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公園、そして最強の女の子

作者: Karyu

ジャンルとしてはホームコメディを目指しました。これも友人と交換小説の際、書いたものです。

 僕の名前は(りょう)。今年晴れて高校に入学できた。晴れてというのは一年留年したせい。


 第一志望の高校が諦め切れなかったから中三を二年繰り返したから。


 でも今日はそんなこと関係なく、家にお母さんの妹、つまり僕のおばさんとその子供が遊びに来ている。


 お母さんとおばさんは久しぶりに会うらしく来た早々いきなり話が弾んでいてもうかれこれ玄関先で三十分も談笑している。


 女の人ってすごいなーなんて僕はいつも思ってる。


 でもそんなことに感心している暇は今僕にはない。なぜならおばさんが連れてきた子供のお世話をしないといけないからだ。


 僕の部屋の中では五歳ぐらいの女の子がベッドに座って足をバタバタさせている。


 僕にロリコンの気はないけどかわいいの一言がよく合っている子だと思う。


「ねえ、君なんて名前?」


 僕は女の子に話しかけたんだけど、その子はしばらく黙り込んで僕を見ながら


「花梨はね、かりんって言うの」


「へぇ、花梨ちゃんか。僕の名前は涼。よろしくね」


「うん」


「花梨ちゃんは今何才なの?」


「花梨は今五才」


「幼稚園?」


「うんっ」


 花梨ちゃんは段々僕との会話に慣れてきたのか笑顔交じりで答えてくれるようになってくれた。


「それじゃ花梨ちゃん。なにしてあそぼっか?」


「えっとね、お医者さんごっこ」


「えっ!?」


 い、いやいや待て僕。相手は五歳児の女の子。きっと純粋におままごと感覚でのお医者さんごっこということなんだ。


 絶対にそうに違いない。


「そ、そっか。それじゃ誰がお医者さんする?」


「涼がやって」


「う、うん。わかった」


 い、いきなり呼び捨てか。僕的には涼兄ちゃんがよかったんだけど……ま、いっか。


「それじゃ、いくよ。はーい、次の患者さんどうぞー」


 僕は聴診器を首に掛ける動作をしながら花梨ちゃんを待った。


 花梨ちゃんは、


「はーい」


 と答えて僕の目の前に座った。


「どこが痛いんですか?」


「花梨の心が痛みます」


「心臓ですか、それは大変ですね」


「いいえ、先生が花梨の心を満たしてくれれば治る気がします」


「え?っていうか、はい?」


「先生、花梨の全てを診て」


 僕の理性は、高一としての、男としての理性が死に掛けた……。


 だ、誰か助けてください……。


 ぼ、僕には耐えられません。


「か、花梨ちゃん。なんで、そんな言葉知ってるのかな?」


「お母さんがよくお父さんに言ってる。早く出してとかやってとか」


 さ、最近の親って……。


 というのも僕のお母さんの妹、おばさんはお母さんより十も若く、僕より七才年上なだけなのだ。


 だ、だからって幼稚園児の前でそんなことしたらいけないでしょうがっ!


「じゃ、じゃあ花梨ちゃん……。ち、違う遊びをしよっか」


「なんで?」


「そ、それは、えっと、うんと、僕あんましお医者さんとか得意じゃないし、間違えて花梨ちゃんに怪我させちゃいけないからね」


「ふぅん……。わかった、いいよ」


 ほっ、よ、よかった。


「それじゃ何しよっか?」


「鬼ごっこ!」


「え?あ、よし、わかった。じゃあ隣の公園にいこっか?」


「うん!!」


 僕は花梨ちゃんと一緒に隣の公園に行った。その間花梨ちゃんは僕の手を握っていたのだがいくら従兄妹とは言え緊張するな……。


 公園には結構人がいて、幼い子たちが遊んでいた。


「よし、じゃ、誰が鬼やる?」


「涼がやって」


「あ、よし、わかった。じゃあ、五秒数えるから逃げてね」


「うん」


「5―、4―、3―、2―、1―、0」


 僕はブランコの辺りで必死に逃げている花梨ちゃんを駆け足で追った。


 いくらなんでも本気だしちゃ大人気ないしね。


「まてまてー」


 なんか、花梨ちゃんがいなかったら絶対僕はこんなこと言わないだろうなー。


 なんて思いながら、ちょっとずつ僕は花梨ちゃんとの距離を詰めていった。


「はい、捕まえた」


「うわ、捕まっちゃった」


「じゃ、次は花梨ちゃんが鬼だよ」


「うん」


 僕は5秒数えている間十メートルぐらい離れた。


 まだまだ僕の腰元までしか身長のない花梨ちゃんはまだおぼつかない足取りで僕の下までやってくる。


 僕もすぐ捕まっちゃうのは尺だから少しばかり捕まらないぎりぎりで逃げた。


 そしてわざと捕まる。


 それで僕が鬼。花梨ちゃんを追いかけた。


 だけど、思いのほか花梨ちゃんは体力強くは無かった。


 なんでったっていきなり、


「このおにーちゃんが私の裸見せろーって追ってくるー!!」


 なんていってくるもんだから。


 って、ちょっと待って!僕なにもやってないのにっ!?


 でも今の立場上僕が花梨ちゃんを追いかけている。


 急に公園内の空気が変わった。


 花梨ちゃんを近くのおばさんが保護し、周りの子供達は各自の親の下に逃げていった。


 僕は公園内の保護者と花梨ちゃんを匿うおばさんに囲まれた。


 僕の体温は一気に冷めた気がする。ほんと、南国から北極の海に落とされた感じぐらいに……。


「ちょっと、君。そんな年でこんな年端もいかない子をっ!!」


「え、いや誤解ですって。僕はただ鬼になってただけでっ!」


「お、鬼!?な、なんて野蛮な!!」


「ちょっ、な、なんでそうなるんですか!?」


「お黙りなさいっ!今、警察にっ!」


「え、い、いや、いやだー!僕は無実だー!」


「いいから、来なさいっ!」


 僕はすごい体格のがっちりしたおばさん的おばさんに連行された。


 それはもう強制的に。


 公園から連れて行かれる間、僕の視界には花梨ちゃんが僕をにやにや笑いながら見送ってるのが見えた。


 か、花梨ちゃんって何者……?




 それから一時間。


 僕はやっと解放された。


 急いで公園に戻ると花梨ちゃんはまだ残っていた。


「はぁ、はぁ、よ、よかった」


「お疲れ」


「お疲れじゃないよ!花梨ちゃんの所為でこんな目に」


 僕は息が途切れ途切れに言った。


「か、花梨のせいなの?」


 花梨ちゃんは目を潤せ、上目で僕を今にも泣きそうな顔で見た。


 うっ……。ぼ、僕の理性が……。


「ご、ごめん、花梨ちゃんの所為じゃないからさ」


「うわーい」


 さっきとはうって変わって花梨ちゃんは笑いながら駆け回った。


 この子って一体……。


「あ、綺麗なお花―」


 花梨ちゃんは公園の花壇を覗きながら白い花を見ていた。


「これなんてお花?」


「それは、ナンカクランって花だよ。綺麗でしょ?」


「なんかくだらん」


 とだけ言って花梨ちゃんはシーソーの方へとてくてくと歩いていってしまった。


「涼、シーソー」


「はいはい……」


 僕は花梨ちゃんとは反対側の席に座ろうとして腰を屈めた。


 だけどそれを見計らってか花梨ちゃんは上に上がっていたシーソーの上に飛び乗った。


 当然の如く地面についていた僕側のシーソーの席は一気に上へ上昇。


 男として一番大切なところにクリーンヒットした。


「*/◎※!×?★!!」


 ほんとにそれしか言葉が出なかった。


 もう脳内は真っ白。今なら昨日物理で習ったリチャードソンの法則を完璧にインプットできるぐらい脳の中は空っぽになった。


 そしてのたまう僕の姿を残忍な笑みを浮かべながら眺めていた。


 絶対、絶対にわざとだっ……。


「涼、次はあれ」


「?」


 僕は前のめりになりながら花梨ちゃんの指さす先にあったものを見た。


 ブランコ……。


「ブランコするの?」


「うん、涼が乗って跳んでみて」


「いやいや、無理だって」


「できないの?」


「うん、人間なら誰でもできないよ」


「跳んで」


「だから無理だってば」


「飛んで」


「いや、だから……」


「飛べっ」


「はい……」


 僕は落ち目なんだろうか?でも、花梨ちゃんめちゃくちゃ恐い顔してます。


 ええい、こうなったら飛ぶしかない。


 僕はブランコに立ち乗りして勢いをつけながら前後に揺らした。


 すると花梨ちゃんはいつの間にかいなくなっており、今正にとばんとするとき、


「こらーっ!君、そこでなにやっとる!!」


 僕の視線の先には僕を指さす花梨ちゃんとその隣に厳つい顔で僕を睨む警官。


 あぁ、僕ってこんなにも不幸だったのかな……?


 それとも、全部花梨ちゃんのせい?




 その後も僕は一日中花梨ちゃんに振り回され夕方になって家に戻ると僕の母さんと花梨ちゃんのお母さんはまだ玄関先で長々と喋っていた。




 女の人って年関係なくすごいんだな……。



お読みいただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか? 些細なことでもいいので感想・評価お待ちしております。

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