第9話 兄と妹のゲーム決闘
「部屋から出て何になるの? 別に利便性は向上しないでしょ? 一応夜中にお風呂入りに部屋から出てるんだからそれでいいじゃん」
「お前本当にニート脱却する気あるの?」
またまた数日後。
いつものように立夏の部屋で立夏と雑談をしていた俺。
他愛のない話…ネットゲームの進捗や俺の大学でのぼっち話、最近見た漫画の話などなど。
その隙を突いての、部屋から出ようぜトーク。
「別に母さんだって父さんだって嫌な顔しないぜ? あの2人娘大好きバカ親だから、むしろ顔見せれば喜ぶぞ?」
「別にそんなんじゃなくて…部屋から出るのが怠いだけっ」
「今の環境下故に変に遠慮することはないんだぞ? 家族にくらい、ニートでいることに対し臆さないぐらいの心意気で…」
「…べ、別に部屋が好きなだけだから」
「なぁ立夏よ…たまにはリビングで一緒にごはん食べよう、テレビ観よう、一緒にTVゲームとかしようぜ」
「嫌」
頑なだな…
「よし、ならば立夏! お兄ちゃんと勝負をしよう!」
床に散らばる様々なモノを退かし、何とか座れるだけのスペースを確保した俺は、その場にドッシリと座り込む。
「…勝負?」
一方の立夏は相変わらず布団の上で寝っ転がりながらスマホいじり。
「イエス、バトル! ゲームで勝負だ妹よっ! 俺が勝ったらお前は部屋から出ろ!」
「は?」
俺の言葉にチラッと一瞬スマホからこちらに視線を向けた立夏。
まゆ毛がハの字になっていた。
「ゲームのジャンルはお前がえらんで良いよ! 格ゲーでもパズルゲーでもポケ◯ンでも何でもいい! とにかくゲームで勝負!」
これぞ秘策!(でもない)
立夏の得意なモノで勝負を吹っ掛ける作戦!
「何で? 嫌なんだけど」
嫌悪感丸出しの立夏。
こういう時は…とにかく煽る。
「ふぅん…なんだい立夏、お前…負けるのが怖いのか?」
「まあ勝負に100%はないからね…万が一負けたら嫌だからやんない」
「堅実っ!!?」
なんだこの妹っ!?
勝負を吹っ掛けておきながら狼狽する俺。
「お前がゲーム選んでいいんだよ? お前の得意なヤツで…本当、何でも良いんだよ!!?」
「嫌だよ。負けたらを考えたら」
「そんなに部屋出るの嫌なの!?」
気が付けば立夏の視線は再びスマホに戻り、ソーシャルゲームに熱中。
参ったな…思いの外乗ってこない。
ゲームが得意な立夏なら乗ると思っていたんだが…って、
「あー立夏、まだ言ってなかったけど、お前がゲームに勝ったら俺が何か1個お前の言うこと聞いてやるよ」
今更ながらの勝利報酬の提示。
しかし先程の立夏の堅実っぷり。
多分今回の勝負にはもう乗ってこないだろうな。
うーむ…どうしよう。
何か違う方法を考えないと…
「…じゃあ2夜連続で秋菜の前で裸になって」
「…はっ?」
次の一手を考えようと、一旦思考の切り替えを試みていた俺。
ふと、視線は手元のスマホに向けたままに、こちらへ声だけ投げかけてきた立夏。
ってか、
「えっ?」
まさに、えっ?である。
「いやだから、アタシが勝ったら兄貴は2夜連続で秋菜の前で全裸になる。ならいいよ」
さらっと、感情の起伏なく平坦な声で言った立夏。
「待って、えっ? 何その条件!?」
我が耳を疑うレベル。
今こいつなんつった!!?
「だーかーらぁっ、秋菜の前で裸になれ。で、アタシが受けた辱めをその身をもって体験しろ。で、アタシに謝れ」
立夏の持つスマホからは軽快なゲームの音楽。
本当に無関心の中での発言。
「あー…根に持ってましたか…」
俺は苦笑い。
あの2夜連続妹の裸見ちゃった案件…その仕返しってことか…
いや、しかし…
「それ…秋菜が嫌がるぜ」
「だろうね。だから兄貴が好きでやってるってことにして、1人嫌われてしまえ」
「…やっぱりお前は秋菜の姉だな」
エグい事を提案しやがる。
なんてこう…腹黒い。
「で、どうするの兄貴? ゲームやるの?」
と、スマホのゲームを一時停止してこちらに向き直る立夏。
その顔、無表情。
謎に怖い…
…まあ、だが。
「おう、ぜんぜんいいよ」
俺も俺で胸張って即答してやった。
「…マジで?」
そして提案した本人がそれに引くという図。
「当たり前だ、男に二言はない! 俺が勝ったら立夏は部屋から出る! 立夏が勝ったら俺はイチモツを秋菜の前で披露する!」
「なっ…!! なんでそんな卑猥な表現に変えてるの!!?」
言ってる事は同じ事。
しかし立夏は少し赤面し少し動揺。
俺はその場に立ち上がり、仁王立ち。
「勝負だ立夏! 兄と妹の…仁義なき対決だ!」