転生させる気が失せることでも、懺悔してスッキリすることでもなんでもいい。とにかく転生させたい気持ちを満たすか薄めるかしたら、自ずと帰る事ができるんだ。


 キミを見て最初に俺が「どうせ客」って言ったのはそのせいだよ。

 うん、そうだ。キミはここから出る手段を持たないんだ。だって本来は入る資格すら無かったんだから。


 まあ色々試すのは自由さ。ここから見える道を地の果てまで歩いてみるのもいい。店のトラックを奪って暴走してみるのも自由だ。この世界の中心はこの店だから、店をぶっ壊すっていうのも手かもしれないよ?


 止める? 俺にそんな権利はない。もちろん義務もない。そこのもやもやにも、当然ないよ。だから好きにするといいさ。

 実を言えばさ、オレもここの連中がよく口にする「ロマン」って奴が見てみたくてね。

 自分のいる世界に転生してきたヤツが、世界をどうにかしちまうなんて、最高にロマンチックだろ? だから世界がどうなろうと、キミの選択ってやつを見てみたい。

 

 もちろん。

 こんな超常現象、すぐに理解して決断しろなんてBadEndの元だ。言いやしないさ、ゆっくり決めてくれればいい。

 でもそうだな、さすがにずっとこの店の隅で膝を抱えていられるのもマズいし、店の外で「客」を相手に物乞いでもされたら、多分不都合が起きるんじゃないかな。


 ああそうだ、こういうのはどうだろう。

 もちろんキミが良ければだけれど…………。



 ------------



 毎度ー。やぁ、お世話さん。

 どうだい、そろそろ店には慣れたかい?

 そうか、そりゃ結構。

 毎回店長がコロコロ変わるのは面倒だろ? いやいや、いいよ遠慮しなくて。所詮こいつらだって世界(システム)の小間使いみたいなもんだから。俺もさ、補充の度に違う顔と雑談するのに辟易してたんだよ。


 あ? お前には言ってねぇっつーの。俺は健気な新人店員君と話してるんだよ。デスクの奥でモヤモヤしとけ!


 あーゴメン。うーん……嫌いってわけじゃないんだけど、その日のキャラにもよるしね……今日の店長は、まあマシな方かな。

 それでどう? 仕事の方は。


 ハハハ、そりゃそうか。慣れるまではここを自由に歩き回るのは難しいだろうね。俺だってあんまりウロウロするわけじゃないけどさ、一つコツを教えるなら「この先には探しているトラックがある」という確信を持って扉を開けることだね。

 そうすれば店の方から応えてくれる……らしいよ? 前にココのヤツに聞いただけだから本当かわかんないけどね。


 そうだ、補充したばっかりだけど一杯飲むかい?

 いいっていいって。キミが来るまではコーヒーだけ全ッ然減らなかったんだから。俺がこんなに勧めてるのにさ。

 ……っと、長話し過ぎた。次の客が来そうな雲行きだ。俺は戻るよ。


 どこに? あー、ハハハ、そうだなー、秘密の場所ってことにしとこう。

 そんじゃあね、また。



 -------------



 おーぅご無沙汰ー!

 どうだい? 仕事には慣れた? え? あれ、そうだっけか?

 いやー、俺らそういう感覚薄くてさ。そっか、10年か……。


 で? 結局キミはどうすることにしたんだい?何って……世界だよ。キミはこの世界をどうやってぶっ壊して出ていくことにしたんだい?

 へぇ……そっか。いや、それももちろんキミの自由さ。


 なあ店長? 違う違う、このベテランがまだまだ楽させてくれるって話だよ。

 またー、とかなんとか言って、俺が知ってる限りこの店がこんなに活気づいてたことは無ぇんだからな? 居るって言ってくれるうちは大事にしたほうがいいと思うぜー? お前が接客するより、全然売上がいいって話、聞いてんだからな?


 ああごめんごめん、どうしても店長相手だとなー。

 え? ウッソ……マジで? いやそんなの気づいたのキミが初めてだよ……。そうなんだよ、俺もちょっと色々やってみようって思ってさ。

 どうよ? 前のブレンドとどっちが良かった? あー、そっかそっか! そうだよなその手があったよな! よし、いっちょ補充を切り替えてどっちも飲めるように……あぁ!? お前に聞いてねぇっつってんだろうがコーヒーの味一つわからねえポンコツがよぉ!

 よーし、そうと決まればさっさと作業しちゃうからさ、楽しみにしてくれな!




 -------------



 よっすー。

 あれ? なあ店長、アイツは?


 は? アイツだよ、いただろ、お前じゃなくて、ここにさ。

 なんだよこの資料。俺ぁドリンク屋だぞ……転生トラックに興味なんざ……

 納車リスト? おい、なんだよこれ。


 はぁ!?

 なんでだよ!! 寿命? 知らねえよなんでたかだか60年であんないいヤツが……

 っておい……このリストに乗るってことはだぞ……お前、この店のラインナップにアイツを飛ばしたトラックが入るってことはだぞ……それってお前、そういうことだろうがよ!!


 ったくよぉ! 誰が決めてるんだよ!

 アイツ、ずっと楽しそうだったじゃねえかよ!

 そんなの、アイツにしかわからねぇことだろうが!!


 誰だよ! なんでもかんでもBadEndにしてやがるヤツはよぉ!!!






BE(ワケ)有り車限定 転生トラック中古販売店  The/End】

そんなわけで、一応の完結と相成ります。


とはいえ、こういったスタイルのお話ですから、世の中に転生トラックがある限り、その転生の陰にBadEndがある限り、「T/E」はいつでも・いつまでも店を構え続けるのです。


平たく言えば、新鮮なバッドエンドを仕入れる事が出来たら、またお目にかかれる事もあるかもしれません。


その時は何卒、ご贔屓によろしくお願いいたします。

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