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【第四十一話】 努力家リリの失敗



 キャンドルベルが起床時間を告げる。

 昨夜は色々と考えてしまっていたせいで寝付きが悪く、意識が呼び起こされたものの再び眠りに落ちようと体が起きることを拒否し瞼も簡単に開いてはくれない。

 どうにか全身に力を込め、その前段階として寝返りを打つと徐々に脳も寝覚めを自覚していき逆に眠ろうとする意志を頭が遮り始めた。

 こうなっては仕方あるまいと気合いで薄目を開き、飾り気の無い室内を視界に捕らえる。

 漫画もない、パソコンもない、ゲームもない。

 それどころか壁にポスターも貼ってないしお気に入りのシャツも掛かってないし電源コードの一本すら床にはない。

 そんな質素な部屋を自分の部屋だと認識することに違和感を覚えなくなりつつある今日この頃。

 それも異世界生活に馴染んできたからなのだと自覚すると、馴染んでる場合かと焦る自分とこうして最低限生きるための場所があるだけでどれだけ危機的状況が緩和されているのかを考えると贅沢は言えないよなぁとか思っている暢気な自分が共存していることがよく分かる。

 焦ったところで何も解決しない。が、安穏と今を享受していては何も変わらない。

 その線引きがどうにも難しく、割り切る度合いを自分自身で迷っているような状態とでも言えば分かりやすいか。

 日々の多忙や未知なる体験、危険と冒険や出会いに発見などなど、様々な要素がそんなことを考える暇をなくしているという部分もあるとはいえ……不意に日本が、或いは友人達や父ちゃん母ちゃんが恋しくなるのは俺がまだまだガキだからなのだろう。

 怖い思いをした後だったり精神的に参っている時ばっかだもんな、そういう風になるの。

「あ、悠ちゃん~。おはようございます~」

 ササッと着替えて部屋を出ると、丁度玄関で丈の長いブーツの紐を結んでいるソフィーと出会した。

 ネガティブ思考を薙ぎ払い挨拶を返す。あと屈んでいるおかげで胸元が最高のアングルでござる。

「おはよ、どっか行くの?」

 ジュラやポン、リンリンだけではなくルセリアちゃんまで一緒のようだ。

 ちなみにジュラは俺を見てはいるが挨拶の一つもない。

 逆にルセリアちゃんは目を合わせると恥ずかしそうにしながらもペコリとお辞儀をしてくれた。

 基本的に意味もなくソフィーの部屋から出たりしないルセリアちゃんだが、最近は出会すと普通に挨拶を返してくれるようになった。恥じらう姿も超可愛いからね。

 あと説明するまでもないけど、鳥と狼は『ホー』だの『はっ……はっ……』とか言ってるだけでよく分からん。

 ポンにとっての俺は散歩に連れて行ってくれる奴。リンリンにとっての俺は餌くれる奴。ぐらいの認識なんだろうな、多分。

「ちょっと同業の知り合いに仕事のお手伝いを頼まれまして~」

「へ~、そういうのもあるんだな」

「帰りは遅くなるかもしれないので今日は夕食は食べて帰って来ると思います~。ちゃんと手当も分配してもらえるのでお土産買ってきますね」

「了解、何するのか知らんけど気を付けてな~」

「はい~」

 にこやかに手を振り、ソフィーは戸を開け出て行く。

 久々の一味大集合な感じだけど、ほんと何の手伝いするんだろうな。

 怖くて聞けないけどほぼ間違いなくまた何か退治するとかな気がしてならない。

 頼むから怪我とかはやめてくれよ。

 不安から溜息を漏らしつつ、特に腹も減っていないのでそのまま日課の家事をこなすことにする俺だった。

 といってもほんの三十分ぐらいで終わったんだけどね。洗濯と風呂掃除ぐらいしかやってないし。

 ガラス窓拭いたり自分の部屋の掃除とかもするつもりだったんだけど、今日はもうパスだ。

 どうにも心身共に疲労感が抜けきれずやる気が出ない。

 とはいえそれはそれで時間を持て余すわけだけど……マリアはまだ寝てるだろうし、リリは部屋の扉開けっ放しになっていたから外出中だろう。

 外出というか、町や村に出掛ける時は律儀にも一声掛けてくるのでまた外で自主錬してんだろうな。

 つまりは暇!

 やることない!

 誰か構って!!

 と心で叫んだところで得られる物はなく、幾許かの葛藤ののちどうせ行かなければならないんだからと村に買い物に行くことにするしかない残念なぼっちこと俺なのでした。

 勿論目的は食料の買い出しだ。

 昨日はギャラも貰えないタダ働きなのに結構な食費になったし、今日からはしばらくは節約しなければならない。

 といっても全部マリアに貰った金なんだけど、だからこそ尚更無駄遣いはいけない。

 何かもう管理人というより主婦じゃね?

 なんて愚痴を溢す相手もおらず、一人村に出向いて市場みたいな野ざらしの店を行き来しつつ野菜、鶏肉、米、魚を購入する。

 これは余談なのだが、文化の違いというのか文明の違いというのかは難しい所だけど王都にしても他の村や町にしても等しく魚も肉も切り身では売っていない。

 買う段階になって初めて塊から切ったり捌いたりするのに加えて何グラムとかでは売っておらず、何人分とかどのぐらいの量でとかを伝えて大雑把に調整するのでなんかもう値段とかもその場のノリ感が結構する。

 ついでに言えばそろそろ顔馴染みというか常連と化してきているせいか結構な頻度で量をおまけしてくれたり余り物をタダでくれたりするヌクモリティーに溢れた人が多い。

 もっとも、これはどちらかというとレオナやソフィーの知り合いだという理由から急に親しげに接してくれるようになっているので文化云々は関係無いのかもしれないが、諸々含めて日本人視点でいう発展途上国ってこんな感じなんだろうなぁと来る度に思う俺だった。

 さておき、小一時間と掛からずに買い出しも終わり風蓮荘に帰還する。

 まとめ買いし過ぎて両手一杯の荷物になり、しかも米とかあるからもうヘトヘトだ。

 本日の昼飯はなんちゃってサラダと焼き魚に米でいいだろう。夜は野菜スープと適当に鶏肉でも焼くか。

 レオナは仕事、ソフィーは所用で居ない。

 マリアは起こしに行くまで寝てるのでリリを含めた三人分を作るのだが……いつもはこの時間には帰ってきて飯作るの手伝ってくれるリリの姿がない。

 部屋をノックしてみても反応が無いし、むしろそこに居てくれと願いながら風呂を覗いてみてももぬけの殻。

「ん~……どこ行ったんだあいつ?」

 ひょっとして仕事でも探しに行ったのか?

 いやでもリリが黙って出掛けるってのも違和感ある気がするし、時間を忘れて修行に精を出してんのかな。

 性格や雰囲気はのんびりしている風ではあるけど、ああ見えて結構な努力家だしな。

「しゃあねえ、呼びに行ってやるか」

 魚も焼いた、米も炊けた、野菜は切って洗って盛るだけ。

 放っておいてもその内帰ってくるんだろうけど、先に食べるという選択をするとマリアに食い尽くされて残らない気がする。

 そんなわけでマリアを起こす前にリリを探しに行くことにした。

 探すといっても少し森を進んだ所に居るはずなので片道五分も掛からないんだけど。

 離れている間にマリアが起きて来たら二人揃って飯抜きになりかねないのでササッと行ってササッと帰って来なければ。

 そう決めて、足早に靴を履き外に出るといつもリリが自主練をしている方向に向かう。

 どういうわけか森のど真ん中にポツンと建っている二階建てのボロ家屋も風景の一部として成り立っているような、風情のある緑の景色が四方八方に広がっている景色にもそろそろ慣れ始めてきたらしくこうして外に居るだけでどこか心が落ち着く自分がいた。

 静かで綺麗な森。

 そんな認識はいつまで経っても変わらないものがあるが、日本の都会で過ごす人生においては特殊なイベントでもない限り足を踏み入れることなどない自然に囲まれた環境というのは慣れてきた中でも不意に現実味を失うことがあったりもする。

「はぁ……」

 あまり深く考えるとナーバスになってしまうのでヤメだヤメだ。

 半ば無理矢理に思考を切り替え、どうやって驚かしてやろうかなんて考えながら引き続き森の中を進んでいく。

 五分と掛からずに発見したリリは、想像していた姿とは全く違っていた。

 どういうわけか俯せに倒れており全くと言っていい程に動く気配がない。

 良からぬ想像が頭を過ぎり、背筋が凍る。

「リリ!!」

 無意識に叫ぶと、猛ダッシュで駆け寄っていた。

 そうしてなおリリに反応はない。

 慌てて傍に屈み、ひっくり返して背中を持ち上げる。

「…………」

 息はしている。

 取り敢えず死んでるだなんて最悪のパターンではないようだ。

 何があった……誰かや何かに襲われたのか?

 いや、体に傷とかは見当たらない。

 どうする。

 病院とかに連れて行った方がいいのか?

 そんなんカルネッタでも王都でも見たことないぞ!

 そもそもこの世界って病院とかあんのか!?

「ええい、考えるのは後だ! とにかく一旦連れて帰る!」

 誰に対してかも分からない宣言を無駄に大声で口にし、リリの体の下に自分の体を割り込ませてどうにかおんぶすると、今一度猛ダッシュで風蓮荘を目指して突っ走った。

 小柄なだけあって馬鹿みたいに軽い。

 ちゃんと飯食ってんのかよこいつ……最近は俺が飯の世話してんだけども。

「う……」

 一心不乱に森を駆け抜ける最中、耳元で微かに声が聞こえる。

 意識を取り戻したのか?

「リリ! おい、しっかりしろ!」

「ゆ……悠希、さん?」

「ああ、俺だ。大丈夫なのか? 取り敢えず家に向かってんだけど、痛いとこあるか? どっか別の場所に連れて行った方がいいか!?」

「いえ……少し休めば大丈夫だと思います。痛みもないですし治療も必要ないはずなので」

「分かった! 少しだけ我慢してくれ」

 その返答を最後に、会話は止む。

 五分と立たず風蓮荘に駆け込むと、ひとまずリリの部屋に運びベッドに寝かせた。

 弱々しい有様に変化はないが、すでに意識もはっきりしているようだ。

「はぁ……はぁ……マジで疲れた」

 人一人抱えての全力疾走で乱れ狂った息を整え、安堵と披露で途端に脱力する。

 横になっているリリは『ご迷惑をお掛けしまして……』なんて申し訳なさそうな顔をしていた。

「いや、迷惑とかはいいんだけどさ、そもそも何で倒れてたんだよ。本気で焦ったぞ」

「すいません……ちょっと無理して魔法力を使おうとしすぎたみたいです」

「……魔法力ってそういうもんなの?」

 大前提として魔法を使えるということの意味からして全く分かっていない俺に理解出来るはずもなく。

 そこを掘り下げるよりも先にやることがあるだろうと、一言待っているように告げ一度キッチンへと向かうことにした。

 手拭いと洗濯用の物より少し小さめのタライに水を入れ、すぐにリリの部屋へと戻る。

 濡らした手拭いを折り畳んで額に乗せてやると、リリは少し落ち着いたのか大きく息を吐いた。

「ひとまずはそれで大丈夫そうか?」

「はい、重ね重ねすいませんです」

「何だったら体も拭いてやるぞ、是非!」

「是非ってもう……駄目に決まってます」

「心配して言ってるってのに、そんなに俺が信用出来んのか、ああん?」

「信用とかの前に普通に恥ずかしいですし、そうじゃなくても家柄そういうことはしちゃいけないんです」

「……家柄?」

「うちの家系には掟みたいなものがありまして、代々シェスティリー家の女性は婚約するまでは人に肌を晒してはいけないという決まりなんだそうです。結婚相手じゃない以上は同姓でも駄目だってわたしも小さい頃から両親にキツく言われて育ちましたから」

「その両親はいないし、別にエロい目的ってわけでもないじゃん。病床に伏してるんだから例外ってもんがあるだろ例外ってもんが」

「両親はいなくてもレオナさんもその掟のことは知っていますからね。それに関してはもの凄ーく念を押されています、それこそ両親と同じぐらいに口酸っぱく。わたしもちょっと時代錯誤な考えだなーなんて思わなくもないですけど、そういう家系なんだって言われたらそれまでですし」

「まじかよ~、じゃあリリと一緒に風呂入れないじゃん」

「最初に心配するのがそこっていうのもそうですけど、婚姻もせずに一緒にお風呂に入ろうとする思考にドン引きです……」

「よし、じゃあ婚姻するか」

「そんな話の流れで言われても全然嬉しくないですっ!」

 リリは拗ねた顔を向けたかと思うと、布団にくるまってしまった。

「ま、そんだけ普段通りにツッコミ入れられれりゃ心配ないだろ。念のために薬とか買って来てやろうか?」

「いえ、初めてなるわけでもないので大丈夫ですよ。ちょっと体に力が入らなくなるだけなので休んでいれば治りますし、お気遣いだけいただいておきます」

 リリは顔だけを布団から出し、あははと苦笑い。

 魔法云々は無関係に、倒れるまで努力するというのはきっと誰にでも出来ることじゃないのだろう。

 危なっかしい奴だという認識に変わりはないが、直向きで頑張り屋なのはリリの長所なんだろうなと、ふとそんなことを思った。

「んじゃ、しばらく寝とけ。ああそうだ、腹は減ってるか? そもそも飯が出来たからリリを呼びにいったんだよ俺は。そうしてなかったら大変な事になってたぞ」

「あはは……運が良かったみたいですね。お腹は実は少し……といってもお腹一杯食べられる状態じゃないんですけど」

「じゃ、お粥作ってやるよ。ちょっと待ってな」

「おかゆ?」

「やっぱ分かんねえか。俺の世界で体調が悪い時に食べる物だよ。消化に良いように米を柔らかくした感じのさ」

 あまり理解していなさそうなリリに、少し待つように伝え俺は部屋を後にする。

 ついでにマリアを起こし、二人で食事をしながらお粥を作ることにした。

 米はもう炊いちゃってるので小さい鍋に水を入れて蒸かすみたいな感じになってしまうが過去に自分で食った時もこれで全然普通のお粥っぽくなったので問題はないだろう。

 ちょいちょい混ぜないといけないので俺が飯食ってる暇なんてなく、ほぼマリアの給仕しかしてない感じになったけど俺の飯は後でいいさ。

 余ったリリの分が丸々自分の分になったからか、相変わらず黙々と食べているマリアは心なしか満足げにしていたけど、リリが体調不良であることを伝えるとデザート代わりに切っておいたテサラとかいう林檎みたいな果物を差し出してきた辺り、こう見えてもマリアは友達重いな奴なのかもしれない。

 食えば治るとか思ってそうな所は相当不安だけど。

「このぐらいでいいかな」

 一人用の小さな鍋で茹でる米も良い具合に柔らかくなった。

 あと塩を少しまぶせば完成だ。

 少し味見をして、我ながらまずまずの出来かな。とか思ったりしつつ、例のバランスボール風冷蔵庫から水の瓶を一本取り出し鍋と一緒にトレイに乗せると、再びリリの部屋に向かう。

 幸いにも眠っていたなんてこともなく、ノックをするとすぐに返事が返ってきた。

 中にはいるとベッドに腰掛けているリリはやや弱々しい感じでいながらも手に持ったトレイに興味津々のようだ。

 瓶をどけて渡してやると、不思議そうに見た目を吟味する。

「へ~、これが悠希さんの世界の病人食ですか」

「アクセントにちょっとした具を混ぜたりもするんだけどな。今日は軽く塩だけまぶしておいた」

「重ね重ねありがとうございます。いただきますね」

「熱いから気を付けろよ。何だったらふーふーしてやろうか?」

「子供じゃないんですから……」

 今なら漏れなく『あーん』のおまけ付きだったのに。

 そんなことを言っている間にリリは自分でふーふーしてスプーンを口に運んだ。

「本当だ、凄く食べやすいですね」

 なんて感想を最後に一旦会話が止む。

 食べる邪魔にならないようにと俺が黙ったせいではあるが、こういう時だけは空気を読める男その名も俺。

 やがて鍋の中が空になるとリリは俺にトレイを返し、なぜかジッとこちらを見た。

 かと思うと、おかしなことを言う。

「なんだか、悠希さんって不思議な人ですね」

「そうか? 日本じゃミスター平凡ってぐらい普通の高校生だったけどな」

「だって、普段はえっちなことばっかり考えているのに変に責任感があるというか、口では文句ばっかり言ってても家事だってサボったりしないですし、面倒見がいいというか世話焼きというか……最近ではお兄さんがいたらこんな感じなのかなーって思ったり」

「エロいことを考えるのは男なら当たり前だろ。男はそういう生物なんだ、人間性とは何の関連性もない」

 言うと、リリは『そういうものでしょうか』と苦笑いし、そのままパタンと横になる。

 まだ体が重いのか起き上がるのも辛そうだったし、しばらくは寝ておいた方がよさそうだ。

「じゃあ俺は戻るから、ゆっくり寝てな。水も置いとくからな、他に何かいるもんがあったら呼んでくれ」

 立ち上がり扉に向かおうとする。

 が、ほとんど同時にその背に声が掛かった。

「あの……」

 振り返ると、リリはなぜか顔を赤らめ俯き加減でモジモジしている。

「どした?」

「やっぱり体を拭いてもらおうかなって……おかゆを食べたら汗掻いちゃって、このまま寝るのはちょっと気持ち悪いので」

 ……。

 …………。

 ………………マジ?

「俺は全然いいけど、むしろお前はいいのか? 掟なんだろ?」

「悠希さんの仰る通り、病床の身なので例外ということで……変なことしませんよね?」

「約束は出来ない」

「じゃあ駄目です」

「うそうそ、絶対しないって。さすがの俺も病人相手にそんなことする程ゲスじゃないはずだ」

「はずだって……もう、レオナさんにバレた時は責任取ってもらいますからね」

 いたずらっぽく言って、リリはワンピース型の服を脱ぎ始める。

 恥ずかしいので後ろを向いててください……とか恥じらいながら言われたら逆に平静でいられなくなるだろが。 

「もういいですよ」

 真摯な俺が言われた通り後ろを向いて待っていると、数十秒ほどでお許しの言葉が聞こえた。

 逆に俺の方が緊張しながら振り返ると、下着姿のリリがベッドの上で背中をこちらに向けている。

「…………」

 何だろうこのドキドキ……ベッドの上で下着姿ってこれ、エロいことするときってこういう感じなのかな。

 いつしか見慣れてしまったマリアの裸だって実は毎回心臓バクバクしてるのに、また全然違った照れ臭さがある。

 ていうか……体ほっそ。

 緊張以外に最初に抱いた感想はそんな単純なものだったのだが、すぐに別の部位に意識が向く。

 刺青みたいな物なのか、リリの背中には黒い十字架が描かれているのだ。

 なんかすげー格好いいけど、リリみたいな子がお洒落とかでタトゥーを入れるとはちょっと考えにくい気もする。

 これも一族云々の理由なんだろうか。

「……なんで黙ってるんですか?」

「ああいや、ちょっと俺も恥ずかしかったからさ」

 いかんいかん、これでは視姦していたと思われるじゃねえか。

「じゃあ拭いていくぞ」

 水に浸して絞った手拭いを手に、俺もベッドに腰掛けるとリリの体を隅々まで拭いていく。

 華奢で少し色白の綺麗な肌を、言うまでもなく舐め尽くすようにだ。

 勿論、手に残る感触はプライスレスだったさ。

 役得万歳! とか思いきや、おっぱいだけは触ったらレオナにチクるとか言われて無理だったけどね!


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