魔王様になりたい、僕の弟。
製作時間5時間の超考えなし短編。
まさか、この作品がこのサイト初投稿になるとは…
「ついにこの時が来た!勇者と名乗る人間が、我々を滅ぼすと動き始めたのだ!我ら魔族は、祖奴らを迎え撃つ!!」
「「「ハッ!」」」
紫色の炎が揺らめく、石畳の広い大広間。
三人の配下は、自分の主と慕う者に跪き右手を左胸に当て、忠誠を誓う。
一段高い舞台に玉座があり、そこにドカッと座り不適に笑い声を上げ始めた。
「ふふふふ… はあーーーははは!!!」
地下大広間にこだまする、笑い声。
その人物は、頭には黒の角、肩には獅子のような毛皮が付いたマント。緑の髪の毛は長く、切れ長の眼は、鋭い赤。
配下も不気味な雰囲気を纏って、その頭には角が生えている。
心底愉快な様子で玉座に座っている。その人物は…
「やめれっ!!脇をくすぐるなっ!!!ぎゃははははははははh!!!!!こしょばいっ!!!」
玉座の上で、爆笑していた。
「馬鹿だなぁ~って思ってね。」
満足げな顔をして玉座の背後から突然現れたのは、金色の髪に青いの眼、甘いマスクの青年。僕だ。
「あーあ、こんな場所作って~。父さんになんて言って作ってもらったのさ?弟。」
「ダレがバカだ!!父さんには…あれだ!……社会勉強とか…遊び場が欲しいとか……そんな、感じで…。」
兄の僕は、呆れた顔で我が弟の髪を弄ぶ。
「髪まで染めちゃって。これ元に戻るの?その目もカラコン?目充血して、もー、すっげー真っ赤だけど。それに頭のこの角っ!」
今日の朝、朝食時には自分と同じ金髪だった弟、しかも頭に角までついている。
これをイジらずして、何をイジろうというのだろう。
「触るなっ!!…この角は、…これしか手に入らなかったんだ!この部屋の改造でお小遣い使っちゃったから、これしか…。」
赤い顔で自分に盾突く(言い訳?)弟。その角は、明らかにプラスチックのレプリカだ。
しかも、スプレーペンキで慌てて色づけしたのだろう。黒いインクが床に垂れている。
スプレーペンキ使うときは、新聞紙を敷けってあれほど教えたのに。おバカさんだなぁ。
「そ、そうなんです!ネットで沢山探したんですけど、その鹿の角しか手に入らなくて…。」
「ご所望のサイの角や、マンモスの角だと違法になっちゃいますから…。」
この弟にしてこの子分あり。
それぞれ子分もオモシロ角を生やして、言い訳してきた。
アホばっかです。
困り切った顔をして弟を庇う(弁護?)ために僕を説得しているようだが、聞き捨てならない!
「サイの角つけようとしてたの?!頭のテッペンにwwwwwwそして、よりにもよって代わりが鹿の角wwwwwwwww」
弟の頭にはプラスチックの鹿の角が左右についている。いや、若干トナカイ?とも思ったのだが。
そんな弟を遠くから見たとき、腹がよじれるほど笑った。
みんなも想像して欲しい。玉座にふんぞり返る鹿の角を生やした弟、そいつに頭を下げる羊の角を付けた三人組。
鹿に媚びうる羊。
これで彼らは“襲い来る勇者”を向かい打とうとしていたらしい。
失笑。
これでは、いい子いい子されるだけのふれあい牧場の図である。
馬鹿な弟をそろそろ“普通”に戻す時が来た。
「…さてと。馬鹿なことしてないで、その毛皮も脱ぎな。また、母さんに怒られるよ?」
「げっ!!!」
弟が巻き付けている毛皮は、俺たちの母親が去年の冬に新調した白兎の毛皮である。
お気に入りで、汚すと大変!監督不行き届きで俺までガチボコされてしまう。
「お前たちも、こいつの事を思うならこうなる前に止めてくれ。俺が笑い死ぬ。」
「「「は~~~い。」」」
羊たちも角を取って、羽織っていた黒マントを脱いだ。
俺の弟も、不承不承な感じで装飾を取り始めたのだが…
「………取れない…角…。」
泣きそうなうちの鹿。
「だから言ったんです~!瞬間って言葉で、接着剤使っちゃダメだって!!」
眼鏡の元羊が慌てている。
「無理やり引っ張ってみる?!」
頬にできものがある元羊が、弟の角をツンツンしている。
「俺、この接着剤の会社に電話して聞いてみるよ!穏便に角取る方法!」
ぽっちゃり坊主の元羊は、携帯片手にオロオロしている。
「無理やりはヤダぁーーーーー!髪の毛持ってかれるーーー!ぎゃーーーーー!!!」
弟は3人の幹部に囲まれている。
さしずめ、捕獲される前の野性の鹿である。
僕は、面白いのでそのままこいつらを観察することにした。
読破、おめでとうございます。
ありがとうございました。