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3. 時間、季節、そして大陸

――時間

 この世界においても、昼夜は存在する。

 我々がこの地に降り立った際に持っていた時計によれば、24時間。地球と同じである。

 これは、偶然の一致であるのか、それとも何らか理由によるものなのかは分からない。だが、地球からやってきた我々にとっては、ありがたい事ではある。

 仮にこの世界における一日が数時間であったり、また地球時間での数十日・数百日であったりした場合、我々は生活リズムを適応させるのに苦労することになったであろう。



 そして1日があるということはつまり、太陽が昇り、そして沈むという訳である。

 その太陽の軌道は、ほぼ真上。

 季節によって幾らかの変化はあるが、天球のほぼ頂点近くを通過するのだ。

 すなわち、転移直前にいた太平洋の島とほぼ同じ、赤道直下にあるといえるだろう。

 しかし、この地の気候は赤道直下というほど暑くはないのだ。

 せいぜい温帯程度。暑い時は亜熱帯程であろうか。

 過ごしやすいのは確かだ。

 しかし……気になる事もある。

 それは、大気や海水の循環だ。

 地球においては赤道と南北極の温度差や自転などの影響により、それらが起きている。そして、熱を分配しているのだ。

 しかし、この地では、どうか。

 平面上の世界であるという事は、ほとんど温度差が発生しないという事を意味する。太陽との角度がどの場所でもほぼ一定であるからだ。

 つまり、大気や海水の循環を起こす原因が欠けてしまっているのだ。

 にもかかわらず、一定方向に吹く風や潮流は存在している。

 これらの原動力については、今のところ分からない。

 だが……“何か”これらの現象を引き起こしているのは確かだ。

 それは、一体何なのであろうか?

 もしかしたら、この世界の根源に関わるものであるのかもしれない。



――季節

 この世界での太陽は、ほぼ天頂付近を通る軌道を描いている。

 しかしそれは、一定のものではない。

 時期によっては北、あるいは南へとわずかに傾くのだ。

 そしてその周期は、約365日……つまり一年。

 そう。きっかり一年である。

 つまり、地球と全く同じであったのだ。



 そして太陽軌道の傾きは、季節を生む。

 しかしそれは、地球の中緯度地域ほどはっきりしたものではない。

 それでも確かに気温の変化は存在するのだ。

 太陽が真上を通過する頃を“夏”とするならば、それが最大限に傾いた頃を、“冬”と呼ぶべきであろうか。

 つまり、一年に季節は二巡する訳である。

 そうなれば、作物の収穫などにも影響は出そうなものであるが、どうやらこの世界の植物は、こちらの環境に適応している様なのだ。

 これは、この世界の環境に合わせて進化したのであろうか? あるいは、そう“造られた”のか……


――大陸

 我々が今踏みしめている大地。

 この地の言葉で、大いなる地――“アストラン”と言う。

 “アストラン”……メキシコに住む原住民、ナワ族にとっての伝説上の原郷とよく似た名。

 はたしてそれと、何らかの関連はあるのであろうか?

 ……それは、今置いておこう。

 この世界に存在する陸地は、このアストランを除いては小さな島々のみであるらしい。

 つまりこの世界においては、既知で唯一の大陸という訳だ。故に、識別するななど必要はないのだろう。だが、それではあまりに味気ない。

 私はこの大地を、仮に“アストラン大陸”と呼ぼうと思う。



 まずは、この大陸の姿だ。

 私たちのいる隠れ里は、大陸の東端近く。そして西の端までは、500ラン――この世界の単位で、およそ約2000km――をいくらか超える程、南北はそれよりも幾らか狭いという。

 おそらくは、グリーンランドよりも少し大きいぐらいではなかろうか?

 とはいえ正確に測量した資料がある訳ではないので、もしかしたら実際とは大きく異なる可能性はあるのだが。



 形としては、北部および東部に大きな湾がある、いびつな楕円形といったところであるらしい。

 大陸の東側には多島海があり、それらが縁海を構成している。

 我々がいる“隠れ里”は、そのほとりに存在しているのだ。

 大陸の東西には平原が広がり、人口も多い。この両地域では、有史以来幾度も巨大な国家が現れている。雨量もそれなりにあり、農耕に適しているのもその一因であろう。



 その中間、大陸のほぼ中央にある中原地域は、やや乾燥している様だ。その為、その地域では牧畜が主要な産業であるらしい。

 私もその地域から運ばれてきた、見事な毛織り物を目にしたことがある。ペルシャ絨毯を思わせる、精巧なものであった。



 北方は、大きく貫入した湾と、それを囲む半島からなる。半島は山勝ちであり、農耕や牧畜に適した土地は少ない様だ。それでもわずかな平地に人は暮らしており、いくつかの国家が存在している様だ。



 大陸南方も平原が広がっているが、ここは極端に乾燥した地域である。

 西方・東方および中原と南方の境界、そして沿岸近くとこの地域を囲む様に山脈がある為、それらが雨雲を遮断し、この地域に乾燥をもたらしているのかもしれない。

 それでも山脈の外にある南岸部は、平原部は少ないものの人が暮らすのに適した環境ではあるとの事だ。



 大陸の概要としては、これくらいか。おいおい、各地域の詳細な特徴などを調べ、記しておこうと思う。

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