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お前達が貧乏なせいで俺が異世界から帰れない  作者: まる


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【第百十三話】 巻き込まれ症候群



 眼鏡副隊長の無言の一礼に加え、もはや人間の言語を忘れてしまったのか『がっはっは』と何故か愉快そうに笑うゴリラ隊長に背中をパチンと叩かれたりしながら二人で王様を見送って俺達は宮殿を後にした。

 勿論のこと俺の頭にあるのは別れ際に放たれた最後の一言だ。

 王様直々の依頼……というか指示というか命令というか、そんな感じのアレで二日後に出張することになってしまった、らしい。

 空いてる? という確認ではなく空けておけと言うあたりさすがは一国における権力の頂点である。

 つーかあのオッサンもオッサンでいつの間にか俺を便利使い出来る存在だと思っている組に加わっている感が否めないんだが、人にものを頼む態度ってもんを叩き込んでやりてえよ。

「つーか、結局一泊でどこ行くわけ?」

 戻って来た王都の町並み。

 先の話通り俺とレオナは大通りにある飯屋に入って二人でランチデート的な時間を過ごしている。

 のかは分からんが、腹は減っていたし奢ってくれるというのなら是非もない。

 ホット・リバー以外ではほとんど外食の機会も無いためおすすめのメニューもおすすめしないメニューも分からないためレオナと同じ料理を頼み、店員が去っていくなり切り出した。

 言うまでもなくその場で抱いた疑問ではあったが、レオナのみならずゴリラや眼鏡のお姉さん、略してメガ姉さんにまで『相手が誰か分かってる? イエス以外の答えなんて存在しないの分かってるよね?』みたいな無言の圧力をがっつりと掛けられていたため口に出来ずにいたわけだ。

「国境基地よ。分かりやすく説明すると、陛下含め私達も行くからそれに同行しろって話ね」

「この前の水軍? とか他所の女王様と会った時とはまた別の場所か」

「ええ、帝国に近い南方の国境を守る基地だから。ワルキューレ部隊主導でね」

「初めて聞く名前だな、たぶん」

「そうだったっけ? まあそこの人達とは会ったことないはずだから当然ではあるか」

「そもそも知り合いがほとんどいないからそのはずだが……」

「ワルキューレ部隊は主に国境警備や有事の際に前衛として先陣を切って戦場に展開する戦闘部隊なの。隊長、副隊長はうちと同じく両方女でそれぞれハルク・ヴィルカロッサ隊長、マスカット・ドーラ副隊長が務めてる。あんたも現地では嫌でも顔を合わせることになるだろうから名前ぐらいは憶えておきなさいよ」

「あんまり自信は無いが……どういう人達なんだ?」

 自慢じゃないけど、この前の何とか隊長どころかゴリラやメガ姉さんの名前すら憶えていない俺が会ったこともない奴の名を聞いただけで明日暗唱出来るかといえば確実にノーな気しかしない。

 異国の固有名詞って記憶するの難しいよね。

 ほら、地理の授業とかでもあるじゃん?

 首都とか観光地として有名な場所とか、あとは人気のサッカーやら野球のチームに付いてる地名以外の都市なんて一回二回聞いたところで覚えてないってもんよ。

「うーん……良い人達というか、悪い人ではないんだけど……まあちょっと変わってるっていうか」

「もはや変わってない奴の方が珍しいじゃねえか」

 ゴリラといい何とか隊長といい誰しもと仲良く出来るタイプではないだろあれ?

 社交性的な意味で言えばアメリアさんだけかよまともな人。

「別におかしな人ではないわよ。明るい性格だし、前向きな人柄だし、使命感も強いし、勿論戦えばトップクラスに強いし。ただはっきりものを言うタイプで、納得出来ないことがあれば陛下にも平気で物申すし、とりわけ実力至上主義で結果が全てって価値観のジャンバロック隊長とはよく揉めるのよ。勿論それは部下だとか国だとかのことを思ってのことだし、ご本人の中にある信念とか正義というものが軸にあっての話なんだけど、分かりやすく言えばカルカロス隊長とは別の意味で熱い方ってところね。ただ、副隊長のドーラさんはまあ……変わってるか」

「結局変わってんのかい」

「どう表現すればいいのかは難しいけど、例えるならアンリの狂信っぷりを五倍ぐらいにした感じ?」

「お、おお……」

「もう言動の全てからヴィルカロッサ隊長命みたいなノリが溢れ出ているってタイプの人なの。基本的には戦闘要員じゃなくて参謀みたいな立ち位置だから頭は良いんだけどね」

「その人と接する時は気を付けた方がよさそうだな……軽いノリで接したら今度こそぶっ殺されんばかりじゃねえか。アンですらあんななのに」

 俺は忘れてないよ、あの若干冗談の域を超えたチョークスリーパー。

「いやその前に隊長や陛下に対して軽いノリで接してるのがおかしいんだけど?」

「まあそれは今は置いておこうぜ。それで、結局そこに何をしにいくんだ?」

「サラっと流したわね……目的は警備体制の強化と人員の増加、その段取りを話し合うためってところね」

「おん?」

「あんたも知っての通り、先日メスチアの襲撃があったわけだけど、またいつ攻め込んでくるか分からない状況なわけ。陛下が断固たる抗議と目的や責任の追及、プラスで納得のいく返答を得られない場合には報復も辞さずって声明を出したらしいけど事実確認をする、憶測で非難するべきではない、みたいなのらりくらりとした返答しかなかったらしいわ」

「んだそれ、ほぼ宣戦布告みたいなことしてんだぞあいつら」

「あっちも分かってやってるのよ。何年も前から緊張状態を煽る挑発的な行動を繰り返してきたし、目に見えて戦争のきっかけを作ろうとしている。同盟国に連合を組まれると困るから自分達からは布告をしないわけ。だから今後同じことをさせないために防備を強化する。その打ち合わせみたいなものね」

「説明されれば目的は理解出来るけどさ。何で俺が? って疑問はそのままなんだけど」

「姫様も同行するからじゃない? 何だかんだ言っても話し合いには丁度良い相手だと思われてるのよ。外に知人なんていないし、陛下もずっとアンリと二人で過ごさせるのがいいことだとは思っていないでしょうから。だからといって町に出て友達を見つけるわけにもいかないし、同年代の友人として接してくれるのは大いに助かってるって言ってたもの」

「そうだとして、俺の都合は無視かよって話だけどな。もう遠出ばっかり面倒くせえよ正直な話。でもまあ姫様個人のことは好きだし、王様はさておき姫様だけじゃなくアンにも恩返ししなきゃならん立場だし断るわけにもいかねえか」

「陛下の御下命を拒否出来るわけないでしょ」

「だから俺は王様の部下じゃねえっつの」

 思い出したらまた腹立ってきたわ。

 爽やかな笑顔で『空けておいてくれたまえ』じゃねえよ。

 そんな飯食いに行こうぜみたいなノリで泊りがけの公務に参加させんな。

 王様だからって部外者を簡単に参加させていいのかそもそもよ。

 今回も報酬として【姫様とお風呂】イベントは絶対貰うからな。無かったら泣くからな。

「ウダウダ言ってないで諦めて切り替えなさいよ。帰ったら着替えとかだけは用意しておきなさい」

「今更行かないとは言わんけど、また朝早くから馬車で行くんだろ? その間マリア達はどうすんべ」

 正確にはマリアの飯だけど。

 家事とかはまあ……リリやソフィーが気を利かせてくれると信じている。

 ただ飯が困るんだよなぁ。

 買ってきたパンとか与えようとしても食わなかったってこの前も言ってたし。

「予め事情を話しておけばソフィアやリリがどうにかするでしょ。次の日まで帰らないと分かって玄関で待ちぼうけなんてしないわよ」

「そうだといいんだけどな、一応スープだけ前日に二日分作っていくか。ってことで買い物して帰ろうぜ」

 まーた無駄にエンゲル係数が上がっちゃうよ。

 王様の命令なんだからってことでまた後から謝礼ぐらい出るのかね。

 さすがに自分から金寄越せなんて言えるわけないんだけど……ああ、勿論金かお風呂かを選べるんだったら即決でお風呂を選ぶよ?

 そんな薄汚れた欲望が顔に表れていたのかレオナに『何その顔』とかってジト目を向けられながらも二人分届いた肉と野菜を炒めた物を平らげ、その後あれこれと食材を買い集めて帰路に就いた。



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